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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

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恋愛未満

13/10/09 コンテスト(テーマ):第四十一回 時空モノガタリ文学賞【 恋愛 】 コメント:20件 草愛やし美 閲覧数:2001

時空モノガタリからの選評

最終選考

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 世の中、どう変わるかわからない。いつか何かが生まれると信じられる者は幸せだ。赤い糸を信じない女だったが、心の片隅に恋を信じる欠片があった。その欠片が、石ころだったとしても、恋と思えば成立する。恋愛未満は、後悔はしないのが鉄則だ。
 ★
「戦士やってる限夢(げんむ)です、只今入院中。年は二十五歳、誰か戦い仲間になってくれませんか?」
 SNSバトルゲーム『薔薇の夢』に嵌って一か月、掲示板のその伝言を見た女は、ゲーム仲間を探していた。ゲームは可愛い様相のキャラになり、様々な職業に従事し技を持てる。キャラ達は仲間で力を合わせ敵を倒す。謎解きをしながら敵と戦い上層のダンジョンを目指す。レベルが上がればより高度なアイテムや技を得て一目置かれるようになる。魔緒は、楽しくてやめられなかった。ネット内は言わなければリアルがわからない。相手が既婚者であろうと中学生であろうとお構いなし。ゲーム内では、変身願望が叶う。現実にはお局様、どん詰まり年増、能無しババアと言われていようと構わない。

 HNは摩緒、年齢二十四歳、もはや本名よりそっちに愛着があった。そこに住む女が、会社を休みがちになったのは、限夢と知り合ってからだ。女はいつやって来るかわからない男をPC内で四六時中待つようになっていた。二十四歳の生まれ年の干支、小学校時代流行った歌、中学は、高校は? どんなことに興味があるのか調べた。ごく普通の人でよいが限夢と同じ年代に生きていたいと願った。無駄に年を喰ったのではないと、女は自負していた。が、現実は違う。年齢を言わなくても、人の視線は顔の皺や手のシミに突き刺さった。

 バーチャル恋愛、それをいけないと誰が言えるのだろう。現実を知っているのは光ケーブルだけ。光を駆け抜ける時、摩緒の姿は形成され歪められた愛を纏う。笑みを浮かべた魔法使いの摩緒は、夜毎、女の救いになった。
「病院超厳しい。けど看護師の目を盗んでゲムってます」
「限夢、おかえり〜」
「患者は寝静まっているよ、起きているのは世界中で摩緒と俺だけ」
 魔緒と限夢は薔薇の夢の部屋に鍵をかけ入る。二人だけでチャットを交わす。やがて、その部屋で男女はゲームもしないで愛し合うようになっていた。男の仕掛ける言葉に女は興奮する。秘め事は、光を通過し甘美な感覚を恋人達に授ける。仮想の姿で体を重ね合わせそれぞれの居場所で自分を慰め果てる。
「俺、こんなチャット部屋でイケルなんて思ってなかったよ」
「恥ずかしい、私こんなに乱れて……」
 それ以上の言葉を女は呑み込んだ。本当に男が果てたのかわからないのに、自分だけが頂点に達していたら茶番だと思ったのだ。だけど、やめられなかった。魔緒は、夢中でその甘い感覚を貪り、それが恋なのだと思った。普通ではない形でも、男と愛し合えることは堪らなく嬉しかった。その異常な感覚が男女に余計に興奮を与えた。
 ★
「それ、死語だよ、魔緒。そんな言葉知っているんだ」
「あっ、そうだね、死語だった。ママがよく使っていたもんだから……」
 落ち着いて返したつもりだったが、マウスを持つ女の手は汗ばみ小刻みに震えた。観念した女に男は神のように囁いた「いいよ年なんて、ネットだもん、俺気にしないよ」
 だが、光を越えない男の声は女には届かない。「チッ! おばはん掴んでしまったか。ババア相手に夜毎、興奮して俺って馬鹿じゃねぇの、このHNともそろそろおさらばだな。仕方ない、また、心中ごっこでお終いとするか、下半身だけでも世話なったから、あくまでも美しく切ない設定、不治の病に禁断の薬、限夢は魔緒を愛し続ける仮想の世界で別れてやるよ」
 ★
「ワインで乾杯。薬飲んだわ……限夢、あなたも飲んだ?」
「飲んだよ、摩央。あと何日生きられるかわからない俺、一人で逝くのは辛すぎる。摩緒、一緒に逝けて幸せだありがとう。向こうの世界で逢おうな」
「うん、逢えるよ、魔法かけたから……絶対逢える」
「摩緒……愛してる」
「限夢…愛……」
 深い眠りが摩緒を襲った。

