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三ツ矢ちかさん

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ねじれ

13/10/08 コンテスト(テーマ):第四十一回 時空モノガタリ文学賞【 恋愛 】 コメント:1件 三ツ矢ちか 閲覧数:1104

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 琢郎おまえはなにもわかってない。
 ほとんど毎日のように「煙草くれ」と言ってくるおかげで二倍とは言わないまでも以前より煙草代が増えていること、銭湯に行く金が無いときにおまえが家にきて風呂を借りて行くたびに母ちゃんに変な目で見られているのを我慢していること、二ヶ月前に付き合い始めたらしい彼女とつい最近別れてそれをおれに報告してきたとき「またかよ」とか言いながら興味ないふりをしていたけれど、本当は琢郎がまた戻ってきてくれたことが嬉しくて心の中でガッツポーズをしていたこととかいろいろと。
 琢郎おまえは鈍感すぎる。
 だから彼女ができてもすぐに別れることになるんだ。女の子が「なにか変わったと思わない?」と聞いてきたときはだいたい髪型の話だ。おれはおまえにそう教えてやったじゃないか。なんで「梅雨明けたよね」と答えたんだ。その答えを聞いたときの彼女の顔は、体にいいからと言いくるめられて苦いお茶を飲まされたようななんともいえない表情だったことをおれははっきりと覚えている。
 琢郎おまえは中学のときからそうだ。
 誕生日がきても学年が変わっても成人を迎えた今になっても一向に成長しない。身長だけはいつの間にかおれより三センチ高くなったとはいえ、見た目にはそこまで変わらないと言ってもいい。問題は内面の成長だ。少なくともおれはそう思う。話を戻そう。中学のときのおまえは悔しいがモテた。すごくモテた。だけども誰一人として三ヶ月以上付き合いが持つ子はいなかったが、それでもおまえを好きだと言う子はなぜか減らなかった。中学三年間おまえがそんな調子だったように、おれも三年間ずっと相談所のように扱われてきたことを、おまえは知らないだろう。「琢朗くんの親友でしょ?」とか「そういう話するんじゃないの?」とか、女子がおれに話しかけてくる内容といったら決まっておまえのことだった。そういった質問の数々におれがなんと答えていたか、おまえは知らないだろうけど。
 琢朗おまえは世間に誤解されている。
 顔がいいのは百歩譲って認めるとしても、勉強もできてスポーツ万能で歌も上手くて料理もできるなんて話をおれが高校二年生のときに後輩の女の子から聞いたときにはバカバカしくて大笑いしてしまった。どこから出た噂だか知らないが、過大評価されすぎるおまえをその時はじめて少しだけかわいそうだと思った。たとえば勉強ができるということに関してはおれのおかげと言っても過言ではない。おまえはやればできるのにやらないという典型的なサボリ人間で、テスト前になると決まっておれにノートを見せてくれとせがんできた。口では面倒だと言っていたが、おまえの頼みなら聞かないわけにもいかない。おまえはそこまでわかっていておれに物を頼んでくるからずるい人間だ。授業はまともに受けないくせにテストだけは好成績だったおまえは『努力を人に見せない天才』として評判、いや、誤解をされた。本当のことを知っているのは全教科のノートを貸して一夜漬けでおまえの頭に叩き込んでやった、おれだけだ。
 琢朗おまえはおれのことをなにもわかってない。
 中学からのそこそこ長い付き合いになるけれど、一向に気づく気配がない。だけど、デリカシーがなくて鈍感で、四六時中女の子のことを考えていて、理不尽なことがあってもゲラゲラと笑い飛ばして、悔しいときは素直に泣いて、納得のいかないことにはとことん怒りをぶちまけるようなめんどくさいおまえにおれの気持ちがわかってたまるか、最近はそう思う。そう思うようにしている。
 
 だから琢朗、おまえは気がつかないでいてくれ。
 おれとおまえはなんでも言い合える気の合う親友だ。それでいい。おれはそれ以上なにも望まないから、なるべく長くこのままでいられるように、おまえはなにも知らないでいてくれ。知っても知らないふりをしてくれ。おれの気持ちがおまえにバレたとして、おれはそれを知らないふりできる自信がこれっぽっちもない。
 だけど琢朗、ひとつだけ言わせてくれ。
 おれはやっぱりおまえが好きで、これじゃ失恋する前から失恋してて、ぐちゃぐちゃにねじれてる気持ちが苦しくて、今すごく泣きたいんだ。


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