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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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おじさんの楽園

13/10/21 コンテスト(テーマ):第四十二回 時空モノガタリ文学賞【 都市伝説 】 コメント:25件 泡沫恋歌 閲覧数:5563

時空モノガタリからの選評

せめて娘にだけは信じて欲しかった!チクショウー!

おなじみ泡沫恋歌さんの作品。
「小さいおじさん」という都市伝説の世界をコミカルに表現することに成功。
この成功は泡沫恋歌さんだからこそのもの。右翼だろうと左翼だろうと偉い人も偉くない人も老人も若者も女も男も、その日その時の気分がどうであろうとスキップスキップランランラン。
セクハラを「家族に釈明したが誰も信じてくれない」だけでなく、「妻も息子も“娘まで”が軽蔑したような目で見やがる」という小さいおじさん。彼を慰めるために、やはりおじさんの一人の選者は今からインカ酒の呷ろうと思う。満月に向かって吠えて小さくなってそして「娘にだけは信じて欲しかったんだよね?わかるよオレ」と小さいおじさんの肩を抱いてあげたい。

時空モノガタリS

満月に向かって吠えたら、狼ではなくて、小さくなってしまい、子供のように、もう会社に行かなくていいと喜び、子供と目があえば死んだ振りをする小さなおじさん‥…理屈抜きに楽しめる面白い作品でした。冷静に考えてみればとても悲惨な状況にもかかわらず、テンポよく、軽い文体で描写され、楽しく読みすすめられます。
 本当にこんなユートピアが何処かにあったらいいのにと思わず思ってしまいます。

時空モノガタリK

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 どうして、こんなことになったんだ!?
 気がつくと俺はジャングルの中に倒れていた。大きな草に囲まれて周囲が見渡せない。草叢からオームが現れた。ナウシカに出てくる巨大な甲虫だ。しかし……ただのダンゴ虫だった。大きな蟻も歩いていた。
 不思議なことに俺の周りの物が巨大化しているぞ! いや待て、この俺が小さくなっているのか?

 昨夜は、地方に転勤させられる俺の送別会だった。
 たった十人足らずだが同僚が集まってくれた。だが、二次会まで付き合ってくれる者はいない。家に帰りたくない俺は四軒ハシゴして酔っ払っていた。ふらふら彷徨っていると、路地の奥の小さな酒場で初老のマスターが一人でやっていた。
「マスター、何か変わった酒はないのか?」
 ヘベレケに酔った俺は回らぬ舌でそんなことを訊いた。
「インカの珍しいお酒がございますよ」
「そうか。飲んでみたい」
「ですが……人によって副作用があるかも知れません」
「構わん! 飲ませろ!」
 グラスに注がれた緑色の酒を一気に煽った。

 三十年間滅私奉公してきた、この俺が人材の女の尻を触ったかどうかで左遷されるなんて信じられない。
 覚えの悪い人材の女にきつい説教したら泣き出されて、辞める時に人事部に俺がセクハラしたと訴えやがった。おまけに俺と気が合わないお局が人材の女の味方についたので不利になった。社内コンベンションに掛けられて、退職するか、地方へ行くか、どちらか選べと言われた。まだ大学生と高校生の子供がいる俺は地方へ行くことを選んだ。
 地方に転勤することを妻に話したら「あなた一人で行ってください。私は子供たちとここに残ります」と言いやがった。今回の件も俺は触ってないと家族に釈明したが誰も信じてくれない。妻も息子も娘までが軽蔑したような目で俺を見やがる。
 誰のお陰で女子会と称して、毎週ホテルのランチが食えると思ってんだ! 誰の金で大学や習い事をさせて貰ってるんだ!
 腹が立った! 悔しかった! 情けなかった! 
「チクショウ―――!!」
 満月に向って俺は吠えた。その後、意識を失ったようだ。

 そして草叢の中で朝を迎えた。草の丈から考えて10pほどが俺の身長だろうか? あの都市伝説で有名な『小さいおじさん』みたいだ。昨晩飲んだ緑色の酒の副作用とはこのことだったのか。
 こんな姿になってしまったが、もう会社に行かなくてもいい、女房子供と顔を合わせなくていい。――それだけで俺は嬉しかった。
 
 ようやく草叢を抜けたら、ここは公園だった。
 ジョギングや散歩をする人たちが行き交うが、ベンチの下に隠れている小さな俺に気づく者はいなかった。賑やかな集団登校の小学生たちの声が聴こえてきた。その一人と目が合った、慌てて死んだ振りをしたが拾われた。
「なんだ? このちっこいおじさんの人形は……」
「禿げちらかしてるぞぉー」
「キモイ! 捨てろー」
 放物線を描いて、俺はゴミ箱に投げ込まれた。
 食べ残しの弁当の上にバウンド、腐った食べ物の悪臭が酷いのでゴミ箱の金網をよじ登って外へ出ようとしたら、真っ黒な翼が視界を遮った。
 カラスだ! 口ばしを延ばして俺を食べようとする。弁当のつまようじで脚を突いてやったら、驚いて飛び退いたが、再び巨大な口ばしが襲ってきた。
 俺の最期はカラスの餌食か!?《もう、ダメだ……》悲惨な運命を受け入れるべく、俺は目を瞑った――。

