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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
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復讐は闇のままに……

13/12/02 コンテスト(テーマ):第四十四回 時空モノガタリ文学賞【 復讐 】 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1341

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 復讐は闇のままに進む……。
   ◆
「で、復讐したいから、ここへ引っ越して来たいって? どゆこと、そんなでかい体で。無理でしょ、自分でわかんないの、月は地球の四分の一しかないんだよ。あんた馬鹿じゃない。太陽に行けば、あっちなら、地球の百倍ほどあるじゃん」
「太陽では、海の僕は一瞬にして蒸発して消滅だ」
「だからさ、復讐なんか考えないの、あんたは、地球に必要なの、わからんちん。例えば海亀がこの真下にいると考えてみなよ。月夜に海亀があの平べったい前足で、砂浜に懸命に穴掘ってさ、幾つも卵を産み落とし、浜辺を戻って行く。だけど、どこまで行っても波は迎えにやって来ない。海がなくなったのに気づかない海亀は、海底だった谷底へ落ちて行く。あんたがいないと、海亀はどこへ戻ればいいのよ。あんた、昔、乙姫のために、散々亀を酷使したくせに……」
「あれは、乙姫がかってにやったことで僕じゃない。でも、乙姫も僕の復讐に同意してくれている」
「もしや、あんた乙姫一族だけ連れてくつもりじゃ……まさかそれはないよね。あんた、いなくなったら、地球は死んじゃうんだよ。確か、ひとりで寂しいからって生き物作ったの、あんた自身でしょ、母なる海っていう言葉、竹取のじいさんからあたし聞いたことあるもん」
「生き物は、引っ越し先でまた作ればいいかなと……」
「ひどぉい、今生きているものを見捨てるっていうの、極悪非道、鬼ぃ。そんなの、復讐じゃない! 逃げ出すだけじゃないの」
 元祖ツンデレのかぐや姫は、海に向かってため口で非難した。海が、かぐやの住む月に引っ越したいと言ってきたからだ。なぜ、こういう事態になったのか、かぐやにだって理解できた。月から地球の様子は手に取るようにわかるからだ。
近年の温暖化による異常気象や土壌汚染からくる海の汚染は酷いものだった。赤潮が発生した海が、人間に復習を考え始めてから、もう何年経っただろう。汚染した空気、水、人間は自分の便利な生活のために化学物質を産み出した。だがそれらは、海を汚し続けた。地球の七割の広さを有する自分には、無縁だと思っていたが違っていた。ある日、海は、確実に吾身が滅びることを認識した──大量の魚が海面に浮かんだのだ。苦しみ出した彼らはだらしなく開いた口から体液を掃き出し白目を剥いて浮いた。かろうじて生き残った魚達が産んだ子孫達は身体が歪んでいた。海は、恐怖に駆られ、いつか自らも滅びると考えたのだ。

「あたしも昔、人間に復習したから、あんたの気持ちはわかるけどさ、人間にはあんたの悲鳴が聞こえてないから、復讐だとはわかって貰えないよ」
「君の場合、争い事ばかりして月を見上げてくれないという不満だけで復讐を企んだのだな。竹取の翁の元でぬくぬくと育てて貰ったというのに……、月へ戻ると言い張りやり遂げた復讐は見事だと思う。腑抜けになった男共は、夜毎、月を仰ぐようになったからな。だが、復讐経験のある君に僕の復讐を止められるのは心外だ。しかも、僕の場合は命の危機という君より深刻な状況に晒されているんだぞ」
「確かに復讐に成功したわ。単細胞人間は月見のイベントデイまで設けてくれた。けどね復讐って後味悪いものだよ。こんなあたしでも竹取のじいさんのこと思う時、胸が痛むもん。それに、人間は海が復讐するなんて微塵も考えていないからあんたが復讐したって、ブラックホールとか太陽の黒点のせいにされるだけだよ。復讐される自覚がない奴らに復讐だって叫んでも甲斐ないでしょ。ツイでもやって拡散希望で呟くってどうよ」
「……」
「ところで、あんたどうしてこの月を選んだの? 火星だって土星だって候補はいっぱいあるのに──ははあん、あんた、ほんとは地球の行く末が心配なんでしょ。だから地球がよく見える月にしようって。未練たらしい、おおヤダね」
 海は図星で考えを言い当てられ、視線が定まらず落ち着かなくなった。
「人間には僕の復讐だとわからない……、到底、非が自分達にあると気づかないというのか」
「そういうことだね、でも確かに地球ヤバイわ。あんたの気持ちもわかるから、ちょっとだけ復讐の手伝いしてもいいよ。海水少しなら静かの海へ移すこと許してあげる」
「本当か! 僅かでもありがたい、どこの海水がいい」
「マリアナ海溝の深淵に眠る海水がいいな、あそこ深いから澄んでいて、すっごい青くて綺麗じゃん。そこ少しだけ切り取って移送してね。じゃそういうことでよろしこ〜」
 海は、海溝の海水を汲み出し月へ移した。移送時、毀れた海水が僅かだが飛び散るのを人間は発見した。だが、人は、それを新彗星と間違え大騒ぎしただけに終わってしまった。その後、毀れた海水が太陽熱で蒸発した時も、人間は、新彗星が突如消滅したとしか考えなかった。

