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そらの珊瑚さん

🌼初めての詩集【うず】を上梓しました。  (土曜美術出版販売・現代詩の新鋭シリーズ30) 🌼小説や詩、短歌などを創作しております。 🌼作品を置いています。よろしかったらお立ち寄りくださいませ。 「珊瑚の櫂」http://sanngo.exblog.jp/14233561/ 🌼ツイッター@sangosorano 時々つぶやきます。 🌼詩の季刊誌(年4回発行)「きらる」(太陽書房)に参加しています。私を含めて10人の詩人によるアンソロジー集です。アマゾンでお買い上げいただけます。      ✿御礼✿「馬」のオーナーコンテストにご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

性別 女性
将来の夢 星座になること
座右の銘 珊瑚の夢は夜ひらく

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The End of The World

13/11/04 コンテスト(テーマ):第四十二回 時空モノガタリ文学賞【 都市伝説 】 コメント:21件 そらの珊瑚 閲覧数:1531

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 コインに表と裏があるように、都市伝説にも表と裏がある。

 表の世界では都市伝説がただの噂だと軽んじられ酒の肴になるくらいがせいぜいだが、裏の世界ではそれはまぎれもない現実だという。
   
   ◇

 すずらん保育園の静かな午睡の時間。桃組は生まれて半年から二歳までの赤ちゃんクラス。

 二階にある教室の窓にブラインドを下ろし、薄闇のなかで総勢八人の子供達が可愛い寝息を立てている。添い寝をしている私もいつのまにか眠りに落ちてた。
 
 どのくらい寝ていたのだろうか。壁の時計はちょうど三時を指していた。

 ――そろそろあの子たちを起こさなくては。

 するするとブラインドを上げる。
 ブランコ。すべり台。アンパンマンが描かれたままごとの家。そこで遊ぶ年長組の姿。笑い声。ひかり。
 窓の外にはいつもと同じ見慣れた風景があるはずだったけれど……。
 私は一瞬目を疑った。寝ぼけているのかと思い、おもわずほほをつねった。

 イタッ。夢じゃない。でもこの光景は?

 窓の外にあるはずのものがない。園庭はまるごとなくなっていて、モノクロームの荒涼とした世界が広がっていた。砂漠? 行ったことはなかったけれど直感的にその言葉が浮かぶ。
 
 なんで? なんで? 私は得体の知れない恐怖に追いかけられるように、教室の廊下へ飛び出す。隣の青組は? 誰もいない。一階の教室にも職員室にも調理室にも誰もいない。どこもかしこもいるはずに人が消えていた。

みんなぁどこへ行ってしまったのーー!

 私はパニックに陥り、両手で顔を覆った。指の間から涙がつたい落ちてくる。その左手の小指には小さな一粒ダイアモンドの指輪があった。指輪も今は濡れている。

 それは一ヶ月前に恋人の潤にもらったものだった。
「いつまでも君のそばにいるよ。たとえノストラダムスの大予言が現実になって世界が滅びても僕たちの愛は永遠だと誓う」
 真面目な顔でプロポーズの言葉を言うものだから私は思わず吹き出した。

 ノストラダムスの大予言によれば、一九九九年七月に人類が滅亡するといわれ、それが書かれた本がベストセラーになり、巷ではブームのようのなっていた。
 まさに今日は一九九九年七月一日だった。
 
 ――まさか。そんなことが、まさか。まさか。まさか。

 昨日作った短冊が笹の葉にぶらさがっている。
『かけっこがはやくなりますように』
『おばあちゃんのびょーきがなおりますように』
『さっかーせんしゅになりたいです』

 そこには覚えたてのたどたどしい字で、未来への希望がつづられている。
 それが全てただの紙切れになってしまったっていうの? せめて子供たちの未来だけでも叶えさせてあげてください。私は誰にともなく祈った。
 
