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ポテトチップスさん

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オレだよオレ

13/12/02 コンテスト(テーマ):第四十六回 時空モノガタリ文学賞【 夢 】 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:1010

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相模湖で手漕ぎボートに乗った。妻の明恵と娘の真奈美は満面の笑みでボートに乗っている。私はボートをさらに漕いで、船着場からどんどん離れて行った。
12月の澄んだ空は青空が広がり、ボートを漕ぎながら私は目を瞑った。
鳥のサエズリが心を静め、遠くから吹いてくるそよ風が心を浄化するようだった。
突然、風が強く頬を撫でた。明恵と真奈美が悲鳴をあげた。私は心配ないよと思いつつ、ゆっくりと目を開けた。だいぶ湖の表面のうねりが強くなっていた。空を見上げると、不気味なほどドンよりした雲が空を覆っていた。しだいにボートは上下に揺れ始め、明恵と真奈美は不安な表情を顔に浮かばせながら、私を見つめていた。
次の瞬間、体が激しく揺れ、ドンドンドン! という強い音が聞こえたと思ったら、ボートは真っ二つに割れた。
「あなた! あなた!」
目を開けると、妻の明恵が不安な顔で私を揺すっていた。
玄関からドアが壊れそうな程に、何者かが強くドアを叩いていた。
畳の上で上半身を起こした私は、何者かが早く去ってくれることを願った。湖でボートが沈んだのは夢だった。
六畳一間の片隅には、膝を抱えてうろたえる真奈美がいた。
ドアを乱暴に叩くのはいっこうに止まず、もうドアが壊れそうだった。
「あなた、出てください」と、明恵が顔を両手で覆いながら言った。
真奈美は両手で耳を塞ぎながら、きつく目を瞑っていた。
私はもう諦め、立ち上がって玄関ドアに向かいドアを開けた。
「いるじゃんかよ。いるなら早く出てよね。おかげで手と足が痛くなったじゃない」と、顔と不釣り合いなスーツを着た2人の男の片方が言った。
「すいません……」
「竹田さん、引っ越しするなら新しい住所教えてよね。突然いなくなっちゃうから、随分探しましたよ。まさか夜逃げした訳じゃないよね」
「いえ、連絡しようと思っていたんですが、バタバタしていて……」
「借りた金はちゃんと返すのがマナーだよね」と言って、男は鋭い目で睨んできた。
「今月分」
「すいません。引っ越しでお金がかかっちゃって、今月は待ってもらえませんか……」
「また? 気の優しい僕たちでも、こう何回も待たされちゃ、手荒いことしちゃいますよ。いいの?」
私は土下座をした。
「じゃー、特別だからね」
「ありがとうございます」
「あっ、そうだ。うちの会社の社長から、竹田さんに言付けを頼まれていたんだった」
「何でしょうか?」
「来月中に700万円、一括で返済してくださいって言付け頼まれたの」
「そんなの無理ですよ」
「だよね。でも安心して。うちの社長は人間の出来た人だから特別条件を用意してくれたの」
「特別条件とは?」
「竹田さんの16歳の娘さん、可愛いよね。きっと風俗店でも人気がでるよ」
「ちょっと待ってくださいよ!」
「だったら借りた金返せよテメー!」と、男は荒声で言った。
男たちが立ち去った後、部屋に戻ると妻と娘は泣いていた。
翌日、アパートの玄関外で壊れかけたドアの補修をしていると、隣に住む老婆が玄関外に現れた。一昨日も玄関外で老婆と他愛もない話をしていた。老婆は独り暮らしで、都内に私と年の近い息子が住んでいるのだと話していた。
「こんちには」と私は言った。
「どうも、こんにちは」
「お出かけですか?」
「ええ、近所のスーパーにお線香を買いに行って来ます」
老婆は足が悪いらしく、歩くのがしんどそうだった。
「私が買って来ましょうか?」
「いえ、ご迷惑でしょうから」
「どうせ、暇ですから」
「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」
私は110円を老婆から預かって、スーパーで105円のお線香を買った。
スーパーからの帰り、私はある事を思いつき近くの公衆電話ボックスに入った。タウンページで老婆の自宅の電話番号を調べると電話をかけた。
『はい、速水です』
「母さんオレだよオレ」
『和彦かい?』
「ああ、そうだよ。母さんどうしよう、痴漢で捕まっちゃったよ」
『なんて馬鹿なことを……』
「母さん、いま被害者の女性から示談で済まさないかって言われてるんだ」
『示談しなさい』
「でも示談金が700万円なんだ。そんな大金ないよ……」
『母ちゃんが代わりに払ってあげるから』
「ごめんよ。じゃあ、バイク便でお金を取りに行かせるから、中がバレない箱に入れてバイク便の人に渡してくれ」
『分かったわ。これから銀行に行ってお金をおろしてくるから、1時間後くらいに取りにくるように手配してちょうだい』
「すまん母さん。それと、このことは誰にも言わないでくれ。俺に会ったとしてもこの件は忘れくれ」
『分かったわ。もう馬鹿なことはするんじゃないよ』
公衆電話ボックスを出た私は、近くに設置されているベンチに腰を下ろした。
これで悪夢にうなされる日々から解放されると、私は安堵して空を見上げた。

終わり


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このストーリーに関するコメント

14/03/12 リードマン

拝読しました!
今時読めなさそうなコテコテの借金取りの登場にワクワクしてしまいました(笑)

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