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ミカリさん

思うままにつらつらと書き綴る人見知り。 文体も構成も幼いですが、読んでいただけると嬉しいです。

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サンシキスミレの恋

13/12/19 コンテスト(テーマ):第四十七回 時空モノガタリ文学賞【 再会 】 コメント:1件 ミカリ 閲覧数:980

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明るい栗色が私に向かって駆けてくる。
「ユキおはよっ!」
「おはよう、リカ」
リカに飛びつかれ、ユキは眼鏡を落っことしそうになりながら挨拶を返した。そんなユキにリカはしたり顔でにひひと笑う。口角を上げるとできる方えくぼが、彼女のチャームポイントだった。
「今日特に寒くない?」
「うん。すごく寒い」
他愛もない会話を交わしながら、二人は高校の校門をくぐる。幼稚園からの幼なじみな二人だったが、ユキはリカが苦手だった。
コートの下から太ももを惜しげも無くさらして歩くリカと、かろうじて膝上丈のスカート姿のユキ。マフラーに埋れた小さな頭を見下ろしながら、ユキは小さくため息をついた。彼女といると自分の大きさと地味さが引き立ってしまう気がして、ユキはいつも萎縮しながら隣を歩いていた。
…まぁ、リカのことが苦手な理由はそれだけではないのだが。
「タクミおはよー!」
教室に入るなり、リカは彼氏であるタクミの元へ走っていった。リカと同じバスケ部で、体格の良いタクミは難なくリカを受け止める。その様子を少しだけ目で追って、ユキは自らの席についてコートを脱いだ。リカは教室ではタクミにべったりであまりユキには構わなくなる。そのことが、ユキは少し寂しかった。

***

「よーい…始め!」
体育の授業中、ブザーの音と共にゲームが始まる。男子は校庭でサッカーを、女子は体育館でバスケットボールをしていた。
ユキはコートの端っこで、敵チームのリカの華麗なドリブルさばきを見ていた。あっという間にゴールを決め、体育教師にもう少し力を抜くよう注意されていた。先生に見えないように舌を出すリカは女の目で見ても愛らしい。
スポーツなら何でもござれなリカと違い、ユキは運動があまり得意ではない。というか苦手である。だから今日の体育もコート脇で細々とボール追いかけるふりをしていたのだが。
「ユキ危ないっ!」
「へ?」
少しよそ見をしているとリカの鋭い声が聞こえた。慌てて意識を集中させると黒い影がユキのすぐそこまで迫っていた。ボールだ。突然の出来事に思わず目を瞑ると、ドンッと鈍くぶつかる音が聞こえた。続いてどたりと何かが落ちる音。だけど、不思議とどこも痛くない。
「キャーッ!」
クラスメイトの声ではっとした。
「リカ!」
目の前でうずくまるリカに、ユキは血相を変えてしゃがみこむ。
「リカ、リカ…!」
「はは…ごめん、失敗しちゃった…」
ざわざわとクラスメイトが集まる中、眉をハの字にしたリカが眉間にしわを寄せながら力なく笑う。ほどなく先生が来て、リカは保健室へ向かうことになった。
「わ、私もついていっていいですか」
短く首を縦に振った先生に、ユキは体育教師に担がれたリカを心配そうに見つめながらついて行くと、運悪く養護教諭が席を外していた。
「私が先生を呼んでくるから、広瀬はここで吉川を見ていて」
程なく保健室を後にした体育教師に、ユキはもう一度リカを見た。
「大丈夫…?」
「んー、痛いけど、たぶん大丈夫」
「多分って…」
「ほら、ユキ、とろいからさ。あたしが守ってあげないと」
痛みをこらえて微笑むリカに、心臓がぎゅうと痛む。
可愛かったり、格好良かったり。頼りになったり、ならなかったり。
私より小さいくせに私を守ろうとしたり、いざという時は、何よりも私を一番に考えてくれたり。
こういうところが苦手なのだ。
ずっと昔に仕舞ったはずの感情が、溢れそうになるから。
「なんでユキが泣くの」
「リカが心配かけるから…!」
涙の理由は、それだけではないけれど。
リカの手を握って額をくっつけると、リカはしょうがないなあといった表情でユキの頭を撫でた。駄目、とユキは思う。このタイミングそんな優しいことをしないで。そんな目で見ないで。気持ちが、溢れてしまう。
だけど今、ここにタクミはいない。
『――…、』
胸の裡で呟いた言葉が、リカに伝わることはないけれど。
捨てても、隠しても、気づかないふりをしても駄目だった。

ユキはどうしようもなく、リカのことが好きだった。

だけど、この想いが届くことは多分一生ないのだろう。
せっかく再会した感情だが、この小さな胸に置いておくだけの余裕は、ユキにはなかった。今ですらリカとタクミを見るのが辛いのに、これ以上は抱えきれない。
私とリカは、友達だから。
「もう、今度からこんな危ないことはしないでよ」
「だからごめんってばぁ」
涙を拭い、リカのおでこをこつんと叩いたところで、体育教師が養護教諭を連れて戻ってきた。ユキは席を外し、すぐさま養護教諭による問診が始まる。
手当を受けるリカの姿を見ながら、ユキは静かに自分の感情に蓋をした。もう二度と出会わぬよう、固く固く鍵をかけて。




サンシキスミレ:花言葉は『少女の恋』『私を思ってください』など


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このストーリーに関するコメント

14/03/22 リードマン

拝読しました!
テーマの割りに凄くさわやかな読了感でした。きっとリカの清清しさに引っ張られてしまったんでしょうね。

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