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光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

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『ウー』の真実

13/10/12 コンテスト(テーマ):第四十二回 時空モノガタリ文学賞【 都市伝説 】 コメント:9件 光石七 閲覧数:1756

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 ユッチャンイカの売上急増、バッツバーガーの廃業、Pタワーでの転落死事件。一見無関係なこれら最近の事象には、ある共通点があった。――原因が都市伝説。
 ユッチャンイカは『耳削ぎ女』が嫌いなものだとされている。耳削ぎ女とは「あなたの耳を頂戴」とカッターを持ってしつこく追いかけてくる女だ。ユッチャンイカを投げれば耳削ぎ女が耳と間違えるため、逃げ切ることができるという。
 バッツバーガーはパテに人肉を使っているという噂が流れ、客が激減。店に罵詈雑言の張り紙がなされたり石が投げ込まれたりで営業が難しくなり、ついに会社自体を畳んでしまった。
 Pタワーの屋上は立入禁止だが、実は歴代総理の宇宙人との会合の場だという噂が広まった。若者たちが宇宙人に会おうと無断で侵入し、強風にあおられ一人が転落してしまった。
 冷静に考えればどれも荒唐無稽な話なのだが、真に受ける者たちもいるのだ。このような例は他にもある。都市伝説は社会に少なからず影響を及ぼしているようだ。

 フリーライターの矢部は黒原書房を訪ねた。オカルト系月刊誌『ウー』を刊行している出版社だ。
「今、都市伝説絡みの騒動や事件が多いですよね。その背景を探るため、都市伝説を扱う方にもお話を伺おうと思いまして」
「素晴らしいジャーナリズム精神ですね」
編集長の黒原は愛想よく矢部を迎えた。
「早速お聞きしたいのですが、黒原さんは都市伝説を信じていらっしゃいますか? それとも、商業的なネタとして捉えておられるのでしょうか?」
「これはこれは……単刀直入ですね」
矢部の質問に黒原は苦笑した。
「矢部さんはどうお考えですか?」
逆に尋ねられ矢部は少々ムッとしたが、表情には出さなかった。
「私は……申し訳ありませんが、あまり信じてないですね。根拠が乏しい情報は鵜呑みにできません。面白いと思う時はありますが」
「『ウー』にも根拠は載せてるんですけどね」
黒原の言葉が挑発的に聞こえ、矢部は思わず言い返した。
「どこの誰かわからない人間の証言や合成写真では、根拠と言えないのでは? ――失礼」
追い返されるのでは、と矢部は不安になったが、黒原は笑顔だった。
「ははっ、そう受け取られますか。率直で結構です。どう受け止めるかは読者の自由ですから。『そんなこともあるんだ』と素直に思うのもいいですし、否定してもいい。ただの話のネタにしてもらっても構わない。普通のニュースとは違いますしね。そこが都市伝説の一つの醍醐味ではないでしょうか」
「……そうおっしゃるということは、黒原さんは都市伝説をそのまま信じてるわけではないんですね」
矢部は黒沢が自分の答えを遠回しに言うタイプだと理解した。
「では、都市伝説が社会に混乱をもたらすケースをどう思いますか?」
「亡くなられた方はお気の毒でした。バッツバーガーも哀れでしたが、あれは風評被害だと思うんですよ。ウチでは記事として扱ってませんし、都市伝説とは認めていない。ただ、ある情報が社会的に影響力を持つのは都市伝説に限ったことではありません。アイドルの自殺に殉じるとか、値上げの前に駆け込み需要が起こるとか」
「都市伝説というより情報が持つ力、という感じですか?」
「ええ」
矢部は質問を続けた。
「『ウー』の情報源はどこですか? 読者のタレこみが中心ですか?」
「そうですね。後はネットの掲示板なんかをチェックしてます」
「話題になっている話を拾う、と?」
「ええ」
「……それは変ですね」
矢部の声のトーンが変わった。
「私が調べたところでは、ネットで話題になる前に『ウー』に記事が出ている」
「大きな話題になる前の小さな雑談を見てるんですよ」
黒原は表情を崩さない。
「少人数のお宅が? ネット上のやりとりなんて、四六時中大勢で張り付かないと網羅できない。――最近の都市伝説はあなた方が作ってるんじゃないですか?」
矢部は核心を突いた。
「それも面白い都市伝説になりそうですね」
「ごまかすな! 確証がある。一体、何故馬鹿な話をでっちあげてるんですか? 売上を伸ばすためだけにしては手が込んでる」
「何の為だと思います?」
黒原は気味が悪いほど笑顔のままだ。矢部の怒りは増した。
「……死人まで出てるのに、責任を感じないのか? 必ず真実を暴いて世間に公表してやる!」
「困りましたねえ。任務の邪魔をされるなら仕方ない」
黒原はポケットから赤い石を取り出し、矢部に向けた。石が光り矢部を吸い込む。
「いずれ進出してくる地球人にどう対処すべきか、下調べの一環ですよ」
黒原の答えは矢部に届いただろうか。

 数年後、黒原書房の全社員が忽然と姿を消し「黒原書房には異世界への扉がある」との都市伝説が広まる。その時には黒原の母星が地球壊滅のための兵器を発動させているのだが……。今は誰もそれを知る由は無かった。