「あんた、大丈夫かい?」
 覗き込む男たちの顔があった。俺の身体が元に戻ったのか?
「酒場のマスターの連絡を受けて探していたよ」
「……あんたたちは誰だ?」
「わしらは仲間だ」
 起き上がって見渡せば、庭園みたいな場所におじさんばかり三十人くらい居た。
「あんたが飲んだインカ酒には不思議な呪いがあって、おじさんが飲んで満月に叫ぶと小さくなるんだ」
「みんなもそれで小さくなったのか?」
「そうだ。会社や家庭に不満だらけで行き場がない……あのマスターの酒場でインカ酒を飲んで『小さいおじさん』に生まれ変わったんだ」
「よう、新入りよろしく」
 仲間たちが次々挨拶をしてくる。みんなニコニコして幸せそうだ。
「今から新入りの歓迎会だー!」
「酒を用意しろ」
 大量の食べ物や酒が運ばれてきた。
「実は俺たち『小さいおじさん』を保護する団体があって、食糧や住む所も保障されているのさ」
 いよいよ宴会が始まった。みんな歌ったり踊ったり楽しいそうだ。嫌な社会のシガラミから解放されてイキイキしている。――ここはおじさんの楽園だった!

 
『会社なんか糞喰らえ! 女房子供も糞喰らえ! 俺たちは自由だぞ―――!!』

 酔っ払った『小さいおじさん』たちは気炎を吐く。
 秋の夜長、虫たちの鳴き声に混じって『小さなおじさん』たちの賑やかな宴会が聴こえてくるかも知れません。


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このストーリーに関するコメント

13/10/21 泡沫恋歌

写真は無料フリー写真素材[ 足成 ] 様よりお借りしました。
http://www.ashinari.com/


13/10/21 こぐまじゅんこ

拝読しました。

主人が、ちっちゃいおじさんにならないように、言動には気をつけようと思います。

13/10/21 そらの珊瑚

恋歌さん 拝読しました。

おばさんの楽園はないのでしょうか?((笑))
小さいおじさんたちの宴会、なんだか想像するとカワイイですね♪
とっても楽しかったです。

13/10/21 鮎風 遊

多分、1ヶ月後にはこの集団に混じってるかも。

いや、もうそうなってて、……、
小さいおじさんでもパソは打てるから、コメントも書けてるのかな。

哀愁漂う、秋の夜長じーんと来ました。

13/10/21 yoshiki

拝読しました。

こういうお話は文句なく楽しいですう。

マシスンの『縮みゆく男』を彷彿とさせるオジサンの悲哀、
そして自由を手にしたオジサンの喜びがにじみ出ていました(*^_^*)

13/10/21 光石七

拝読しました。
小さいおじさんになって初めて手に入れられた自由、居場所。
世の中の頑張ってるおじさん方にもっとエールを送るべきですね。
面白かったです。

13/10/21 草愛やし美

泡沫恋歌さん、拝読しました。

小さなおじさんの伝説を知らなくって…焦って(; ̄ー ̄川 アセアセ 検索ぅ……ムニャムニャ。

\(* ̄□\) ̄□\) ̄□\))))オォ〜ット!!そうなのか。す・すごいぞ。何が凄いって、全く知らなくて読んだんですが、恋歌さんの文面が素晴らしく良かったので、浮かんだ映像が、例の小さなおじさんのイメージとドンピシャでした〜〜。凄く面白かったです、ありがとうございました。

13/10/22 泡沫恋歌

こぐまじゅんこ 様、コメントありがとうございます。

一家の大黒柱に「小さいおじさん」に成られては困ります。

ご主人をあんまり追い込まないように、優しくしてあげてくださいね(笑)

13/10/22 泡沫恋歌

OHIME 様

読んで頂き、コメントまで有難うございます。

初めまして、泡沫恋歌と申します。
一般にウザイおばはんと言われています(m´・ω・`)m ゴメン

過分なお褒めのお言葉を頂き、本人舞いあがって喜んでいます。

だいたい、私の作品の主人公は男性が多く、特におっさんは得意分野だと
勝手に自負しています(笑)
かっこ悪くて、情けない、社会からも家族からも疎んじられている、そういう
おっさんたちに愛の手を! もっと光を!!

そういう、気構えでこの作品を投稿させて頂きました。
気に入って頂けて、嬉しいですヾ(〃^∇^)ノわぁい♪

13/10/22 泡沫恋歌

珊瑚さん、コメントありがとうございます。

おばさんの楽園ですか?