 いいよね、潤。私たちの未来はそんな都市伝説がたとえ現実になったって永遠なんだから。
 
 それから涙をふいて、調理室から今日のおやつの蒸しパン持って桃組の教室に帰った。

『今日のおやつは蒸しぱんです』って食べる前に手を合わせると必ず『えー虫がはいったパン?』ってお決まりのように子供たちはゲラゲラと笑い声をあげた。
 今はそんなささいな笑いさえ救いのように感じられた。

 もうみんな起きているかもしれない。不安になって泣いているかもしれない。
 ガラガラ。

 けれど桃組はもぬけのからだった。子供たちが寝ていたはずの布団に触ってみる。まだほんのり温かい。
「みーちゃん、あきちゃん、ひでくーん……みんなぁどこいっちゃったのよう」私は声の続く限り叫んだ。叫んでも返ってくるのは静謐だけだった。
 
 ひとりぼっちの終末。それが私に残された未来なんだろうか。

 ――せめて子供たちの未来は今もどこかで続いている。そう思うことだけが今の私に残された唯一の希望。

 私は震えながら床に落ちていたくまのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。


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このストーリーに関するコメント

13/11/04 そらの珊瑚

画像はGATAG Free Images 1.0サイトからusivinhさまの作品をお借りしました。

13/11/04 草愛やし美

そらの珊瑚さん、拝読しました。

えっ、桃組に軌跡は起きないのですか、ああ、そうなの。この都市伝説は伝説でなかったのでしょうか。それでも、未来に繋がる子供達のことを案じる先生、優しいですね。もしかして、こういうことが起こっても、こんな思いやりを持っていられたら、この後何か善への道が開かれるのではって……思える。希望は捨てませんから。頑張りましょう、もう一つの世界へ旅立ってしまった先生。パラレルワールドから仁のようにきっと戻って来られますよ。( ̄0 ̄)/ オォー!!応援してます。

13/11/05 そらの珊瑚

間違いがありましたので訂正します。

(なかほどの行)どこもかしこもいるはずに人→どこもかしこもいるはずの人

申し訳ありませんでした。

13/11/05 そらの珊瑚

草藍さん ありがとうございます。

はい、パラレルワールドはどこかに通路があるはずですもの!
この作品はほとんど推敲らしいことをせずに出してしまって、熟成が足りなかったと読み返して反省することしかり。
日常(幸せ)というものはとても不安定で不確実なものの上に成り立っているということを人は忘れて生きている、
そんなようなこともほんとは描きたかったのです。
なので不条理だと思われるかもしれませんが、安易にめでたし、という結末にはしませんでした。
と、いいわけのようにコメント欄に書いておきます(笑い)

13/11/05 そらの珊瑚

OHIMEさん、ありがとうございます。

猫もしゃくしもノストラダムス……そんな時代がありましたね。
人ってどうして世界が滅びるとかいう類の都市伝説に惹かれてしまうのでしょうね。
怖いもの見たさ…ってことでしょうか。
絶望だけで終わるのは主人公がしのびない気がしましたので、くまのぬいぐるみは手元に残しました。

13/11/05 ドーナツ

世界の終わりに、自分も含めてみな消えるのではなく、一人だけ取り残されるというのはとても恐ろしいです。

こんな状況でも子供たちの身を案じる先生はやさしいですね。こういう先生、この頃少なくなったような。

世界の終わりはいつか来るだろうとは思いますが、その時に、この先生のように人の心を忘れないでいたい  と思いますが、、、、私はギャーギャーわめいちゃうかな。

13/11/05 朔良

そらの珊瑚さん、こんばんは。
拝読いたしました。

表では普通に過ぎてしまったことが裏では…。
ひとり取り残されてしまった、優しい先生…。自分がそんな立場になっても子供たちの未来を思える優しさに感動です。

ちょっぴりマリーセレスト号の事件を思い出してしまい撒いた。
彼らも裏の世界に招かれてしまったのかもしれませんね。

13/11/05 朔良

誤字失礼しました。

しまい撒いた。 → しまいました。

です^^;

13/11/06 泡沫恋歌

珊瑚さん、拝読しました。

これはまるで、ちゃんと読んでないけど・・・
梅図かずおの「漂流教室」?
いや、ちゃんと読んでないので勝手なイメージで言ったまでですが・・・。
なんか怖い「漂流教室」みたい。

みんな、どこに逝ったのでしょう?

