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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

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地下帝国

13/12/20 コンテスト(テーマ):第四十六回 時空モノガタリ文学賞【 夢 】 コメント:20件 草愛やし美 閲覧数:1674

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――ここはどこだ? 鉄格子が見える、なぜ牢屋に、何が起こったのだ。叫ぼうとした私は、暗闇の中で蠢くものに口をつぐんだ。そいつの正体はもぐらだった。何か話しているが、理解できそうもない。もぐらが話すこと自体おかしい。これは悪夢だ、そう自覚している自分がいる。

 いつの間にか、私は鉄格子をすり抜けあちこち眺めまわっていた。大きな氷の塊があちこちに置かれている。
「マ・マンモスだ……、で・でかい」
 聳え立つ氷塊の中にマンモスがいた。度肝を抜かれ茫然としていると妻の声がした。
「凄いでしょ、もぐらどもは、こんな地下帝国を作っていたのよ」
「お前どうしてここにいるんだ。それに平然として、あんなでかいもぐらが怖くないのか……」
 妻に怖いものなどいないことに気づき、私は途中で口籠った。
「マグマの地熱って凄まじいわ。あれ見て! 氷塊がたちどころに溶け出している。どんだけ、氷塊を持ってきたってきりがないのにねえ。地熱を冷やす為に、もぐらどもは、氷河を切り取って持って来ているのよ。だけど、マグマ相手よ、きりないのに、何て無知なのかしら。あなた知ってる? 地球の温暖化ってこれが原因なのよ」
 妻はしたり顔で説明している。
「氷河って、北極とか南極のか?」
「そうよ、凄い量でしょ。温暖化になるはずよねえ、地下帝国はマグマの熱と戦わなくちゃいけないそうよ、もぐらが言っていたわ」
 恐るべし我妻。その隠れた能力で、もぐら弁が理解できるのか──などと、馬鹿なことに感心している場合ではない。これが事実なら、一刻も早く地上に戻り人類の危機を知らせなくてはいけない。このままでは、地球は水没してしまう。なんとかしなくては──、焦る私の言葉を遮って妻は、氷河の横に積み上げられた黒い山を指さした。
「そんなことより、あなたあれを見て 、あれ宝石の原石よ!」
「宝石? ありゃ、ただの石ころだろう」
「違うわよ、宝石の原石よ。もぐらには価値がわからないけど、氷河の塊から出てきた宝石よ。でも、もぐらにとっては、マンモスも宝石もゴミと一緒。要はあそこはゴミ捨て場なの」
「ゴミ捨て場にマンモスと宝石……なのか」
「何て無知なもぐら。あれ一つでどれだけ裕福に暮らせるかわからないのね、うちなんか、あなたの年金が少ないからケチケチ暮らしなのに、あるとこにはあるのね。こんなところにお宝が捨ててあるなんて」
 だが、今はそれよりも地球の危機だ。一刻も早くこのことを知らさなければ。私は夢中で妻に訴えた。
「何とかして、ここから逃げ出そう。このことを知らせなくては。このままだと、人類の未来はもぐらのためになくなってしまう」
「何言ってんの、人類より宝石よ。あれを奪って逃げるのよ。もぐらには価値がわからないんだから、宝の持ち腐れ、このままゴミになって捨てられてしまうなんて、もったいない、早く宝石を持つのよ」
 四六時中、妻は私にもったいないと言う。やれ、冷蔵庫が開けっぱなしだとか電気を消せだとか言う。そのくせ自分はテレビを付けたまま長電話していたりする。
「宝石なんかどうだっていい、人類の危機が――」
 そこまで言って私は黙った。妻が怖い顔をして私を睨んでいたからだ。
「あなた、我が家の経済状況を考えて物を言ってよ。贅沢とは無縁の我が家。人類より妻を救いなさいよ。さぁ早くこれ持って」
 私は妻の言い成りだ。妻は次々に私に宝石を渡してくる。
「高そうな宝石を持って帰るのよ。これはダイヤ、こっちはルビー。あっ、大きなサファイアの原石よ、早く入れて」
 私には全く見分けがつかないが、妻にはわかるようだ。渡された石をポケットにねじ込んだ。妻は、今度はかなり大きなダイヤと称する岩石を持ち上げようとしている。
「そんな大きなものは諦めろ無理だ」
 妻は、私の言葉を無視しダイヤと称す岩を無理やり私に渡してきた。私は肌着の中にその岩を押し込んだ。ごつごつした石の塊が肌に当って痛いが、我慢だ。