 復讐は闇のままに進む。愚かな人間は自らの非に気づかぬ、嗚呼。


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このストーリーに関するコメント

13/12/02 朔良

草藍さん、こんばんは^^
拝読させていただきました。
海の復讐が、まさか彗星の消滅に結びつくとは!(アイソン彗星みたいですね^^)
お見事です。

近年の地球の状態を考えると、人間は、海はもちろん、地球自体から復讐を企てられてもしょうがないかもしれません^^;

かぐや姫と海のやり取りが現実的で楽しめると同時に、考えさせられる作品でした。
素敵な作品ありがとうございました^^

13/12/02 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

海に復讐されるなんて・・・想像もしなかった。

たぶん、中国あたりの川なんかも勝手に白やら青やら緑にされて・・・
絶対に復讐したいと思うわ。

自然を愛せなくなったら、人類はお終いです<(* ̄^ ̄*)>キッパリ

13/12/02 yoshiki

読ませていただきました。

これ、海とかぐや姫の会話がとても面白かったです。
おもわず笑いました(*^_^*)

なるほどねえ。海の気持ちもわかりますねえ。彗星がうまくあしらわれいてそこもお上手でした! 拍手

13/12/03 草愛やし美

朔良さん、お読みくださってコメントありがとうございます。

アイソン彗星のこと思い出してくださって凄く嬉しいです。この作品、思いついたのは良いのですが、なかなかオチが出てこなくて、悩みに悩んでいました。そんな時に、あのISON彗星が消滅したニュースを知りました。何とか結びつけることができ(こじつけという感も明らかですが 苦笑)、ほっとしました。
この作品を書くために調べていましたら、近年地球上のあちこちで、現実に魚の大量死の事実も知りました。世界規模で、起きていて原因も不明だとか……やはり、これは海の復讐の警告かもしれませんね。

13/12/03 草愛やし美

泡沫恋歌さん、お立ち寄り感謝しています。いつも、コメントありがとうございます。嬉しいです。

そうそうありましたね、着色された川。まるで、幼稚園児が塗りたくったような、どぎついお色のお絵かき状態の護岸に驚きました。中国でのあの行為に、きっとあの川は復讐を考えているかもしれませんねえ。

13/12/03 草愛やし美

yoshikiさん、お褒めくださってコメントに拍手まで戴き大変嬉しいです、ありがとうございます。

会話楽しんで戴けて嬉しいです。昔の時代の人なのに、かぐや姫は、ツンデレ風にし、海は「私」でなく頼りないお坊ちゃん風味の「僕」にしてみました。作者も地球人ですので、海の復讐は怖いです。──ですので、あえて、こういう人柄?にしました。苦笑 これなら、もしや、復讐を思いとどまってくれるのではないかしらとの淡い願望を込めて設定した次第です。

13/12/03 草愛やし美

OHIMEさんほどの、文才のあるお方からの、「お見事」とのコメント大変光栄に思います。嬉しいです、ありがとうございます。

海があって空があって、綺麗な環境があっての地球ですから、大切にしていつまでも、踏み止まって戴きたいと思います。私はどちらかというと山よりも海派でして、青い海が大好きです、それで、こういう話になりました。

私自身が、昔人間ですので、キャラでは、昔話の方々に大変馴染みがありますので、ご登場願いました。笑 みなさん、私の頭の中で出番を待っていてくれているような気がしています。我儘な私に引っ張り出された当人たちはきっと怒っているかもしれませんね。特にかぐや姫さまには、ツンデレ、ため口をきけとの設定、ご立腹いかばかりかと思います。ここで平謝りに流行の土下座でもしておくことにしますわあ〜 _○/|_ 土下座

13/12/03 そらの珊瑚

草藍さん 拝読しました。

おとぎ話の登場人物が裏事情を語るコミカルなお話になかに、人間が地球に対して行っていることへの痛烈な批判を織り混ぜる手法がいいですね!
海が少しでももとのきれいな海になりますように、努力していかなかればいけないな〜って思いました。

13/12/08 鮎風 遊

そうだったのですか、新彗星は移送中の海水だったのですね。
人間だから気づきませんでした。

現在、復讐進行中ですね。
なんとかしないとダメですね。

14/03/12 リードマン

拝読しました!
かぐや姫、カッコいいですねぇ(笑)

14/03/29 草愛やし美

>そらの珊瑚様、コメントありがとうございます。
海や河川が最近は綺麗になっているようで喜んでいます。水は命の源ですから、心して汚さないようにと思っています。
楽しんでいただけたとのコメント嬉しいです、ありがとうございました。

>凪沙薫様、お読みいただき感謝しております。
ガイヤ理論は知りませんでした、そういう考えはとても良いですね。こういうことは、これからもずっと、人類が考えていかないと、未来の子供達が困ることになると思います。貴重なコメントをありがとうございました。

>猫春雨様、お読みくださいまして嬉しいです。
かぐや姫に復讐を相談しているのは、海だけではない……これは有り得るかもしれません。そして、凄く恐ろしいことかもしれませんね。人類への警告に少しはなったとすれば嬉しいのですが。苦笑 コメントありがとうございました。 

>鮎風遊様、コメントありがとうございます。
そうなんですよ、新彗星は、実は……なんてね、そうだとすれば怖いかもですが。苦笑
何とかしないと、復讐されてしまっては困ります、どうしましょう。大汗

>リードマン様、いつもお立ち寄りいただき感謝しています。
かぐや姫って、貫録ある人物だったという設定です。楽しんでいただけたようで嬉しいです。コメントありがとうございました。

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