 ★
 一人の女が自室で死んでいるのが発見されたのは、死後一か月も経ってからのことだった。蛆のわいた遺体の傍には萎れた赤い薔薇が一輪。処方された数枚の薬袋が散らばり、洗い物の溜まった流し台には、食べかけのカップ麺やカビの生えた菓子パンが無造作に置かれていた。
「鬱病で処方された睡眠薬をこのワインで飲んだのでしょうね」
「三か月前に無断欠勤で会社も首になっている。外傷もない自殺だな」
「宮藤刑事、走り書きに『限夢ありがとう』ってありますが、どういう意味でしょう」
「夢に限り、全て終わったということだろう、遺書だな」
「一応、PCとか調べますか?」
「いや明らかに自殺だ」
 刑事は、臨場の様子を見ながら判断した。PCは閉じられ女の部屋にポツンと残された。


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このストーリーに関するコメント

13/10/09 草愛やし美

右画像は、無料素材を提供して下さっているイラストACさんより、「peberryさん」のイラストをお借りしています。
イラストACさんのURLは、http://www.ac-illust.com/ です。

13/10/09 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

バーチャル恋愛の果ては、悲しい結末ですね。
摩緒も架空の恋愛であることをちゃんとわかっているのだけど、
それでも本物の恋愛だと信じようとしていた。
そんな風に思ったら、なんだか哀れです。

13/10/09 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

昔、ハ○ゲームにハマって、ゲームやアバターに湯水のように
お金を使っていた、お馬鹿な自分を思い出しました(笑)

「成りたい自分に成れる世界」
バーチャルの世界も楽しかったですよ。

感情移入しながら読ませて頂きました6( ̄▽ ̄;)

13/10/09 yoshiki

読ませていただきました。

これはもう空想の領域を超えていて、リアルに怖い、悲しいお話ですね。

バーチャルゲームが進化したらいずれこうなるのは、誰もが予測しながら、もう止められません。どうしましょう。ちなみにこの世界さえもバーチャルリアリティであると主張する研究者が実在します(^_^;)

13/10/10 草愛やし美

お読みくださった方々へお詫び: 文中後半、二人の心中場面の会話内で、名前の変換間違いをしましたことを、ここで訂正させていただきます。
「摩央」⇒「魔緒」 です。今後は、推敲をきちんとしたいと反省しています。

13/10/10 草愛やし美

そらの珊瑚さん、お読みくださって、コメントありがとうございます。

バーチャル恋愛、SNSでは結構されています。なぜ、こんなアバターという架空の漫画のような姿の者を愛せるのかと不思議でしたが、中には現実に会って結婚した方、あるいは不倫に走った方などいます。
出会いの求め方が、今や変わってきているのかもしれません。現代社会は便利な世になりましたが、寂しい人が増えているのかもしれません。魔緒の場合は、不幸な結果になってしまいましたが、幸せになった方がいると信じている私です。

13/10/10 草愛やし美

泡沫恋歌さん、コメントありがとうございます。

SNSって怖いですよね、私も、アバターに嵌りました。今もまだ懲りないで時々やっています。汗 着せ替え人形のようで、楽しいですよね、嵌る方の気持ちはよ〜〜くわかります。
ゲームによっては、自分が全く違うものになった気がします。ただ、いつまでもそこに嵌ってしまうと、現実に帰れなくなる恐れもあります。バーチャルで不倫をして離婚した方、SNSでおられました。
二十一歳と偽り、美人の写真(親戚か知り合いかわかりませんが)まで配っていた四十八歳の女性を知っています。既婚者でしたが、現実の自分から脱したかったのだと思います。ですが、約一年半も騙され続けてきた私達は、大変なショックを受けました。私を初め、色々な相談事を親身になってした者、中には真剣に求愛した男性の方もいます……ほんと、ピエロですよね、複雑な気持ちになりました。その後、その女性は行方不明に、でもネット内ですから、その方がどこのどなたなのかまではわかっていません。そして、その方は、今日もまたどこかのSNSで同じことをしているのかもと思いますと、哀しいなと思います。

