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ふぐ屋さん

自分の中に溢れてる言葉を形にしたくて登録しました。 中学から始めた創作活動ももうすぐ25年。 昔の作品含め、皆様に読んでいただけると幸いです。

性別 女性
将来の夢 自分が自分らしく生きていけるようになりたい。
座右の銘 自分の限界は自分で決めない

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Bitter Love〜雨、時々、涙〜

13/10/19 コンテスト(テーマ):第四十一回 時空モノガタリ文学賞【 恋愛 】 コメント:21件 ふぐ屋 閲覧数:4575

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『チョコレートパフェとチョコバナナパフェ、どっちが甘いと思う?』
貴方の質問に、私はどうして何も答えて上げなかったんだろう。

いつもと同じ時間、同じ場所、何も変わらない私。
夕方4時半、西に面した窓際の席に腰を下ろした私を少しだけ傾いた陽射しが照らす。
そして、紺色のショルダーバックの中から文庫本を取り出した。
跳ねっ返りな女刑事が難事件を解決していく、ミステリー小説。
1作目から読み始めて、今はもう6作目も終盤。
犯人はきっとアイツだ!と思いながらも、なかなか確証が掴めないストーリーにのめり込んで行く。

コツコツコツ―――。

聞きなれた靴音が聞こえた。
私は文庫本から顔を上げ、視界に映る女性に笑みを浮かべる。

「いつもの、お持ちしました。」
「ありがとう。」

私の目の前に、エスプレッソがそっと置かれた。
そして、その向かい側にはチョコレートパフェが一つ・・・。

「ぁっ・・・」
「どうかされました?」
「・・・・・・・・・いえ、今日も美味しそうだから。」
「ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ。」

丁寧にお辞儀をすると、女性はカウンターの奥へと戻っていった。
店内に流れるBGMは70年代の洋楽がメイン。
最初は聞きなれなくて、自分にはどこか不似合いで居心地が悪かったりもしたが、今となればそれは子守歌のように私の心を落ち着かせてくれる。

そして、私は・・・・・・ただ、待ち続けた。
6作目を読み終わり、7作目を読み始めても待ち続けた。
エスプレッソから白い湯気が消えてしまっても待ち続けた。
傾いた陽射しが夜の暗闇に飲み込まれても待ち続けた。


―――――私は、何を確かめようとしているの。


「今日は遅いですね?」

先ほどの女性がカウンターの奥から顔を出した。

「エスプレッソ、おかわりいりますか?」
「・・・えぇ、下さい。」

再び湯気が立ち込める暖かなエスプレッソが私の目の前に置かれた。
店内からは人気は消え、お客は私一人だけのようだ。

「本当に仲が宜しいんですねお二人共。
 毎日、とても楽しそうに会話されているのをみて、何だか羨ましくて。」
「そんな事ないわ。・・・・・・いつも、待たされてばかりよ。」
「でも、彼氏さんのチョコレートパフェを先に頼まれて、窓の外から息を切らしながら走ってくる姿を見られてる時、とても嬉しそうな顔されてますよ。」
「・・・・・・何だか、恥ずかしいわね。」

そう、貴方は約束の時間には現れない。
それでも平気、むしろ貴方を待つ時間がとても愛おしかった。
だって、貴方は必ず私を一人にしないって解ってたから。


だから―――――。



「ぁ・・・雨。」


窓の外を大粒の雨が降り始めた。
雨音は私の心に鳴り響き、騒音となり、貴方の足音をかき消してしまう。
それは、神様が私につきつけた現実のようだった。
どうして、一人でそんな遠くに逝ってしまったの。

『おい、どっちが甘いと思うか聞いてんの。無視すんなよ。』

「・・・バナナチョコレートパフェ」
「ぇ?」

私は溢れ出しそうになる涙をこらえて、呟いた。
女性が私に向き直る。
少しだけ震えた声で私は続けた。

「バナナチョコレートパフェ、下さい。」
「・・・・・・かしこまりました。」

いつもとは違う注文。
女性は少し不思議そうにしていたが、すぐにバナナチョコレートパフェを持ってきてくれた。
そして、私はその横にクリームが少し溶けかけたチョコレートパフェを並べた。
どちらが甘いか、貴方は聞いたね。
あの時、私は何も答えなかったけど、私の答えはバナナチョコレートパフェ。
チョコレートパフェだけでも甘いのに、バナナまで入ってるんだよ。
こっちのほうが甘いに決まってるじゃん。


