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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

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You may buy it ... ?

13/12/11 コンテスト(テーマ):第四十六回 時空モノガタリ文学賞【 夢 】 コメント:10件 光石七 閲覧数:1515

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 手足を縛られ床に転がされた谷を、鳴沢は冷たく見下ろした。
「鳴沢、何の真似だ!?」
叫ぶ谷の腹を鳴沢は蹴った。谷が呻く。
「いつも無茶ばっか言いやがって。ストレスなんだよ。何でも下に押し付けんじゃねえ!」
鳴沢は左手で谷の胸倉を掴み、上体を浮かせた。右手で頬を殴りつける。谷は再び床に倒れた。鼻血が出た顔を苦痛に歪ませ、体を捩る。鳴沢はその頭を足で踏んだ。
「課長風情がエラそうによお」
こめかみを数回踵で押し、鳴沢は谷から離れた。懐から拳銃を取り出す。
「6発全部使うか……」
鳴沢は銃を構えた。
「や、やめろ! 冗談はよせ!」
喚く谷の右太腿を銃弾が貫いた。続いて右肩を弾がかすめる。
「やめてくれ! こんなこと許されるのか!?」
――いいんだよ、夢なんだから。鳴沢は谷の腹を撃ち、今度は頭に狙いを定めた。

 きっかけは娘を連れて行った喫茶店だった。小学生の莉乃は愛犬の死にふさぎ込んでいた。パフェでも食べさせてやろうと誘ったのだ。
「……オズ、アイスクリーム好きだったよね」
パフェを食べながらも莉乃は愛犬を思う。鳴沢の心は痛んだ。
「オズにも食べさせてあげたい。これ、一口で食べちゃうかな……オズ……」
莉乃は涙ぐんでしまった。
「悲しいけど、いつかはお別れが来るんだ。でも、莉乃にはオズとの思い出がたくさんあるだろ? 楽しい思い出を大事にすればいい。オズのためにも元気を出そう?」
鳴沢が言っても、莉乃の顔は曇っている。
「オズに会いたい……」
「死んだら生き返れない。夢の中なら会えるかもしれないけど……」
「……パパ、会わせて。莉乃の夢に、オズを連れて来て……」 
ボロボロ涙を流す莉乃。鳴沢は困ってしまった。
「お嬢さんの願い、叶えて差し上げましょうか?」
莉乃がトイレに立った時、隣の男が声を掛けてきた。
「失礼、聞こえたもので。夢で、でしたらオズ君と会えますよ」
戸惑う鳴沢に男は名刺を差し出した。『恵夢工房 調夢師 綾須颯』と書いてある。
「チョウ……ムシ?」
聞いたことがない肩書きだ。
「はい、ご要望に合わせて夢を調合致します」
綾須は微笑んで答え、鞄から飴玉のようなものを取り出した。
「調合した夢の素『夢玉』です。レム睡眠時に見たい夢を見ることができます。使い方は、就寝前かお休み中に袋から出して額に当てるだけ。10秒ほどで溶けて、成分が脳に浸透していきます。心地よく眠りに入る効果もあります。これはサンプルで、空を飛ぶ夢が見られます」
綾須はサンプルの夢玉を鳴沢に渡した。そして「よろしければご連絡を」と言い残して立ち去った。
 2日後、鳴沢は恵夢工房を訪ねた。半信半疑で夢玉を使ったが、空を飛ぶ快感は目覚めても残っていた。莉乃はオズに対して何か心残りがあるようだし、癒しになればと思ったのだ。
「愛犬と遊ぶ夢ですね?」
綾須は鳴沢から話を聞き、夢玉を調合した。鳴沢は莉乃とオズの写真も持参したが、当人の願望や潜在意識が勝手に作用するので不要だという。料金は宝くじ10枚分。オーダー次第で上下するという。
 その夜、鳴沢は眠る莉乃の額にこっそり夢玉を載せた。翌朝、莉乃がにこにこしながら報告してきた。
「オズが夢に出てきたの。莉乃ね、オズのお散歩サボっちゃったことがあるの。オズに“ごめんね”って言えた。もう一回遊べて楽しかった」
莉乃に明るさが戻った。
 それきりのつもりだったが、再び夢玉を思い出す機会があった。自分の企画の代わりに同僚の案が採用され、鳴沢は悔しくて仕方なかった。同僚が心底憎かった。その時ふと思ったのだ。実際にやれば犯罪だが夢の世界でなら殺してやれる、と。早速綾須に相談した。
「そういう夢を希望される方、いらっしゃいますよ。殴ろうが刀を振り回そうが、夢の中なら罪に問われませんからね。胸がすっとすると好評です」
鳴沢は同僚を嬲り殺す夢を注文した。夢だという自覚があれば遠慮なく痛めつけられる。翌朝の爽快感は格別だった。それ以降、鳴沢は嫌なことは夢玉で憂さを晴らすようになった。

