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*七*さん

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『なにか』の話

13/10/11 コンテスト(テーマ):第十八回【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 *七* 閲覧数:967

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「ただいまー····」
そう言って部屋に入ってきたそいつに、心の中で おかえり と告げる。
「心の中で」な。これ重要。
オレ、しゃべれねーし。
しゃべろうとしたら、口はおろか、指先すら動かんかったわ。
ってかそもそも人間じゃねーし。ましてや生物じゃねーよ。生きてねーわ。心臓ないし。

見た目的にいうと動物なんだが·····
まあ、とりあえずはそういうことだ。

そんなオレの苦悩には目もくれず、そいつはクローゼットからいつもの服を取り出した。
青と白のカーディガンに、白いTシャツ、黒いミニスカートに黒いニーハイソックス。
そんな服着て毎晩どこいくんだって話だが、あいにくオレの心の声はこいつに届かん。

で、いつものよーに目の前で着替えだす、と·····

あ、オレ感覚的には多分男♂な。

目の前で女子が着替えてるのにそんなヤツがいていーのかよ変態

·····みたいに思うヤツいるだろ。絶対。

だがあいにくオレは完全な♂じゃねーからな。
目の前で着替えられたって、それがなに?みたいな感じなんだよ。


······おい誰だ今へんな妄想してたヤツ手あげろ



お、やっと着替え終わったみてーだな·······







あれ?






なんだ······?なんか変だ。
いや違う違う性的な意味じゃなくて。
もっとなんかこう·······
外じゃなくて、なんか内側の方·····なんかもやもやする。


あーーーーーーーーーーーわっかんねぇ
なんなんだよ。一体。


でも、このままじゃダメな気がする。
なんかいい方法h「いってきまーす」ダメじゃねーかよ

バタンと扉が閉まり、階段を降りていく足音が段々遠ざかっていく。

これは結構マズイのか·····?と考えていたオレは、いつの間にか夢の世界へ誘われていた。

·····そーいやアイツ、いっつも誰に「いってきます」って言ってんだ?


_____________





気がつくと、辺りは月明かりでほのかに照らされていた。
机の上にかすかに見えるデジタル時計はぴったり午前零時を表している。

その時、ぼんやりとするオレの背筋が、凍りついた。


ーーーまだ、帰っていない。


おかしい。いくらなんでも、絶対おかしい

これまで毎晩のようにどっか行ってたが、少なくとも11時前後には、家にいたはずだ。

それに·······この家には、アイツには、親がいない。

突然起きた事故で、すべてを奪われたーーーー天涯孤独の身。

そんなアイツになにかあったって、助けてくれるヤツは、いない。

夜になり辺りも暗いせいか、どんどんオレの思考も暗くなっていく。

どうすれば······と思案していたオレの耳に、階段を上る足音が聞こえた。


ホッとした········が、オレは、ある違和感に気づいた




歩き方が、違う?




アイツはわりと体型も細い方で、おおよそ体重も軽いだろう。
だから、トン、トン、とか、そんな感じのはずなんだが······

今、オレの耳に聞こえた足音はそんなもんじゃない。
もっと重いヤツが、ドス、ドスってのしのし歩くような·······
そう、あれだ。ゾウとかカバが歩く感じだな。


その時、ドアが開いた。



そこに立っていたのは·······うん。あれだ





一言で言おう。てっかてかの油まみれの豚だ。

まあ要するにおおよそ40代後半の油ギッシュ+テカり+デブなおじさまご登場ってわけだが·····


いろんな意味で褒めるところいっこもねーよ




なんかいきなり入ってきて引き出し物色してるし。
汗たれてるよ汗。



あーそこコードあるからふm·····ツルッベシャッドテッ
あーあー······こけたし
ってか自分の汗でこけるってどうなのよ。
あんたの汗はサラダ油かなんかか?
ってかそんなんでよく泥棒しようと思ったなおい



·······まあこれくらいのヤツならすぐどっか行くだろ

後はアイツが帰ってこないことを願うだけだな·····ん?

いま一瞬、おっさんの尻ポケットでなんか光ったよーな·····


「っ·····!!!!!!!」

ドアの方から、ドサッという音がした。

そっちを見ると、アイツが手に持ってたカバンを落として、ガタガタ震えている



··········最悪のタイミングだよ。お前。


その時、おっさんが動き出した。

右手には銀色に光るナイフ。

しまった。さっき見えたのはあれだったか。

おい!!!!!早くにげろ!!!!!


