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しーぷさん

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ひとつの別れと五年ぶりの再会

13/12/27 コンテスト(テーマ):第四十七回 時空モノガタリ文学賞【 再会 】 コメント:2件 しーぷ 閲覧数:1478

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「よお」
 親父は左手を挙げてそう言った。

 俺は言葉を返すことなく、少し距離のある親父のところまで歩いた。適度な距離まで近づき、立ち止まる。


 変な間。
 親父が胡座をかいたので、俺も胡座で座る。


「何年ぶりだ?」
 親父は、目すら合わせられない俺に、沈黙を破ってそう聞いてきた。
「五年。あの日から、……親父が、俺と母さんの前からいなくなって、ちょうど五年」
「もう……そんなになるのか……」
 それだけだった。


 また、変な間。


 次に沈黙を破ったのは俺だった。
「あれから大変だったんだぞ」
 やっと親父に視線を向けられたけど、たぶん睨むような目つきだったと思う。親父は視線を伏せた。

「母さんと俺だけになって。親父の収入だけで食ってたのに、急にいなくなるから。母さんはパートに出て、俺もたくさんバイトいれて」


「……すまない」


 小さな声だった。とても小さい音だった。俺の耳にやっと届いたその言葉を無視して続けた。

「いろいろやりたいこともあった。大学だって行きたかった。でも、母さんには負担をかけたくなかった」
「行ってないのか?大学」
 驚いたような表情を浮かべた親父の顔が上がった。
「行けるかよ」
 親父はまた視線を伏せた。


「……母さんは元気か?」
「……ああ。去年、パート先の店長と結婚した」
「そうか……」
 親父は、口もとを緩めてそう言った。

「あっちもバツイチでさ、娘が一人」
「よかったじゃないか。妹が欲しいってずっと言ってただろお前」
「そうだけど……」
 俺の言葉が小さくなる。

「どうした? うまくいってないのか?」
「いや、みんな優しいよ。今からでも大学行かないかって言ってくれてる」
「……」


「その……妹さ。瑠璃って言うんだけど。さっきまで一緒に遊んでたんだ」
「……」
 親父は黙って俺の言葉を待っている。

「あいつ、サッカー好きなんだよ。将来はプロ選手になるんだって言ってる」

 さっきまで、瑠璃と遊んでいたときの風景が脳を支配し始める。できることなら、もう、思い出したくなかった。

「俺が強く蹴りすぎたんだ……瑠璃を飛び越えて、公園の外まで出ちゃってさ。瑠璃はそのボールを追ったんだ」

 頭の中に流れる映像は、消したくても消えなくて。

「そしたら、トラックが走ってきて」

 もう――。

「瑠璃はボールしか見てなかった。夢中で追いかけて」

 瑠璃には会えないんだ――。

「瑠璃がプロになったとき、最初にサイン貰うって約束したのに……」
「……そうか」



「俺、瑠璃を庇って、……死んじゃったんだ」


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このストーリーに関するコメント

14/01/06 光石七

オチが意外で「ええっ?」となりました。
お父さんと再会した場所って……ということですね。
面白かったです。

14/01/31 しーぷ

光石七さんへ
おおぅ
長らくお返事してなくてすみませんっ
そうなんですそうなんです
場所ですね
最初に「再会」って考えたとき
「誰と」とかより「どこで」っていうのを一番最初に考え初めまして
CPUのおかしな脳みそは
あちらを選んでしまいました…

コメントありがとうございました

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