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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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漢字一文字の旅 連載17

13/11/25 コンテスト(テーマ):第二十二回 【 自由投稿スペース 】 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1538

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 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどをよろしくお願いします。


連載17  断 憩 園 珠 瓜 蟹

17−(1) 【断】

 【断】、左の部は織機で糸を断ち切ってる形であり、右の斤はその糸を切った「斤」(おの)だとか。

 「断機の戒め」という言葉がある。
 孟子が学問半ばで家に帰ってきた。その時、母は織っていた糸を断ち切って、途中で投げ出せば織物は出来ないと戒めた。

 日本にもこのような「断機の戒め」がある。
 京都の川島織物という会社。
 第一次世界大戦中、明治宮殿に納める壁掛け「春郊鷹狩」を織っていた。
 原画は澤部清五郎の逸品。
 しかし時代背景もあり、染料の品質が悪かった。出来映えは素人が気付くことはないが、微妙に色合いが違う。

 このような壁掛けを納入すべきか、三代目川島甚兵衛の妻、絹子は悩んだ。
 そして苦渋の思いの中で腹を決めた。
 その織物を裁断してしまったのだ。
 翌日、宮内庁に出向き、不良染料を使ったことを謝った。
 それから初心に戻り、良い染料を調達し、織機も新しい機械にして、二年後に素晴らしい壁掛けを納入した。

 絹子によって裁断された織物、それは「ものづくり」の原点、良い物を作るためには決して妥協を許すな、こんな思いを後進に伝えている。
 つまり「断機の戒め」として、今も会社に残されているのだ。

 話題は変わるが、【断】という漢字に「油断大敵」という言葉がある。

 最澄は比叡山に天台宗を開いた。
 そしてそこに千二百年以上灯り続けている「不滅の法灯」がある。
 最澄はこの灯りに、
 「明(あき)らけく 後(のち)の仏の 御世(みよ)までも 光りつたへよ 法のともしび」と願いを込めた。

 この灯火は菜種油であり、それ以降僧侶たちは一日たりとも油を断つことなく現在まで注ぎ続けてきた。
 これが四字熟語で言われる「油断大敵」なのだ。

 【断】という漢字、事ほど左様に、いろいろと戒めてくれている。


17−(2) 【憩】

 【憩】、「舌」と「息」と「心」が組み合わさっている。
 だが「舌」はべろではなく、「活」。「息」は「休息」の意だとか。
 そこから休息して活力を回復させる意味となる。

 かって「いこい」という煙草があった。
 昭和三一年(1956年)に、茶色のパッケージに五線譜と四分休符、こんなデザインで販売開始された。

 二〇本入りで、四〇円、後日は六〇円に。
 タールは13ミリグラムだ。

 「今日も元気だたばこがうまい!」
 これがキャッチフレーズだった。
 そう言えば、大人たちは美味そうに吸っていたのを思い出す。
 まさに【憩】のようだった。

 この「いこい」は当初「しんせい」とともに、すでにあった「ゴールデンバット」や「光」より人気商品となった。
 しかし、昭和三五年(1960年)、フィルター付きの「ハイライト」が登場する。これで人気は下降線に。
 結果、昭和四九年(1974年)に生産は終了する。
 それ以降、街角で【憩】ってる大人の姿は見られなくなった。

 それにしても「ゴルデンバット」、明治三九年(1906年)に発売開始され、一世紀の時が流れた。そしてそれにも関わらず、現在も売られている。
 驚きだ!
 要は「金のコウモリ」が【憩】に勝ったということなのだろうか?

 いずれにしても、【憩】という漢字、こんなことを思いながら、充分に【憩】わせてくれる。


17−(3) 【園】

 【園】の「口」中にある字は、死後の世界へと旅立つ死者を送る意味があるとか。
 そこから【園】は、植え込みのある墓地だそうな。

 これではちょっと暗過ぎる。
 そのためか、今では田園に果樹園、菜園に庭園、動物園に公園と、もうなんでもありなのか。

 その中でも、一度覗いてみたいのがエデンの【園】。
 そこには生命の樹と知恵の樹が植えられていると言う。そしてそこの管理を任されたのがアダムとイブ。
 最初神は男性だけを作った。だがそれでは寂しいだろうと、男性の肋骨から女性を作った。
 これでアダムとイブが揃った。

 ある日、イブは蛇の誘いにのり、知恵の木の実(禁断の果実)、林檎を食べてしまった。
 これに神は怒り、二人を天国から地上(失楽園)へと落としてしまう。そして罪を犯した女性には「子供を授かる」痛みを負わせることにしたのだ。