そう叫んでみるも、声じゃねーから届くわけもない······

「む、無理······足が震えて、動けないよ····」

_______え?

お前、今_______









次の瞬間、おっさんが右手に持ったナイフを振りかざし、アイツを、切った。



部屋に飛び散る鮮血

くずおれるアイツの体

壁にもたれかかり、動こうとしない

その顔色は、紙よりも白かった。




「·····っ······待てよ、テメェ·······!!!!!!」

オレは、出るハズもない声を振り絞り、窓から逃げようとしているおっさんに向かって叫んだ


「自分が何したか、わかってんのか、おい!!!!!!!」

ビクッとしてこちらを振り向いたおっさんに近づく。
いつの間にか、動けていた。

なおも逃げようとするおっさんは、窓枠にかけた足を必死でジタバタさせているが、体がつっかえて抜けられないようだ。

「········そんなに逃げてぇか?なら、手伝ってやるよ!!!!!!!」

力いっぱい、油と汗にまみれたその背中をおもいっきり蹴ってやった。

おっさんは、なすすべもなく下へ落ちていった。
空中でなにかを掴もうとした手は虚しく空を切り、ドーンという衝撃音がした。
下の方でなにか飛び散ったが、それは気にならなかった。
やがて、辺りは静かになった。

ここは2階だ。命くらいは助かるだろう。出血多量でなければ、あのどでかい脂肪のかたまりだ。心配ない。

いつの間にか着ていたブカブカな黄色いパーカーの袖で、汚れを拭う。


問題があるとすればーーー



「おい!!!!!しっかりしろ!!!!」

さっきから一つもうごかない、コイツだけだ。



「おい!!!!!おい!!!!!!目を覚ましてくれよ!!!!」

その冷たくなった体を意味もなく揺すっていたオレは、気がついた。











そいつの心臓は、動いてはいなかった。









さっきまで確かにあったハズのぬくもりも。





鼓動の音も。






時々みえていた表情すら。








もう、ここにはない。








「······んだよ·····なんで、なんでみんな······奪うんだよ······」




突然事故で、すべて失っても。
頼れるヤツがいなくても。

コイツは、たった一人で頑張ってきた。


気づいてなかったろうけど、オレはずっと見てた。





「·······なんでだよ·····」
その時、初めて気づいた。












「液体·······?」








オレの顔から流れる、あたたかい、透明な滴に。








オレは、ただ、不甲斐なくて。


目の前で、大切なヤツが殺されたのに、見てるしかできなくて。


悔しくて。どうしようもなくて。


ただただ、悲しくて。



こんなの、今までになかった。


初めて、気づいた。


こんなことになってから。初めて。










「_____もしも。もしも、オレの願いが、一つだけでも、叶うなら。」


泣きながら、そう呟いた。



「______コイツに、オレの残りの命をやる。


                        だから_________










もうこれ以上、コイツから何も、奪わないでやってくれ。」






















「そんなの······ダメ·····だよ。」







「っ!?お前、なんで·······」






「わかんない······でも、君まで死んじゃったら、私にはもう、誰もいない。」


「··············お前は、どうしたい。オレは、お前に従おう。」


「ふふっ······やだなぁ、もう·····そうだね·······私はもう、生きられない。自分が一番、よくわかるもん。



でもね、まだ、生きたかった。君と話がしたかった。·······君の声、本当は聞こえてたんだよ?」


「················」


「そんなに泣かないでよ·······男の子、なんでしょ。一応。


私はもうここで死んじゃうけどね·······君はどうしたい?」


「オレ········?」


「そう。ホントは君と話してるこの時間、私はもう天の国にいるハズだった。

でもね、多分、神様が、時間をくれたんだよ·······こんなキセキ、もうないもの。」



「だったら、オレは········」








__________







『○月○日、午前3時のニュースをお伝えします。×年前に起きた、女子高生殺害事件ですが、犯人は窓から飛び降り重症、女子高生の遺体も行方不明という最悪の事件から、今日で丸×年を迎えました········』










ピッ










またこのニュースかぁ·······何回見ただろ



はあっはあっ······




でも、なんか懐かしい感じなんだよねー······


タッタッタッタッ······


なんでだろ·······

「うわぁっ!?」


「うえぇっ!?」



ゴスっ






「「いったぁ・・・・・・」」



「ご、ごめんなさい!!!!前ちゃんと見てなくて!!!・・・・あれ、その新聞・・」

「オレの方こそ、ごめん!!!!考えごとしてて・・・・って、あれ、そのケータイ・・」





「「なんでその事件、調べてるんですか?」」


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