13/10/10 草愛やし美

yoshikiさん、そうなんです。これは現実に起こっているかもしれない話です。ただ、私達が気づいていないだけで……。

SNSに嵌って、借金地獄に陥った人もいると聞いています。好きになった方に、プレゼントとしてアイテムなどを購入したためです。嵌りすぎると、現実に戻れないことになるかもしれません。警告も含めてこの作品を書かせていただきました。
今も、不倫をしているとわかるカップルがいます。現実に会っているのは、その方々のマイページに行けば容易にわかります。二人だけの記念日と称して、デートした日を6年分に渡って自己紹介欄に書いているからです。主婦の私としてはあまりよい気分ではないですが、他人の私が余計なことですから、何も言えないなあと思います。この世はどうなっているのでしょう。

ほんとうにもしかしたら、私の存在もバーチャルなのかも……ですね。怖いです。コメントありがとうございました。

13/10/11 yumesamurai

光ケーブルだけが真実を知っている。 空想、仮想、幻想の世界と現実の世界が結びついている現代社会への警告のような物語ですね。その世界で楽しんでいる人もいるし、苦しんでいる人もいます。光ケーブルだけが真実を知っているのでしょう。 怖いけど、着眼点が現実にそくしていると思います、おもしろい作品です。

13/10/11 鮎風 遊

多分、あるのでしょう、こんな世界。
終焉は心中、それを仕掛ける男。
これ、サスペンスですね。

それでも摩緒は満足だったのかも。

13/10/13 猫兵器

草藍様

拝読致しました。
怖い話でした。
嘘をつき、嘘を吐かれた果ての、この結末。
この手のゲームは、水が合わなくてほとんど経験がありませんが、他のSNSも含めて、現実に起こりうる締め付けるような不安がありました。
気を付けないといけませんね。

13/10/14 クナリ

そこらへんでしょっちゅう起こっていることなのでしょうね、と思っていたら、身近で
そうしたことがあられましたでございまするか(何語だ)。
相手が見えないのだから自重しながら付き合おう、という意識を、”素敵な出会いへの
渇望”は容易に上回るのでしょうね。
それを利用するなんてのは、良心さえ無視できれば、容易いことなのでしょうね。
自分は年齢性別不詳で活動しているのですが、それでも丁寧な言葉づかいを
しているだけで「妙齢の女性だ」と決めつけられて、親しくもない男性(らしき人)から
ぶしつけになれなれしく接されることがあります。
いきなり恋愛相談に乗られたりとか(相談してないのにッ)。
作品を拝読して、今日び子供たちの世界でも脅威をふるっているという「情報の凶器性」
を改めて考えさせられました。
情報一つで、人の心も体も生活も、取り返しのつかないダメージを受けるのですからね…。


13/10/17 草愛やし美

yumeshibaiさん、コメントありがとうございます。

ゲームであれ、趣味の世界であれ、人それぞれが、SNSなどで、ネットを楽しむことができるのはとても良いことだと思うのですが、現実に色々な場面で、ネットがらみの犯罪まで起こっていることは、本当に、残念なことだと思います。

13/10/17 草愛やし美

鮎風遊さん、お読みくださりコメントをありがとうございます。

現実にあると仮定しました。ネットでは自殺仲間を求めることなどニュースで話題になっていますので、たぶん仮想ではないかと思います。
実はこの作品を、自分では、ラストをサスペンス風に仕上げてみたつもりでしたので、コメントとても嬉しいです、ありがとうございました。