 【園】という漢字、元々は墓地だから、どうも楽しいことばかりじゃないようだ。


17−(4) 【珠】

 【珠】は(シュ))と読み、「朱」には丸いもの、朱色の意味がある。いわゆる輝く珠玉だ。

 そんな【珠】の女性、明智珠(あけち たま)がいた。
 珠は永禄六年(1563年)、明智光秀の三女として生まれる。
 そして戦国時代を強く、しかし辛く生きる。

 十五歳の時に、主君・織田信長のすすめにより細川忠興(ただおき)に嫁ぐ。珠は美人であり、忠興とは仲のよい夫婦となる。

 しかし、父の明智光秀は本能寺の変、つまり謀反を起こした。
 これで光秀は秀吉に追われ、京都山科の小栗栖(おぐるす)の地で竹槍で討ち取られる。
 これで珠は逆臣の娘となってしまう。

 忠興は珠の身を案じ、丹後半島の味土野(みどの)の山中にかくまう。
 いわゆる幽閉させたのだ。
 珠はここで一年半ほど暮らす。だが世は動き、覇権を握った羽柴秀吉は珠を呼び戻す。

 そんなある日、珠は忠興からカトリックの話しを聞く。
 これに心が惹かれた珠は救いを求め、教会に通いを始める。そして信仰を深め、やっとのことで自宅で洗礼を受ける。
 この洗礼名がガラシャ。
 ラテン語で神の恵みの意味がある。

 時は慶長五年(1600年)、関ヶ原の戦いが勃発する直前のことだった。
 忠興は徳川方となり、上杉討伐のため不在。そんな隙を狙って、西軍の石田三成はガラシャを人質に取ろうとする。
 しかし、ガラシャはこれを拒んだ。

 これに三成は屋敷を兵で囲み、実力行使に及んだ。
 ガラシャは覚悟を決めた。
 カトリックでは自害は禁止されているため、部屋の外から家老に槍で胸を貫かせた。
 珠はこんな壮絶な死を選んだのだ。

 ちりぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ
 細川ガラシャは死を前にして、このように詠んだ。

 こんな【珠】は、今も重く輝き続けているのだ。


17−(5) 【瓜】

 【瓜】、つるにぶら下がったウリの象形文字だとか。
 そう言われれば、そう見えてしまうから不思議だ。

 こんな【瓜】、貝塚遺跡から種が発見されている。どうも古くから日本にあったようだ。
 だが可笑しな話しが多い。

 大きさが八〇センチもある冬瓜(とうがん)、冬の瓜と書くが、夏の野菜だ。
 スイカは西瓜、西の瓜って、なぜ?
 どうも音からの当て字だとか。

 南瓜はなんきん、かぼちゃのことだ。
 このかぼちゃ、原産地は南の国のカンボジヤだとか。
 だからカンボジヤを三回唱えれば、「かぼちゃ」になってしまうからだ……そうな。

 こんな【瓜】、笑える話しばかりかと思いきや、まじめな諺もある。

 『瓜田に履を納れず』(かでんにくつをいれず)
 瓜畑で靴を履きなおそうと屈むと、まるで瓜を盗んでいるように見える。そんな疑いがかけられるような行為は慎もう。
 こんな教えだ。

 とにかく【瓜】という漢字、このように多品種な話題を味わさせてくれる。


17−(6) 【蟹】

 【蟹】の字体、見るからにカニだ。
 だが分解してみると、「解」に「虫」に分かれる。

 「解」は(ほどく)で、脱皮。
 「虫」のように脱皮する生き物、それが【蟹】だとか。
 なにか狐につままれたような話しだが、まじめな解釈だそうな。

 さてさて日本の民話に「猿蟹合戦」がある。
 誰しも幼い頃、一度は耳にしたことがあるだろう。
 だが成人となり、忘れてしまっているところもある。ここで少し復習をしてみよう。

 おにぎりを持って蟹が歩いている。そこへ猿が柿の種と交換しようと言い寄ってきた。蟹は嫌だったが、育てば柿がたくさん採れると説得され、おにぎりと柿の種を交換してしまう。

 「早く芽をだせ柿の種、出さなきゃ鋏でちょん切るぞ」
 蟹は柿の種を植え、毎日水をやった。そのお陰か、柿はスクスクと育ち、実をたくさん着けた。
 しかし蟹は柿が採れない。そこへ猿がやって来た。そして柿を採ってやろうと言う。
 早速木に登った猿、自分は食べるだけ食べて、蟹にやらない。挙げ句の果てに、木の下にいた蟹に青くて硬い柿を投げ付けた。
 これが蟹に当たり、蟹はその後子供を生んで死んでしまう。