・・・・・・私は、チョコレートパフェを食べた。
想像通りのとろけるような甘さが口の中に広がる。
そして、次にバナナチョコレートパフェを食べた。


「――甘く・・・・・・ない。」
「ぁ、そうなんですよ。バナナチョコレートパフェは、バナナが甘いからチョコレートクリームはビターチョコを使用しているんですよ。」
「・・・・・・っ・・・・・・ぅッ・・・・・・。」
「ぇ!?ど、どうしましたか?」


涙が、止まらなかった。
今、貴方が目の前にいたら教えてあげたい。
『チョコレートパフェの方が甘いんだよ』って―――。
貴方は、どんな顔をするのかな、どうして、私はそれを貴方に伝えられないのかな。
当たり前だと思っていた時間が、こんなに大切なものだったなんて・・・。

「・・・・・・・・・一人に、しないで・・・・・・っ。」


私の願いは、貴方に届くのだろうか。
今日も、私は――――、貴方が来るのをただ、待ち続けています。






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このストーリーに関するコメント

13/10/20 そらの珊瑚

ふぐ屋さん 拝読しました。

エスプレッソが彼女、パフェが彼氏、なんだかそのとりあわせも可愛くて。
二人の日常が続いていれば忘れてしまうような質問も、忘れられない言葉になってしまうのでしょうね。
淡々と語られているなかに、彼女の悲しみが伝わってきました。

13/10/20 猫兵器

ふぐ屋様

拝読致しました。
しっとりと哀しい、大人の悲恋でございました。
雨のイメージがとても本作に合っていますね。描写が丁寧なので、こぢんまりとしたカフェの様子が目に浮かぶようです。
来るはずのない人を待ち続ける女性の姿が、痛々しくも美しかったです。

13/10/20 泡沫恋歌

ふぐ屋さん、拝読しました。

切ないラブストーリーですね。

チョコレートパフェの方が甘いんですか? 知りませんでした。

いつか、主人公がチョコレートパフェよりも甘い恋を見つけることを願っています。

13/10/21 日向夏のまち

ふぐ屋様、拝読させて頂きました。

感想文は苦手なので、見苦しい感想ですがご容赦ください。
静かで落ち着いた店内や、そこに漂う雰囲気。切なさまでが一つの情景として浮かぶような、柔らかな作品でした。一言一言がとても丁寧に綴られていて、ただ言葉を乱立させている私などとは大違いです。
その柔らかさが、この物語の切なさをほんわり暖かく包んでいるように思いました。

……やはり、言葉にするのは難しいですね。私の語彙力ではこれが限界です。

どこか温かな、良作でした。

13/10/21 ふぐ屋

>そらの珊瑚 様

ありがとうございます!
些細な日常には大切な事がたくさんあふれていて、それに気がつかないまま過ぎていく事が多いんだろうなと思いました。
文字数の関係で、ハッピーエンドに持っていく事ができなかったのがちょっと残念です(-_-;)

13/10/21 ふぐ屋

>猫兵器 様

ありがとうございます!
悲恋、ですね・・・。思い出というのは、本当にその時にはただ当たり前過ぎて、失って初めて大切さに気がつく事が多いと思います。
まだまだ未熟な文章ですが、このように評価頂けて嬉しいです!本当にありがとうございます!