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このストーリーに関するコメント

13/10/12 そらの珊瑚

光石七さん 拝読しました。

都市伝説を裏で操る会社の罪を暴くお話かと思いきや、怖ろしい結末に意表をつかれました。
都市伝説、どこで生まれてくるのかはっきりしないため、もしかしたら?なんて思わせますね。面白かったです♪

13/10/13 草愛やし美

光石七さん、拝読しました。

ラストの衝撃、さすが光石さんだと思いました。まさか、このカテゴリーの話だったとは……。どういう風に運ばれる作品なのだろうと、わくわくしながら、読み進み、いい意味で納得できました。
考えれば、今の世の中は、都市伝説というか情報に踊らされてしまっています。その傾向は、面白いほどです。乗り遅れてはいけないという気持ちもあるのかもですが……、「倍返し」のようにみんなが知っていることを知らないとなるとついていけない現実があります。
じわじわと迫る恐さを醸し出し、大きなものに流されてしまう人間の弱さが今の世にあるという社会現象に、一石を投じる巧い作品だと思いました。

13/10/13 光石七

>そらの珊瑚さん
いつもコメントありがとうございます。
本当はもう少しいろいろ書き込みたかったのですが、2000字の壁が……
都市伝説はいつの間にか広まってるという感じで、誰が言い始めたのか曖昧ですね。実は意図的に誰かが作っていたりして。
面白かったと言っていただき、うれしいです。

>OHIMEさん
よかったですか?
宇宙人は実はすでに地球にいるというのも確か都市伝説にあったと思います。
お気付きかもしれませんが、“矢部”は「ヤバイ」から、“黒原”は「腹黒」からのネーミングです(笑)

>草藍さん
深く読み込んでくださり、ありがとうございます。
2000字に収めるのに必死で、何が言いたいのかわかりにくくなったのでは、と危惧しておりました。
世の中、いろいろ情報に踊らされ過ぎですよね?
ついていけない悔しさを、こう思うことで慰めております(苦笑)

13/10/13 泡沫恋歌

光石七さん 拝読しました。

これは意外なオチで面白かったです。

案外、都市伝説なんてネットで誰かが意図的に噂を流しているだけなのかも知れませんね(笑)

13/10/13 yoshiki

拝読いたしました。

え、ええーっ!! というオチに驚きました。

都市伝説を科学的に解明したらどっちらけになってしまうかもしれず、
闇に光を当てるのも大切かもしれませんが、当てすぎてはいけないかなとも思いました。鋭い問題提起でもありました(*^_^*)

13/10/14 光石七

>泡沫恋歌さん
コメントありがとうございます。
オチは……都市伝説が故意に作られているとしたら目的は何だろう、といろいろ考え、最終的に字数制限でやむなくこれに落ち着きました(苦笑)
何かの神話や伝説がモチーフになっていたり、ライバル会社を蹴落とすために流したデマから発生したり、著名人が発したひと言に尾ひれがついたり、都市伝説も様々なようです。

>yoshikiさん
科学がこれだけ発達してるのに、何故か都市伝説はなくなりませんね。
都市伝説を真実として研究している人もいるようですし。
結局、人は噂が好きで、得体が知れないものを面白がるのかもしれません。
コメントありがとうございます。

13/10/14 遥原永司

読ませて頂きました。

書き慣れてらっしゃるのか、会話の文が非常に巧みで本当感心しました。ぜひ参考にさせて頂きます。
それゆえ最後ら辺までは「どうなるんだろう?」ともうすっかり引き込まれて読んでいたのですが、ラストで、どういうことなんだろう・・・ってなってしまったのが少し残念でした。なんといいますか、起きていた現象(各種都市伝説)と、明かされた宇宙人の目的とが、今一つパッと結びつかなかったんです。これは私が単に鈍いだけかも知れないのですが。

故意に作られた噂の裏にあるそれぞれの目的がもっと論理的に語られていたら、宇宙人の行動により説得力が加わって、納得もすぐにいったような気がします。例えば、この都市伝説は一見本当にバカバカしいようだが、実は地球人のこういう行動原理を探るものとして実に適しているのだ、そしてこっちの都市伝説はこういう理由なのだ、といったようにです。「下調べ」というだけだと何だか漠然としていて、それなら何でも有りになってしまう、ていうかそんならもっと上手いやり方があるのでは?宇宙人なんだし?という感じがしてしまい(都市伝説の内容が突飛なだけに)、個人的にピンとこなかったのだと思います。

でも今の構成ですと、そういった裏付けをふさわしく語らせる文は入れにくいように見えますので、私の意見はこの作品に求めるべきものじゃないのかも知れません。まあそういうことを考える人もいるのだなぁ程度に受け取ってもらえればと思います。

13/10/14 光石七

>くくるさん
初めまして。コメントありがとうございます。
ご指摘の件、自分でも引っかかっておりました。
一つ一つの都市伝説が何を調べるものなのか、説明を入れなければわかりづらいと思いましたが、2000字に収めるのは難しく、苦肉の策で“下調べ”の一言で片づけてしまいました。
かといって、説明文だらけでも読みづらいでしょうし……
力量不足を痛感します。
具体的なご意見は本当にありがたいです。

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