ホテルのランチバイキングがおばさんの楽園のような気がします。
私はスーパー銭湯とグルメと創作仲間がいれば幸せです。

おじさんたちはちっちゃくなって、初めて自分の居場所を見つけたんだ。

13/10/22 泡沫恋歌

鮎風さん、コメントありがとうございます。

いやいや、まだ「小さいおじさん」の一団に加わってはいけませんよ。

ちっちゃくなったら、パソコンのキーボード押すのも一苦労で、時空モノガタリに
投稿するのさえ、重労働ではないですか(笑)

13/10/22 泡沫恋歌

yoshikiさん、コメントありがとうございます。

マシスンの『縮みゆく男』は読んだことがありませんが、チャールズ・ブコウスキーの小説で
小さくなった男のちょっとHな話を読んだことがあります。

こういう、一寸法師みたいな話は大人になっても楽しめると思います。

13/10/22 メラ

 面白かったです。その内自分もこのグループに入ってしまいそうな、そんな親近感が湧きました。酔っ払い小説は大好きです。

13/10/22 泡沫恋歌

光石七 様、コメントありがとうございます。

社会や家族のために必死で働いてるおじさんたちにもっと温かい世の中で
あったらイイと思いますね。

この作品は、そんなおじさん達にエールを込めて書きました(`・ω・´)ハイ!

13/10/22 泡沫恋歌

草藍さん、コメントありがとうございます。

えっ? 都市伝説の「小さいおじさん」知らんかったの?

テレビ観てない、このウチが知ってるのに・・・ 壁]ω・)ニャ

都市伝説だけど、「小さいおじさん」いつか、本物が見れないかと思ってますσ(´∀` )ァタシ

13/10/22 泡沫恋歌

メラさん、コメントありがとうございます。

実は私も「小さいおばさん」になって、毎日宴会して、飲んで、歌って、踊って・・・

そんな楽園みたいな世界へ行ってみたいですぅ〜♪o(〃^▽^〃)o

13/10/22 murakami

面白かったです!

途中から私もニヤニヤしてしまいました。

小さなおじさんたち、かわいすぎます。
楽しいお話をありがとうございます。

13/10/22 泡沫恋歌

村上 様、読んで頂きコメントまで有難うございます。

日頃、ウザイと思ってるおじさんも、小さくなったら何だか可愛いと
思えるから不思議です(笑)

世の中のおじさんたちに感謝のエールを贈りましょう(っ`・ω・´)っフレーフレー!!!

13/11/05 ドーナツ

おもわず、ちいさいおじさんたちの宴会 想像して笑ってしみました。おもしろくてかわいい。
会社でストレスたまってるおじさんたちへの讃歌ですね。ビジネス社会の大変さもちらっとうかがえて、にやりとさせていただきました。

13/11/06 泡沫恋歌

ドーナツさん、コメントありがとうございます。

小さいおじさんたちは社会の荒波にもまれて、傷ついて・・・
やっと見つけた、楽園がここにあったのです。

おじさんたちに愛を♪

13/11/06 泡沫恋歌

猫春雨さん、コメントありがとうございます。

私たちはこのサイトに来て1年半くらい経ちます。
ここは純粋に創作に励む人たちが多くて、本当に良いサイトです。
入賞の基準はポイント数でもなく、閲覧数でもなく、コメント数でもありません。
運営さんの評価で決定されています。
だから、入賞したから組織票だなんて言われません(笑)

メンバーたちもここで投稿していますよ。
ここはテーマがあって、2000文字以内という規制があるので
ある程度の実力がないと付いていけませんから、
上手い創作者がいっぱい居て、ここは勉強になります。
掌編の得意な猫春雨さん向きだと思います。

ここで、一緒に頑張っていきましょう!

また、よろしくお願いします(○^o^○)ニコッ♪

13/11/11 泡沫恋歌

凪沙薫 様、コメントありがとうございます。

頑張ってるおじさんたちの居所がない家庭は悲惨だと思います。

少ないお小遣いでおじさんたちは、お昼は社員食堂の定食か、安い牛丼、もしくは
コンビニのおにぎりで凌いでいるというのに、世の奥さま方のリッチなランチはどうだ!?

ホントにレストランやホテルのランチに行くと、ほとんど主婦たちの女子会ですよ。

自分たちばかりグルメしないで、たまにはおじさんにも美味しいものを食べさせて
あげたらどうだと言いたいわ(≧ヘ≦ )プイッ!!

13/12/02 泡沫恋歌

時空モノガタリ運営事務局様へ

この度は入賞に選んでいただきありがとうございます。

毎回テーマを出して貰えるので創作に向かう姿勢ができて心から感謝しています。

おなじみ泡沫恋歌さんと言っていただけるほど、私のカラーが浸透しているんだと
ちょっと嬉しい気分です。
都市伝説のテーマをいただいた時に「小さなおじさん」で書こうと
思い楽しんで書くことができました。

世の虐げられてるおじさんたちに、泡沫恋歌から愛のエールを贈りたいと
思ったわけですが、かく言う私が夫を虐待しているのではないかという
疑惑が浮きあがってきました。

そ、そ、そんなことはありません。(薄く否定)

今夜は夫の手料理で入賞をお祝いします。

コメントありがとうございましたO┓ペコリ

                     泡沫恋歌

追信
大丈夫です! 娘さんはきっと信じてくれます。

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