 急がねばならない。先に妻が穴を登り、私は後ろに続く。見降ろすと目が眩みそうな高さだ。もぐらは、凄い勢いで追い駆けてくる。ついに地上の光が見えた。もう少しだ、妻が穴を登りきり、地上へと消え、続く私も這い上がろうとしたが、突然、足に鋭い痛みが走り引き摺り降ろされた。もぐらが私の足に鋭い爪を引っ掛けてぶら下がっている。私は、腕を伸ばし妻に引っ張ってくれと懇願したが、妻は私の胸元の大きな原石だけ引き上げると走り去ってしまった。私はずるずるともぐらに引き摺り下ろされ、ついに落ちた。落下しながら私は叫んだ。
「地球の未来が、ああー」

 自分の大きな叫び声に目が覚めた。夢か、ほっと胸を撫で下ろした。が、次の瞬間、足に痛みが走った。
「何だ!?」
 布団を捲った私は唖然とした。私の足に爪を立て睨んでいるのは、もぐら……。


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このストーリーに関するコメント

13/12/20 笹峰霧子

ほんとに愉快な物語です。
でも宝石の原石がこんなにあったらウファウファでしょうね。
私だって夫を蹴飛ばして地上へ上がるかも……。
それにしても草藍さんのこんなに面白いアイディアはどこまで広がるのでしょう。

13/12/20 草愛やし美

笹峰霧子さん、お読みくださって嬉しいです。コメントありがとうございます。

もし、こんな風にして宝石があったらという願望から生まれた作品です。いわば、欲からできたウファウファな話、私の秘密を暴露したようなものかもですね。汗
そういえば、私は相方の夢をめったに見ませんが、それは私が妻側にいるからかしら、案外、相方はこんな悪夢をみていたりして……。苦笑

13/12/20 yoshiki

読ませていただきました。

とても楽しく、面白く読みました。
モグラというアイデアがきいていますね(*^_^*)
この妻(典型的関西のおばちゃん?)の行動、セリフで笑えました。

13/12/20 草愛やし美

猫春雨さん、お立ち寄りくださって感謝、コメント励みになります、ありがとうございます。

おお! そのオチがよかったですね。この主人公にとっては、「もぐら……でなく妻が」でしょうね。そっちの方が百倍怖いかもしれませんね。笑
さすが、ホラー・恐怖ものに長けておられる猫春雨さん、恐怖に関しての洞察が素晴らしいです。

13/12/20 草愛やし美

yoshikiさん、コメント嬉しいです、いつもお読みくださってありがとうございます。

もぐらって実際に近くで見たことがないので、何となく怖いように感じています。今回投稿のために、画像検索を見まして、案外可愛い顔しているのだとちょっと驚きました。

関西風味たっぷりの奥さんですか。ああ、やっぱり。私自身がモデルかもですね──冷や汗。創作って、書き手の正体がばれてしまうものかもしれませんね。京都生まれですが、今や大阪在住が長くなり、ばりばり大阪のおせっかいおばちゃんになっている私ですわ。苦笑

13/12/21 鮎風 遊

げっ、やっぱりも@ら。
恐いぞ。
だけど、田舎で寝たらこんなこと起こりそうやね。
だけど、妻が噛みついてたら、もっと恐いかも。

13/12/21 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

夢のなかとはいえ、この夫婦の不毛の会話に笑えます。
地球の未来を心配する夫と目の前の宝石に目がくらむ妻

結局、妻のいいなりになってしまう憐れな夫
しかも最後は見捨てられて・・・

何だか、世間の一般的な夫婦像を見ているようです(笑)