13/11/07 そらの珊瑚

ドーナツさん ありがとうございます。

なんの前触れもなく世界が終わり告げ
もし自分ひとりだけ取り残されたとしたら
私も正常ではいられなくなってしまうと思います。
そんなことが現実に起きませんように!

13/11/07 そらの珊瑚

朔良さん ありがとうございます。

魔のバミューダ海域で消えた飛行機とか、ありましたね〜。
マリーセレクト号のことは知らなくて、ウィキペディアで調べてみたら……
真相は? もしかしたら、なんて思ってしまいます。

13/11/07 そらの珊瑚

恋歌さん、ありがとうございます。

「漂流教室」あれは怖かったけど、名作だと思ってます。
そう、あんなかんじですね。
学校だけが取り残されて、ひとりではないってぶん、
この先生よりまだいいかなと思いますが。

13/11/07 平塚ライジングバード

珊瑚様、拝読しました。

非常に大好きな世界観です!!
冒頭の文章で完全に物語世界に引き込まれました。
オチや設定も秀逸ですが、何より珊瑚さんの描く人物や保育園の情景描写が
本当にお上手ですね。
テーマが都市伝説でこういう展開になる以上、バッドエンドは覚悟しており
ましたが、最後の最後までどうかこの人物たちは幸せのうちに終わってほしい…
と思わず願ってしまうほどに感情移入してしまいました。

素晴らしい作品をありがとうございます。

13/11/08 そらの珊瑚

ライジングバードさん ありがとうございます。

「朝起きたら僕は虫になっていた」みたいな理由も落ち度もない不条理な世界観、なぜか惹かれてしまうんですよね〜。
もし自分だったらってどきどきします。

実は保育園で働いていたことがあって、その時の(蒸しパンのエピソードはほんとです)
風景を思い出しながら書いてみたのでもしかしたら説得力があったのかもしれません。

行く末をライジングバードさんにそんな風に祈っていただけて
この先生、子供達はきっと喜んでます♪

13/11/10 鮎風 遊

一人だけ取り残される。

保育園の日常の中で、起こってしまった。
恐ろしい話しです。
しかし、現実にあるのでしょうね。

13/11/25 猫兵器

そらの珊瑚様

拝読致しました。
日常の中に唐突に降って湧いた不条理な世界観がとても良いですね。
婚約をし、幸せの絶頂にありながら、同様の不条理に囚われた子供たちの未来が拓かれることを祈り続ける「私」はとても強い方だと思いました。
ただ一人裏の世界に残されてしまってなお、子供達を心配する「私」に、この後何らかの救いがあって欲しいものです。

13/11/25 リードマン

拝読しました。
プロポーズ、ですか、私なら、「俺は簡単には死なないさ、ずっと傍にいる。寂しい思いなんてさせないよ。既に、俺達の心は一つだ。永遠なんだよ。傍にいてくれ」。こんな感じでしょうかね?

13/12/04 そらの珊瑚

鮎風さん、ありがとうございます。

自分だったらと思うと
心底怖いです。
普通の日常にあらためて感謝です。

13/12/04 そらの珊瑚

猫兵器さん ありがとうございます。

不条理な世界観というものはもはや自分の力ではどうにもならない世界であり、もしかしたらそんな上に危うく成り立っているのが日常なのかなと思います。
祈ることが最後に自分を保てる砦というか…救いの残された未来であるといいですね。

13/12/04 そらの珊瑚

リードマンさん、ありがとうございます。

プロポーズ、愛があればどんなものだって素敵ですね。

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