 その子供たちが育った。
 親の敵を討とうと、栗と臼と蜂と牛糞を仲間に誘う。そして猿を呼びつける。
 栗は囲炉裏(いろり)、蜂は水桶、牛糞は土間、臼は屋根、このようにそれぞれの場所に隠れた。

 やって来た猿、まず囲炉裏で身体を暖める。その時栗は弾け、猿に火傷を負わせる。猿は慌てて水で冷やそうとすると、水桶に隠れていた蜂が刺す。
 猿はこれにもびっくりし、家から飛び出そうとする。そこで土間にあった牛糞に滑ってしまう。
 その上に、屋根から臼がドスンと落ちくる。これで猿は圧死、潰れて死んでしまう。
 蟹の子供たちはこうして見事に親の敵を討ったのだった。

 これでめでたしめでたしとなるところだが、この「猿蟹合戦」、これだけでは終わってはいなかったのだ。

 大正十二年二月、文豪・芥川龍之介は「その後」を書いた。
 蟹の握り飯を奪った猿はとうとう蟹に仇を取られた。蟹は臼、蜂、卵と共に、怨敵の猿を殺したのである。
 ――その話はいまさらしないでも好い。ただ猿を仕止めた後、蟹を始め同志のものはどう云う運命に逢着したか、それを話すことは必要である。
 なぜと云えばお伽噺は全然このことは話していない。

 こんな書き出しの「猿蟹合戦」の「その後」、これが実に面白い。
 結果、主犯の蟹は死刑、共犯の蜂たちは無期懲役の刑が宣告されているのだ。

 「解」と「虫」からなる【蟹】、まるで物語が横歩きしてるようだ。


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このストーリーに関するコメント

13/11/26 草愛やし美

鮎風遊さん、拝読しました。

『断』のお話、今、問題になっています食材偽証やら、食品誤認していたというホテルやデパートに読ませたいですね。いやはや、驚きましたよねえ。
『いこい』のデザインもいいですが、私は、ピース両切り缶とか洗練されていていいなあと思います。煙草吸わないので、買うことはないのですが、小物入れになりそうだなって、タバコ屋の看板おばさんしていた時思ったものです。そうか、今日も云々ってCMコピー記憶しっかりありましたが、憩のものだったんですね。売る時、言って渡せばよかったかなあ─なんてね。笑

『瓜』には、爪のような点があり『爪』には、ツメがないのが私には、いまだに解せないんですよねえ……。

ザリガニって脱皮するから蟹がつくのですね、思わずそうかと頷いちゃったです。でも、あの形状みて誰が蟹だなんて言い出したのかと、思いました。あれは、海老だよなあ。どうかすると伊勢海老縮小版みたいな……。苦笑
ってことで、検索してみましたら、何と、海老と蟹の中間だけど、どちらかいうと蟹に近いんですって。そうなんだ〜って、全く関係ないことやってる阿呆な私でした。爆笑

今回も楽しませていただきました、ありがとうございました。これからの、続編『園』とやらに、行くまで待っています。(*`◇´*)/ ハーイ♪

13/11/27 鮎風 遊

草藍さん

コメントありがとうございます。

そう言えば、ザリガニってフランスでは高級料理だとか。
伊勢エビが高騰しているおり、小型エビで活用したら良いかと。

スルメ付けて垂らすだけで取り放題ですわ。

旅は道連れ、続きますので、よろしく。

13/11/29 そらの珊瑚

鮎風さん、拝読しました。

いつものように軽妙な語り口のなかに、知らないエピソードがてんこ盛りで
大変勉強になりました。
芥川さんの「その後」は存じ上げなかったのですが、
そうなんですか、やはり仇討ちは罪になったんですねえ。

13/11/30 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

まったく驚きですね。
芥川龍之介が「その後」を書いていたのですよ。

私は「ウサギとカメ」のその後を書いてみたいです。

13/12/01 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

「断機の戒め」良い話ですね。
私も自分の作品に対して、そういう厳しい目を養いたいです。

いつも勉強になります。ありがとうございますO┓ペコリ

13/12/02 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

コメントありがとうございます。

そうですね、自分に厳しい目が大事ですね。
同感です。

14/03/12 リードマン

拝読しました!
このシリーズ、いつも楽しみにしています!

14/03/15 鮎風 遊

リードマンさん

コメントありがとうござます。

旅はまだまだ続きますので、旅は道連れで、よろしく。

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