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棚丘えりんさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘

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2時22分

13/10/09 コンテスト(テーマ):第四十一回 時空モノガタリ文学賞【 恋愛 】 コメント:0件 棚丘えりん 閲覧数:1072

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 2時22分。

 またお前なのか。時計を見てから心の中で呟く。バーナム効果と言い聞かせても、その頻度の高さには嫌気が差してくる。

 眠れないんだ。今夜も。

 君を好きになってから、何度眠れない夜を過ごしただろうか。想いを伝え、付き合い始めてからもこれは変わらない。僕の頭には、いつも君がいる。
 別に死に別れた訳でもなければ、遠距離恋愛中という訳でもない。身分違いの恋でもなければ、泥沼の三角関係でもない。僕は君を心から愛しているし、君も多少は僕を愛してくれているだろう。傍から見れば、僕達はただの幸せな恋人同士だ。

 それでも、何度も眠れない夜を過ごすのは君のせいなんだ。君はいつも凛としていて、先輩である僕を叱ってくれるね。それでいて根は優しいから、いつも僕を気遣ってくれるね。好きなように生きながら、優しさも持ち合わせた君に僕は恋をした。
 それでも、何度も眠れない夜を過ごすのは君のせいなんだ。君は強気なくせにすぐ体調を崩すし、僕の心配を独り占めするね。その上肝心なところで鈍感なものだから、いつも僕は眠れないんだ。

 君は、僕の気持ちが解るだろうか?体調を崩した君を心配して、デートを取りやめる僕の気持ちが。今日は早く寝なさい。なんて言っているけど、その日僕は眠れないんだ。
 君は、僕の気持ちが解るだろうか?学校で、部活で、道で、君と会っても埋められない隙間がある事を。誰も何も介入できない、二人だけの時間に飢える僕の気持ちが。今日は会えて嬉しかったよ。その気持ちは本当なんだ。それでも、その日僕は眠れないんだ。
 君は、僕の気持ちが解るだろうか?他の恋人達が周りも気にせず振る舞う中で、あくまで、常識ある恋人同士であろうと振る舞う僕の気持ちが。今、目の前にいる人や世界を大切にするべきだ。なんて言いながら、本当は二人きりの世界に入りたい。そう思っている僕の気持ちが。それでもやっぱり、強がってしまうんだ。そしてやっぱり、その日僕は眠れないんだ。

 君と僕が、もう三週間も会っていない。そう言ったら、皆は驚き、嘘だと言うだろうか。君は頭がいいから、すぐに気付くだろうね。そして、僕に謝りに来るだろう。でも僕は、そんな君は見たくないんだ。皆の中で、この三週間君と会ってきた僕が、外面の僕だったって、君はきっと気付いているんだろう。二人きりの時だけの、本当の君への接し方。見栄も強がりも無い、心の底から安心した、僕の言葉が聞こえてこない事に、君はきっと気付いているんだろう。それでも君は鈍感だから、気付いた事に気付いていないんだろう。心のどこかで感じていても、その正体は掴めていないんじゃないのかな。だから僕は、何も言わないんだ。君に少しでも罪悪感を感じさせるくらいなら、僕は黙って待とう。それでも、それでもやっぱり今夜も眠れないんだ。

 こんな事で悩める僕は、きっと幸せなんだろう。それでも、いつかこの幸せが逃げていくんじゃないかって、いつもびくびく怯えているんだ。君を失ったら、僕はどう生きていけばいい。君に出会うまでの人生を、どう生きてきたかは忘れてしまったよ。もし思い出せたとしても、君と出会えた事には劣るだろう。君と出会えた幸せは、いつか君を失う哀しみに変わるだろう。僕は強い人ではないものだから、笑顔で失う事なんてできないんだ。そう思うと、やっぱり今夜も眠れないんだ。

 君は、こんな僕を重いと思うかな。女々しいと思うかな。君はきっと、そんな僕を包むだろう。だから僕は、君には言わないんだ。君の心に重りを増やすくらいなら、僕は黙って笑顔を向けよう。それでも、それでもやっぱり今夜も眠れないんだ。

 早く朝がきてくれと、早く君の笑顔を見せてくれと、ただただ祈りつつ、今夜も僕は眠れないんだ。


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