 その日も胸糞悪い取引先の相手を刺し殺す夢を見た。
「やっと起きたか。話を聞かせてもらおう」
鳴沢が目覚めると、見知らぬ部屋に見知らぬ男。
「何故平野さんを刺した?」
――平野? 俺が刺したのはQ興産の倉持だ、夢の中で。……こいつら、どうして俺の夢を? ……あれ? 昨夜夢玉使ったっけ? そもそも家に帰ったか? この血は……?
 鳴沢は容疑者として警察に聴取されていることを理解し始めた。

「依子、眠れてる?」
やつれた鳴沢の妻を友人が心配する。
「夢の中でも犯罪者の妻って非難されるの」
「寝てる間くらい神経休めなきゃ。ユン様に抱きしめてもらう?」
「韓国から連れて来る気?」
依子が微かに笑った。
「いいところがあるの」
友人は依子に恵夢工房を紹介した。


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このストーリーに関するコメント

13/12/11 光石七

>OHIMEさん
コメントありがとうございます。
オチが弱い気もしつつ、これ以上まとまりませんでした。
“夢を売る人”から出発した話でした。
ちなみに、今回はタイトルと調夢師の名前で遊んでます。
タイトルを早口で言うと鹿児島弁に、調夢師は“アヤスソウ”で“怪しそう”でした(笑)

13/12/13 草愛やし美

光石七さん、拝読しました。

夢に頼り過ぎては……ですかあ。いや、しかし、もしこのような調夢師が実在するならと思わずには、いられません。自分自身だったら、夢であれもこれもしたいという願望を考えてしまいました、あ、でも決して殺人はないですよ。苦笑
夢というテーマにとてもマッチした設定で、大変面白く一気に読み終えました。ありがとうございました。

13/12/13 光石七

>草藍さん
ありがとうございます。
夢の中でしか思い通りにならないというのも虚しい気もしつつ(苦笑)
夢玉の原料が恐ろしいものだったりする可能性もありますね。
楽しんでいただけてよかったです。

13/12/15 光石七

>メイ王星さん
コメントありがとうございます。
当初綾須は黒魔術師のような設定で、夢玉の真実を知った鳴沢が恐ろしい目に遭う、という筋を考えていました。
はっきりした筋道が見えず、あれこれこねくり回した挙句、この形になりました。
「笑ゥせぇるすまん」とか「Y氏の隣人」とかの影響もあるかもしれません。
面白かったと言ってくださり、うれしいです。

13/12/15 かめかめ

ユン様^^;

私も夢玉欲しいです。悪用はしませんよ、ええ、ええ。

13/12/15 光石七

>かめかめさん
母が韓流ドラマにハマってまして……(笑)
夢玉がお気に召されたようで、ありがとうございます。
使い方次第で幸せにも不幸せにもなりそうです。

14/03/14 リードマン

拝読しました!
我慢する事を忘れてしまった人間は暴走するのみですねぇ。

14/03/14 光石七

>リードマンさん
コメントありがとうございます。
日頃、理性が重要なブレーキの役割を果たしているのですね。

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