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ポテトチップスさん

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来世は家畜になる兄弟

13/11/10 コンテスト(テーマ):第四十四回 時空モノガタリ文学賞【 復讐 】 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1136

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車のフロントガラスに雪がポツポツと当たってはすぐに溶けた。
信号で止まるたびに、豊橋慎吾は太ももの上においた左手の拳に力をこめた。
早く着きたかった。早く終わりにしたかった。
自分を虐待した両親を殺すのを……。
慎吾と兄の光也は、幼いころから父と母に虐待されて育った。食事はろくな物を食べさせてもらえす、食べれない日も日常茶飯事だった。とくに父はパチンコで負けて帰ってくると、必ず慎吾と光也を気絶寸前まで拳で殴りつけた。
慎吾は児童養護施設に入所するまで、これはごく普通のことで、どの家庭も子供達は親に殴られるのが当然のことだと思っていた。
なぜ兄と共に児童養護施設に入所することになったのか経緯は知らないが、中学を卒業するまで施設で育った。
中学を卒業すると東京を目指して列車で上京した。新聞配達や土木作業員などの職を転々としながら必死に東京で生き続けた。
それから15年が経ち、30歳を迎えた慎吾は相変わらず職を転々としながら、ギャンブルと酒に溺れていた。
酒に酔うと決まって脳裏に親が現れた。もう忘れたいのに忘れられなかった。
ある時から、親を殺したいという思いが心の大部分を侵食していった。こんなしょっぱい人生を送っているのは、すべて親のせいだと何度も思った。
信号が青に変わり車を発進させた。
15年振りに見る懐かしい風景は、慎吾の心を荒立たせた。それから30分程車を走らせ実家に到着したが、そこに実家はなく空き地に変わっていた。
車から降りて空き地を茫然と眺めていると、空き地の前の道路を通りかかった一人の中年女性が、訝しげに慎吾を見てきた。
「あのう、すいません。ちょっとお尋ねしたいのですが?」
女性は恐れるように「なんでしょうか?」と言った。
「ここに豊橋という家があったと思うんですが、いつ壊されたのでしょうか?」
「もしかして、あなた慎吾ちゃん?」
「そうです」
「あら〜すっかり大きくなって……。元気にしてた?」
「ええ、まあ……」
「そうかあ、慎吾ちゃん知らないんだね。あなたの家が壊されたのは7年くらい前よ」
「親はどこにいるか知りませんか?」
「もう亡くなったは」
慎吾は女性の顔をまじまじと見つめた。「どうして?」
「それも知らないんだね。あなたのお兄さんが殺したのよ。あれは雪の降る寒い日だったわ。すごい数のパトカーと救急車がこの道路に止まっていたわ。まさかこんな田舎のしかもご近所で、殺人事件があるなんて信じられなかった。テレビカメラが何台も来る大騒ぎだったのよ」
「兄は……、兄はいまどこにいるか知りませんか?」
「笹木野にある笹木野刑務所に入れられているって誰かに聞いたことがあるわ」
慎吾は女性に頭を下げて車に乗り込んだ。
ここから笹木野刑務所までは車で1時間程で着く距離だった。慎吾は刑務所を目指して車を走らせた。
しばらく雪は止んでいたのに、また雪がポツポツと降り出してきた。運転しながら、兄が親を殺したことにショックを受けていた。
17年近く、兄とは会っていなかったが、きっと自分とは違って幸せな家庭を築いているだろうと思っていたし、そうあって欲しかった。
辺りが田畑に囲まれた笹木野刑務所に着いたのは、午後の3時を少し過ぎた頃だった。
刑務所で兄に面会を申し込み、しばらく椅子に座って待っていると、透明なアクリル板の向こうのドアが開き、看守に連れられた兄が現れた。
「兄さん……」
光也は椅子に座り「久しぶりだな。17年振りの再会だな」と言った。
「兄さん……」
「お前がここに来たってことは、事件を知って来たんだろ」
「うん」
「復讐してやったんだよ」
「兄さん実は俺、今日アイツらを殺そうと思って実家に向かったんだ。そしたら実家は空き地になっていて、通りかかったおばさんに尋ねたら、兄さんの事件を知らされたんだ」
「お前、結婚は?」
「してない」
「仕事は?」
「転々としてる」
「お前もオレと同じような人生を送っていたんだな。てっきりお前は、幸せな家庭をもって元気に暮らしていると思っていたのに」
「俺はそれと同じことを、兄さんにも思っていたよ」」
光也は目線を下に落とした。
「でも……、お前が犯罪者にならなくてよかった。刑務所なんて入るところじゃないよ」
「兄さん、ごめん」
「つぎ生まれてくることがあったら、いい親の下に生まれたいよ。でもオレは親殺しの人間だから、つぎ生まれてくることがあったら、すぐに殺される家畜だろうなきっと」
面会時間が終わった。刑務所から自分の車に乗り込み、助手席に置いてあるバッグを開いた。中には包丁が数本入っていた。
俺もきっと、つぎ生まれてくることがあったら、すぐに食肉になる家畜だろうなと思った。

終わり


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