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山盛りポテトさん

ショートショートがすきです。 星新一さんの小説が好きです。 社会でもがいています。 わかりやすい王道のショートショートを書きたいと思いつつ・・・脱線してます。

性別 男性
将来の夢 海外旅行!一度でいいから行ってみたかったり。
座右の銘 人見るもよし見ざるもよし我は咲くなり 跪く前に開き直る

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すれ違い、邂逅

13/12/20 コンテスト(テーマ):第四十七回 時空モノガタリ文学賞【 再会 】 コメント:1件 山盛りポテト 閲覧数:950

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深夜11時半、仕事を終え駅のホームをぬけて僕は家路についていた。
都会のネオンが反射する夜空には、幼い頃に田舎で夢中になって探した星空を確認することができない。
くしゃくしゃになったマルボロを口に加え火をつけようとした時だ。
「おじさん、私タバコ嫌いなんだよね」
暗がりから突然女の子が現われた。
年にして、小学校高学年ぐらいだろうか、長い髪を後ろで束ねて、そろそろ冬が始まる時分だというのに薄手のワンピースを着ていた。
「君、こんな時間に何してるの?」
「そんなことよりさ、それしまって?けむいの嫌いなの」
俺はタバコを仕舞うと、膝を曲げて女の子の目線に近づけた。
そのパッチリとした大きな瞳や、口から覗いている白い歯にはどこか見覚えがあるようにも感じた。
「こんな時間に外出歩いてたら危ないよ。自分の家はわかるかい?警察まで連れていこうか?」
「おじさんさ、私のことわかんないでしょ?もう何年も会ってないんだもんね」
「生憎、俺には君みたいな知り合いはいないんだよ」
「ひどいな、死んじゃった人のことなんかどうでもいい、か」
一瞬ドキリとした。
「最近の子供は趣味が悪いな。道ゆく人にそうやって声をかけては驚かせてるんだろ?」
「ほんとに覚えてないんだ。ヒントはね六年二組の、みんなからはマーちゃんって呼ばれてた。真知子だからマーちゃん。嫌いなものはね」
「鉄棒、だろ?」
女の子が言っていることが真実ならば、俺が小学生の時に、蒸し暑い夏の日だった。交通事故で亡くなった同級生の・・・。
突然だった。悲しくて。もう二度と会えないんだと思うと、必死に自分の中から初めから無かったことにしようとして、いつまでたっても消えてくれなくて、受験に追われて、就職をして、そんな時間の中で徐々にその子のことを考えることもなくなっていたんだ。
「やっと思い出したんだ」
嬉しそうに微笑む姿を見てさらに確信が強まる。そんなはずないという気持ちと、現実に起きている出来事が徐々に近づいていった。
「いっつも怒られるんだもん。逆上がりできないと将来困ることってある?私死んじゃったからわからないんだけどさ」
気がつくと俺は涙を流していることに気がついた。
「ないさ。困ることなんて何にもない。生きてさえ・・・」
「生きてさえいれば?だよね?ほらほら泣かない。男の子でしょ?いや、おじさんだけどね」
悪戯っぽい笑顔の中に俺を気遣うような不安な顔があった」
「でもなんで急に」
「私にもわかんないよ。気がついたらここにいて。なんだろうなー色々お互い思い残したことがあるんじゃないの?だから神様がこうやって私たちを引き合わせてくれた。それで納得しない?考えてもしょうがないじゃん」
思い残したことはあった。ずっとマーちゃんのことが好きで事故で亡くなってしまう前に席替えがあって隣の席になったのを喜んだことがあった。
「でも不思議だよねー私のこと嫌いだったんじゃない?ほら覚えてる?席替えで隣になった時に、なんでこいつと隣なんだよーって文句言ってたでしょ?私ショックだったな」
「それは違う。今の君にこんなこと言うのは変だけど、すごく嬉しくて、でも素直に気持ちに出せない年頃じゃないか」
「言い訳だよ」
「そう言われると何も言えないが・・・」
「言い訳。ずるいじゃん自分だけ」
今度は女の子目から涙が溢れていた。
白く細い腕で目をこすりながら消えいるような声で続けた。
「ホントはどうだったの?」
「好きだった」
「そっか・・・なんで早く言わないかなー私ずっと嫌われてるんじゃないかって、そんなこと考えながらある日突然・・・」
「もういいんだ言わないでくれ」
「逃げないで。私は死んだの。自分が死んだかどうかもわからないまま一瞬のうちに。これからあるどんな楽しいことも嫌なことも知らないまま死んじゃったの」
そこで会話が一瞬とまった。
「私もうすぐ消えるから」
震えるような声で捲くし立てるように言った。
「あーあ。でもスッキリした。これは罰なんだよ?私だけ嫌なきもちでこの世から消えちゃうのってつらいじゃん。だから同じことしてあげたの。どう?恨んでる?」
「恨んでなんかないよ。俺が悪かったんだ。謝る。だからもう少しだけ話ができないか?どんな小さいことでもいいんだ。今日は寒いねとかあの先生が嫌いだったとか」
「そういうことすらできなくなるのが死ぬってことなんだよね」
「待ってくれ!」
「ううん、もうダメみたい。じゃあね」
必死に作った笑顔がどんどん消えて、暗い夜道に俺だけが残されようとしていた。
「私も好きだった。ずっと」
俺はしばらく呆然としていた。気持ちを落ち着けるためにタバコを口にくわえ、火をつけようとしたところで手が止まった。
そのまま上着のポケットにしまい、重い足をようやく一歩進めることができた。


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このストーリーに関するコメント

14/03/23 リードマン

拝読しました!
思春期!(笑)

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