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川村 誠さん

初めまして。 僕は楽しく読んだり書いたりしたいだけなんです。 自己紹介ですか。 えーと、5歳の長男と2歳になった双子の次男、三男がいます。親バカですが、子供ってかわいいですねー。 あと、僕は心の病気持ちなので、それが作品に影響することも多いと思いますが、その時はスルーして下さい。 コメントもらえるととても嬉しいです! よろしくお願い致します。

性別 男性
将来の夢 1つでもいいので、自分で納得できる小説を書いてみたい。
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僕は君じゃないし君は僕じゃない

13/10/13 コンテスト(テーマ):第四十一回 時空モノガタリ文学賞【 恋愛 】 コメント:3件 川村 誠 閲覧数:1147

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 夜中の11時頃、僕は君の部屋から漏れている光を確認してからメールを送った。『ちょっと散歩に行かない? 今、下にいるから』すると君は二階の部屋の窓を開けて、僕の姿を確認し、部屋の中に少しだけ外の空気を入れた。まるで僕の存在を少しだけ認めてくれたかのように。或いは僕という不純物を体内に少しだけ受け入れてくれたかのように。僕は混じり気のない君の心が好きだったから、僕という存在が君という存在を損なっていないかどうか不安だった。

 僕らの共通点は心の病気であるということ。ちょうど二年前の今の季節に、僕らは病院の待合室で出会った。君は何かに怯えるように、パーカーのフードを被り、小刻みに震えていた。きっと、君の中の何かが損なわれてしまっていて、それを補う手段が見つからず、部屋に引きこもって一人で闘っていたのだろう。だけどどうしようもなくなって、途方に暮れることもできずに苦しむだけ苦しんで通院するようになった。あの時、僕は君を見ていられなかったんだと思う。僕はもう何年も前から壊れていたから、慣れたもんだったけど、君はその時が一番辛い時期だったため、僕は激しく共振してしまった。だから君に話しかけなければならない。そんな風に身勝手にも思ってしまった。

「すみません、今、何番目くらいの人が診察室に呼ばれてるんですか?」

「わからないです、ごめんなさい。私、寝てしまっていたようですから」君はそう答えると瞼を閉じてしまった。でも、当たり前か。君は僕じゃないし、僕は君じゃない。そう何回も何回も心の中で呟いた。

「あの女性は、あと何人で順番がくるんですか? 順番が回ってきたら起こしてあげたいのですが」と僕が受付に言って聞くと、「えーと、大森さんですか、あと五番目ですね」と教えてくれた。それから30分くらい待つと、主治医が「大森純子さん」と呼んだ。案の定、君は自分が呼ばれていることに気がつかなかったので、僕はそっと肩を叩いて、呼ばれたことを告げた。すると君は僕に頭を下げて診察室へフラフラと入って行った。

 それが僕と君との出会いだった。君は診察を受けて戻ってくると、「すみませんでした」と言ってくれた。どうやら君は二週間に一回、僕は一ヶ月に一回、診察に通っていたようだ。僕らは月曜日の午後に診察を受けることが多く、ポツリポツリと話すようになっていった。僕らが意外と近くに住んでいることも判明した。

「私、友達がいないの。仕事もやめてしまったし、家でもほとんど部屋に閉じこもっているだけだから」そう言って君は笑うのだった。

 あれから二年経っても、君は何回も同じことを聞く。

ーーなぜあの時、私に話しかけたの?

 君はまるでそれが僕らの合言葉のように言うのだった。だから僕も合言葉のように答える。

「あの時はね、何だかよく分からなかったけれど、僕が君の部屋の窓をノックしなきゃならない。そしてとにかく外に連れ出してあげないといけない。そう思ったからだよ」いつもそう答えた。合言葉みたいにね。

 今夜の空気は湿っていて、少しだけ肌寒かった。僕が「カーディガンでも羽織っておいで」と小声で言うと、君は頷いて窓を閉めた。僕らは近くの公園まで歩いて、ベンチに座って一休みする。

「君を連れ出してこんなふうに話すのが、僕にとって一番楽しい時間なのかもしれない」僕はそう言った。それが僕の正直な気持ちだった。

「私もそうよ。あなた以外は信じることができないし、あなたにしか本当のことは話す気になれないの」君はそう答えた。

「病気だね、本当に。僕も君も」と僕が笑って言うと、「そうね」と言って君も笑った。

「私がどこかへ行ったとしても、私を連れ出してくれる?」

「もちろん。夜を飛び越えて、星座を飛び越えてでもでも君の部屋の窓をノックするよ」

 僕らは笑っている。それだけでいいじゃないか。今はそれだけで十分なんだ。誰が何と言おうと、僕らには僕らの生き方があるのだし、急がなくていい。僕は何かを損なった替わりに君と出会った。僕らの時計は狂ったまま、誰もいないどこかで泣いているのかもしれないけれど、それが何だっていうのだ。誰か僕らを見てくれないか。僕らはこうして笑ってる。こんなに笑えるんだ。羨ましいかい?

何かが損なわれているのならば
それはきっと僕のせいなのかもしれない
みんなは笑うけど
笑っている場合じゃないし
僕が何かをやってしまったのかもしれない

みんなは不安にならないのかな
自分のせいじゃないって
自信を持って言えるのかな

あの雲を抜けて
あの星座を飛び越え
あの娘のところへ
ドアをノックしに行く

僕が連れ出してあげるよ
この季節はまだまだ冷んやりしているから
カーディガンでも羽織っておいで


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このストーリーに関するコメント

13/10/13 ふぐ屋

初めまして、小説拝見させて頂きました。

言葉の使い方が凄く繊細で、とても読みやすかったです。
心の病、という非日常的な共通点だからこそ、彼等の結びつきは強くなり、同じ世界を共有したのかなぁと思いました。

僕らには僕らの生き方がある。

この言葉が、物語の中でとても説得力があり印象に残りました!
素敵な作品でした、本当に(^^

13/10/14 川村 誠

ふぐ屋様、はじめまして。コメントありがとうございます。今は少しずつ心の病気のことが取り上げられるようになってきましたが、それでもなかなか理解してもらえないのが現状です。ふぐ屋様仰る通り、同じ病気だから、分かり合えたのかもしれませんね。素敵な物語と言っていただいて、とても嬉しかったです。本当にありがとうございました!

13/10/24 川村 誠

凪沙薫さま、こんばんは!
僕の作品を楽しみにしていただいていたなんて、
なんだか恐縮してしまいます。

でも、読んだ後、何か温もりのようなものを感じていただけたのなら、
本当に嬉しく思います。

ありがとうございました!

追伸:間違って、空のお返事を書いてしまった。。なんてバカなんだろう、僕は。

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