13/12/21 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

もぐら、おそるべし! 夢を飛び越えて出てきてしまったのでしょうか?
でも明るいところは苦手だというし、早くお帰りになったほうが・・・
奇想天外な夢、楽しかったです。
でも夢の中でも夫婦の力関係が現実と一緒というところに一抹の悲哀を感じました。

13/12/26 吉原 百々

もぐら!
スピード感があって、こちらもはらはらしました。奥さんも最後はおいしいとこをきちんと持っていってくれて(笑)楽しかったです。

13/12/26 草愛やし美

鮎風遊さん、コメントありがとうございます。

妻が……、そうなんですよね。ありうるかも、2千文字制限なくてもあっても、伏字にして、『もぐらの横に、愛する○が……』なんて、書けばよかったかしらと思っています。笑

13/12/26 草愛やし美

泡沫恋歌さん、この様なもぐらの出る酷い内容の夢でなくとも、夫婦の上下関係が、これほどくっきり出る夢を見ることは、この夫にとって大変な悪夢でしょうね。
世のご夫婦さんは、昭和までと違って、奥さまに遠慮して生きておられるようです。可哀想な気もしますが、女性側としてはありがたい社会になったものだと思います。
コメントいつも感謝しています。ありがとうございました。

13/12/26 草愛やし美

そらの珊瑚さん、悲哀ですよね、このご主人の行く末が心配です。と言いながら他人ごとのように、考えている私です。苦笑

もぐら、そうですよね、明るいところは駄目ですよね。とすれば、電気をつければ退散させられるかもしれませんね。ぜひ、この主人公に教えてやってくださいませんか、珊瑚さん。えっ、私ですか、いえ、私はもぐらは苦手でして、駄目です。汗 コメントありがとうございました。

13/12/26 草愛やし美

OHIMEさん、そうなんですか、実は私も初めて見ました。もぐらの写真、結構可愛いなあって、──この作品のイメージ画像のために検索して、初めてまじまじと見つめてそう思いました。どちらかと言えば、もぐらは実写よりイラストのイメージ先行しているのではないかと思います。

「人類より妻を救いなさい」この作品で私の一番のお勧め?の台詞に共感いただきとても嬉しいです。女性の強さは、もぐらも超えるもの。コメントありがとうございました。

13/12/26 草愛やし美

花井 侑理さん、お読みくださって感謝しています。コメントありがとうございます。楽しんでくださったようで、とても喜んでいます。

この奥さまの強さは、世の妻の鑑として……、なんてこっそり言ってしまいそうな私です。苦笑

14/01/09 kotonoha

ああ、びっくりした。
何という妻ですか。金目のものだけを引き抜いて夫を助けないなんてね。

夢中で読んでしまいました。
面白い発想ですね。ありがとうございました。

14/01/19 ドーナツ

おもしろい!!!

その発想には いつも笑わせてもらってます。
こんなに宝石あったらねなぁ  っていつも夢見てますよ。
女は弱いなんて嘘だよね、
金めのもの見たら俄然 強くなっっちゃう。

ご主人は、お気の毒〜〜

14/03/23 リードマン

拝読しました!
宝石だけとって夫を見捨てる妻、シビアですね(苦笑)

14/03/29 草愛やし美

>kotonoha shizuku様、いつもお立ち寄りくださいまして、コメントをありがとうございます。
最近の妻の強さって、これくらいかなあと……、いえ、決して私では、あのその。苦笑
楽しんでいただけたとのコメント大変嬉しいです、励みにして頑張ります。ありがとうございました。

>ドーナツ様、こちらこそ、いつも楽しいコメント感謝しております。
こんな風に宝石が、転がっていましたら、そりゃもう必死ですから、誰もこうなりますよねえ、苦笑。金目のものに女性は弱い、そうなんです。これは普遍のものかもですよ。コメントありがとうございました。

>リードマン様、お立ち寄りいただき嬉しいです。コメント大変嬉しく、創作への意欲になりました、ありがとうございます。
楽しんでもらえる作品を書ければと願っております。創作、頑張っていきたいです、ありがとうございました。

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