13/10/21 ふぐ屋

>泡沫恋歌 様

メッセージありがとうございます!
チョコレートパフェのように甘い恋が出来るのか、主人公にこのあとどのような明日が待ってるのか、それはきっと読者の方々の解釈によって変わってくるのだと思いますが、幸せになって欲しいと思っていただけて嬉しいです。
好きな人を待ち続けること、それも一つの幸せなのかなぁと思わなくもないのですが・・・、でも、やっぱりそれは寂しいですね(;_;)

13/10/21 ふぐ屋

>葵更

メッセージありがとうございます!
好きな人を待ち続ける時間って、絶対に来るって解ってたらとても愛おしい時間だと思うんですよね。
どんな顔してくるんだろ〜みたいな、だけど、それが本当はもう二度と来ないって解ってるのに待ち続ける、という凄く辛い時間を切なく表現できれば、と思い書かせていただきました!
大好き、と仰って頂けて嬉しいです、ありがとうございます!

13/10/21 ふぐ屋

>日向夏 様

ありがとうございます!
描写が私もまだまだ拙くて、苦手な部分も多々あるのですが・・・
このようにお褒め頂けて嬉しいです。
小説、は音も画像もないから文章だけで感情と、情景を表現しないといけないので、課題が山積みですが、精進できればと思います。
本当に、お読み頂きましてありがとうございました!

13/10/22 草愛やし美

ふぐ屋さん、拝読しました。

待ち続けるエスプレッソの彼女。切なさがあのエスプレッソの苦味を思い出させます。私もエスプレッソ派です。甘い物が苦手な変な女です。待つ時間にチョコパフェが溶けていくのが悲しいですね。

13/10/25 平塚ライジングバード

ふぐ屋さま、拝読しました。

2つのパフェのどちらが甘いかという質問から始まり、その回答で終わる。
非常にきれいな構成の物語でした。
「静」の雰囲気の中に様々な「動」が組み込まれ、作品世界に没頭させて
いただきます。
一見シンプルな作品ですが、作者様はかなり技巧的な方だと感じました。
面白かったです!

13/10/25 平塚ライジングバード

↑のコメントは「没頭させていただきました。」です。
失礼しましたm(__)m

13/10/27 ふぐ屋

>草藍 様

コメントありがとうございます!
チョコパフェが溶けていくさま、それはいつまでたっても彼が現れないことを象徴する、大切な描写だったので、その点をお褒め戴けてうれしいです。
私も甘いのは少し苦手wエスプレッソばかり飲んでるので、意外と自分がトレースされた主人公かもしれませんw
でも、私はきっとここまで待てないと思います(-_-;)

13/10/27 ふぐ屋

>凪沙薫 様

コメントありがとうございます!
このようにお褒め戴けて本当にうれしいです。
小説、というのはやはり映像も何もない中で文章だけで、主人公の心の描写を描かないといけないのでとても難しく、今回も切なさと強さと愛おしさ色々な感情がせめぎ合った、心情を描くのがとても難しくて苦戦しました(-_-;)
本当にありがとうございます!

13/10/27 ふぐ屋

>平塚ライジングバード 様

ありがとうございます!
実は、最初と最後が思いつき、間を2000文字で伝える、という事に非常に手間取りました(^^ゞ
この質問の答えが甘くない、という答えだからこそ、普通とは違う答えだからこそ、それを彼に伝えたい、伝える事が出来ないことへの切なさを表現できるのかなぁと思いました。
ありがとうございます!

13/10/27 小田イヲリ

拝読しました。
ふぐ屋さんの書かれる小説がとても素敵なので、ここにコメントを残されていく方も素敵な方ばかりで…。
少々、私がコメントするのが恥ずかしいのですが、溢れる衝動を抑えきれませんでした。ご了承ください。
溶けかけたパフェを食べるところと、バナナパフェが甘くないことを知ることが切なかったです。
バナナパフェの真実は、彼に対して生前ないがしろではないですが、「はいはい」と、流してたというか、ちょっとだけ雑に扱っていたのかな?と思いました。
だからこそ、その真実が重かったのかなと……。

この作品をよんで、わたしは、親友に直接会いたくなりました。
そして、パフェが食べたくなりました。
甘い恋のお話ではないのに、とても甘く感じられる作品でした。
ご馳走様でした。おいしかったです。

13/10/27 小田イヲリ

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13/10/27 小田イヲリ

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