13/10/17 草愛やし美

猫兵器さん、お読みくださりコメントまでいただき本当に嬉しいです、ありがとうございます。

この手のゲーム、私もあまり経験はありません。一度、無料の言葉に惹かれやってみましたが、より一層のスキル習得のためには、課金しなければ進めないことに、気づき深入りしないでやめました。その折りに、そこで聞きかじった噂をもとにして書きました。
SNSには、様々な罠があるかもしれませんので、注意しなければと思います。小中学生さんなど子供さんがやっているというを、ニュースなどで聞きますと、恐いということも教えないといけないのではと思いますね。


13/10/17 草愛やし美

猫兵器さん、お読みくださりコメントまでいただき本当に嬉しいです、ありがとうございます。

この手のゲーム、私もあまり経験はありません。一度、無料の言葉に惹かれやってみましたが、より一層のスキル習得のためには、課金しなければ進めないことに、気づき深入りしないでやめました。その折りに、そこで聞きかじった噂をもとにして書きました。
SNSには、様々な罠があるかもしれませんので、注意しなければと思います。小中学生さんなど子供さんがやっているというを、ニュースなどで聞きますと、恐いということも教えないといけないのではと思いますね。


13/10/17 草愛やし美

クナリさん、お読みくださり感謝しています。

ご丁寧な時代風味?のお言葉に思わず笑みが毀れまするのことにて…苦笑。

クナリさんにも、そんなご経験が。私は以前、某サイトのHNで、愛の人の意で使っています言語のため、見知らぬ男の方から交際を迫っているのかと勘違いされましたこと多々ありました。違うと申せば、どうしてそのようなHNをつけているのだと必ず聞いてきます。今は、事情を説明するのも面倒なので、3人ほどの親しい方以外は口をきかないようにしています。

若い人限定のサークルに入りませんか?なんて、ミニメールもよくきますね。無視することにしましたの、だって、答えればまたメルが来て、きりがないんですもの。年齢不詳だと、みんなどうして若いと想像してしまうのでしょうね。笑 でも、反対に、これは怖いかもしれないと感じますね。若いと偽り、近づく悪魔だっているやもしれませんから。お互い、注意しないといけません。
クナリさんのおっしゃるように、子供さんたちの危機などもあり、そういった意味合いをこめてこの話を書かせていただきました。
コメント嬉しかったです、本当にありがとうございました。

13/10/20 ドーナツ

拝読しました。。これはこわい。
怪談話の怖さじゃなくて、ものすごく現実にもありえそうなストーリー展開で、ひやりとします。

バーチャル空間て相手が見えないだけに、どんどん自分の中で自分や相手の理想像を膨らませすぎてしまうこともあるように思います。なんというか、その世界のヒーローになるというか、結局は架空の世界のに、現実とこんがらがっちゃうというか。

出会い系で殺人とか 最近多いですが、そういう事件のことを考えると、このお話、ますます、リアルに響いてきます。
バーチャル世界も 恋愛も、はまりこみすぎると怖いですね。

13/10/29 草愛やし美

ドーナツさん、お読みくださいましてコメント、書く身の大変な励みに繋がっていますありがとうございます。

一時、ネットで誘い合わせ練炭自殺というニュースが流れました。あの事件は、顕著に媒体がネットだとわかるものでしたが、初めて聞いた頃にまだ、私は、ネットを経験していませんでしたので、非常に驚いた記憶があります。でも、水面下でこういった怖いことが起こっていて知らないだけということになっているかもしれませんね。本当、事実にまさる怖いものはないのかも……。

13/10/29 草愛やし美

凪沙薫さん、コメント嬉しいですありがとうございます。

凪沙さんがおっしゃるように、ネットゲームは嵌ります。そこにいると、仮想の国なのに、現実のように思えてくるのは、やっていない人にとっては、到底信じられないような不思議なことだと思います。
でも、アバターの自分を見て、着替えたりするのはとても楽しいですし、ゲーム上で違うことができることはやめられません。気が付くと大枚使っていたなんて……経験ありますので、嵌ると予感されている凪沙さんには、決して、なさらないで下さいとお伝えしておきます。

ヽ(;´Д`)ノあちゃ~、コメント返しが、どこかの宗教家のようになってますね。苦笑 

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