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かめかめさん

http://ameblo.jp/kamekame1976/ ブログデシセイカツバクロチウ

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座右の銘 ハワイに行きたいと思ったら、一歩踏み出さないといけない。 ハワイは向こうから近づいてこない。

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     白

13/12/07 コンテスト(テーマ):第四十六回 時空モノガタリ文学賞【 夢 】 コメント:3件 かめかめ 閲覧数:1647

時空モノガタリからの選評

「匂いも音も影もない」白のリフレインがとにかく恐ろしい作品でした。恐いと思わせるものは今までも殆どないので、印象に残りました。
白の繰り返しの中に途中から混じる赤い「小さな沁み」が、眠り続ける和美の腕に刺されたチューブの赤へと繋がっていくオチが面白いと思いました。
和美の見た悪夢は、身体的な刺激が原因かもしれませんが、同時に、日々殺されるはつかねずみと和美自身の狂気とが重なり、内と外の世界がつながったまま、永遠なる悪夢の連鎖のなかに眠っているような恐さが強烈な印象を残す作品でした。

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まっしろいへや


まっしろいおんなのこ


まっしろなおやつ


まっしろなおんなのひとが


まっしろなてでおんなのこを


まっしろなとびらのむこうへ



雪崩くる丸太、丸太、丸太、丸太の洪水。
押し流される、押しつぶされる、そして


                      


                      おしまい




和美はベッドの上で跳ね起きた。
鼓動がはげしく耳の中でぐわんぐわん音がする。額に手を当て左右を見回す。
桃色のカーテン、小さなドレッサー、壁にかけたベージュのコート。
いつもと変わらない自分の部屋。
ふうっと息を吐く。汗が頬をつたい顎まで伸びる。

見慣れた夢。いつもの悪夢。
小さなころから繰り返し、おなじみの。
何度見ても馴れはしない。見れば必ず飛び起きる。
突如、落ちてくる丸太に驚くというのも勿論あるが、それよりも
まっしろい部屋が怖くて仕方がないのだ。
なにもかもが白く、匂いも音も影もないまっしろい部屋が。

和美には心当たりがない。まっしろいその部屋に。
子供の頃は夢を見て泣くたび親が諭してくれた。
悪い夢は皆が見るのだ。
最近は不可思議と感じる。大人で悪夢を見るものは少ない。
しろい夢の頻度が増しているのだ。
見るごとに恐怖もいや増す。

和美はもう、眠ることができい。
夜が過ぎていくのを待つだけだ。


通勤電車。人の塊に押しつぶされながら仕事へ。
ベージュのコートと桃色の口紅。
仕事は九時から十八時まで。時には二十時まで。時には二十二時まで。
ロッカールーム。皆がしろを纏う。和美の戦闘服。白衣。研究所なのだ。
まっしろなはつかねずみを殺すのだ。
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日。
時には生かす。

まっしろいへや、
まっしろいつくえのうえ、
まっしろいねずみに、
まっしろいてぶくろで、
まっしろいえきたいを
飲ます。

和美はくらくらと眩暈を感じる。
びちびちと手に当たるねずみの尻尾。
だんだん閉じて行く瞼。しなだれる髭。
うっとりと見つめる。観察。
いや、これは観察なのだ。研究の。
動かなくなるねずみ。腹を切り裂かれる、ねずみ。


和美は飛び起きる。
まっしろいへや、
まっしろいこども、
まっしろいおとな、
まっしろいかべ、
まっしろいとびら。
そのとびらのみえない影。
丸太は落ちなかった。


通勤電車。人の波に押されながら乗り込み。
奥へ奥へ奥へ奥へ奥へ。
ベージュのコート、ベージュのパンプス、ベージュのシャドウ、ベージュのリップ。
押される。扉に押し付けられる。
電車が揺れる。人は揺れない。籠いっぱいの塊になって。
人の頭だけがにょきにょきにょき。動いたり止まったり。
和美は扉に押し付けられる丸太のように。

ロッカールーム。しろを纏う。白衣、に小さな染み。赤い。
しろいねずみの目のように赤。
ぱたたたたた。落ちた赤。
和美は気付かない。昨日も気づかない。一昨日も気づかない。
                             赤。
まっしろいはつかねずみの目のような。
まっしろいくすりを飲むと閉じる。みえない、        赤。


和美は飛び起きる。
まっしろいへやの、まっしろいおんなの、そのくちびるに。
ひらかれたあのくちびるに。
恐怖した。怖れた。逃げた。夢の外に。
あのくちびる。
笑っていた?蔑んでいた?それとも……?


纏うしろ、足をいれるしろ、くちびるには赤。
まっしろい建物、まっしろい階段、まっしろい手すり。
手すりを越え、手にした紙をばらまく。
まっしろい紙ふぶき。ひらひらひら。
和美は体の力を抜き、落ちて行く。丸太のように。
赤。
のなかに、しろいおんな。


和美は飛び起きる。
鼓動は早鐘のように。ぐわらぐわらと鳴る。
起きろ、起きろ、起きろ、火事だ、火事だ、火事だ、
まっしろいへやに、赤。
和美は飛び起きる。
足が赤に包まれる。丸太のように燃え


和美は飛び起きる。
まっしろいへや、
まっしろいかずみ、
まっしろいおんなに
まっしろいえきたいを
まっしろいてぶくろで
白衣に一点の赤。
これから自分が吐き出す赤。


和美は飛び起きる。
なにもないまっしろなせかいに
飛び起きる。



「どうだ和美は」

「ええ、よく眠ってるわ」

「裁判、勝ったよ。材木屋が慰謝料を払うことになった」

「そう」

「ああ」

「どんな夢を見ているのかしらね」

「きっといい夢だろう。穏やかな寝顔だ」

「目を……覚ましてくれないかしらね」

「いつかきっと。きっとな」

和美は飛び起きた。
まっしろいへや、
まっしろいかずみ、
まっしろいチューブ、
まっしろいおんなのて、
まっしろいうでにささる。

生命をつなぐ、一本の赤。


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このストーリーに関するコメント

13/12/07 そらの珊瑚

かめかめさん 拝読しました。

何かを暗喩しているような繰り返される詩。
それがラストに明かされ、納得です。
白だけの部屋というものは怖いですね、そんな白と赤との対比も見事でした。

13/12/15 かめかめ

>そらの珊瑚さん
コメントありがとうございます。
拙い作品に過分なお言葉。恐縮です

14/03/14 リードマン

拝読しました!
黒よりも白の方が恐いと、初めて思わされました。

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