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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
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オーラ石

13/10/07 コンテスト(テーマ):第四十回 時空モノガタリ文学賞【 アイドル 】 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1390

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 イザナミには生傷が絶えない。暴れているような踊りとハイトーンの歌声に世間の連中は、キャーキャーと騒ぐ。溜息をついたり泣いたり大騒ぎだ、挙句の果てに興奮で失神する奴まで現れる始末だ。「アイドルイザナミは危険だ」と言われれば言われるほど、人気は上がっていく。俺はそれを予測できていた。
「オーラ石効果はすげぇよ、イザナミ」
 彼女はイザナミ、日本を創った神話の女神名の通り、日本の芸能界を創り変えるために、太古からやってきたという設定だ。俺がプロデユースして育てた女。全てが俺の思い通りだった。そのはずだった……だが、思わぬことが起こった。

 オーラ石、俺がその存在を知ったのは古書店だった。亡くなった祖父の古本を売りに行った俺に、店主が囁やいた──「あんたにオーラ石のことを教えてやろう。代りにこの本をわしに買わせてくれ。あんた音楽プロデュースが夢だろう、このオーラ石を身につければオーラが放たれるってことだ。アイドルだってスターだって思い通りさ」 高価な初版本欲しさの店主に巧みに話しかけられ、話す気もない自分の夢をしゃべっていた。古書にあったオーラ石の記述、それは──芸能神を祀る賽の加原の山奥に建つ賽神神社に翁羅石の大岩有り、神社より丑の刻方角に進めというもの。こんな眉唾話全く信じられないという思いとは裏腹に、どうしようもできないどん詰まりの夢を叶える誘惑に駆られている俺がいた。

 賽の加原にある廃墟のような神社は、神がいるとは思えないほど荒れ果てていた。それでも僅かばかりの賽銭を入れ参った。店主の話に従い祠の裏に廻ってみる。雑草に覆われた獣道を奥へ分け入る「チッ! 遭難でもしそうだぜ」と吐き捨てるように言った俺の視界に、聳えるような大岩が入った。奇妙な興奮を覚えた俺は、その岩に引き寄せられるように草藪に入り込んでいった。大岩には古びた注連縄がかかっている。薄汚れた紙垂に交じって何か光るものが見えた。近寄るとそれは鈍く光る赤い石だった。その石に触れたとたん、皺枯れた声が響いた「翁羅石を持ちし者にオウラが放たれるであろう。その輝きは命そのものじゃ、ヒヒヒ」いつの間にか、気味悪い笑いを浮かべた白髪の老婆が背後に立っていた。一瞬で老婆の姿は掻き消え、俺の手にはオーラ石が握らされていた。
 
 イザナミの人気は高まり、今や芸能界のトップアイドルとして君臨していた。だが、人気が高まるに連れイザナミの様子がおかしくなった。四六時中、気味の悪い笑い声が聞こえて来て発狂しそうだと訴え出した。

「あの石だ!」 
 海外版の写真集を見ていた俺は驚愕した。有名アイドル達の写真本。そのタイトルは『Never see you again──二度と逢えないアイドル達』だ。若くして逝ったアイドルの追悼写真集。その中に、あの石を身につけた数人のアイドルを見つけたのだ。石は様々な使われ方をしていたが、何とも言えない真紅色が同じものと示唆している。それはまるで血の色だった。死ぬ前日に撮られたという写真の石は、どす黒い赤色に変わっている。彼らの死因は、自殺・殺害・麻薬中毒・事故・原因不明の病・発狂など。俺は、とんでもない物に手を出してしまったのだ。
「イザナミが危ない!」 狂ったように叫び俺は楽屋へ急いだ。ライブのため、楽屋でイザナミは体を横たえ休んでいた。最近は疲れが酷く一曲歌っては休むという状態が続いている。ライブは、レイザー光線や、バックダンサーの踊り、巨大液晶画面演出で誤魔化し続けてきた。だが、それも限界だった、イザナミはオーラ石の効果をあまりにも速く吸収してしまったに違いない。俺は、イザナミの胸に輝く石を見た。石はもはやどす黒い赤味を蓄えてきている。
「この石のせいだ。オーラ石、こいつはお前の命を喰って輝いているのだ。クソ!」
俺は首飾りを引き千切ろうとした。
「史朗、何てことするのよ」
「イザナミ、アイドルにしてくれるオーラは貰えるが、その代わりにこの石はお前の命を奪うんだ。早く外さなければ」
「嫌、外したくない。私、死んでもアイドルでいたいの。お願い史朗、私からオーラ石を奪わないで!」
「死んでもアイドルだって、そんな馬鹿なことあるか。頼む、お前が大事だ。俺、俺のために生きてくれ」
「でもアイドルを育てることが、史郎の夢でしょ……」
「何言っているんだ、アイドルなんか糞食らえ、俺にはお前の方が大切なんだ!」

 イザナミの胸からオーラ石を外した俺は、賽神神社へと急いだ。大岩の前に立った俺の耳に不気味なあの老婆の声が響いた。
「アイドルなんてそう簡単に成れるもんではないぞ、きっとお前は後悔するぞ」
「後悔なんかしない、俺は俺の大切なものを守る。絶対お前にイザナミは渡さない。自分の夢は自分の力で叶えてみせる!」
 俺は、力いっぱい大岩にオーラ石を投げつけた。


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このストーリーに関するコメント

13/10/07 yoshiki

読ませていただきました。

なんかこう教訓的ともいえるお話で、メリットとリスクと言いましょうか

アイドルは人知れず苦労しているのだと思いますし、明と暗が巧みに描かれていたと思います。オーラ石とは面白い発想でした(^v^)

13/10/07 草愛やし美

お断り:この話は全て草藍の創作によるフィクションです。

作中に出てきます名刺などは、実在の地名、人物、団体、事件などとはいっさい関係ありません。また、イメージとして使わせていただきました画像類は、実在する神社のものをお借りしていますが、お話とは一切関係ありません。

13/10/08 そらの珊瑚

草藍さん、拝読しました。

アイドルはプロデュース力がどれだけあるかにかかっているものかもしれませんが、オーラ石は最強の味方ですね。
けれどそれが命と引き換えという皮肉。
これからは何にも頼らず二人だけの力で、頑張っていく姿が浮かびました。

13/10/08 murakami

アイドルを「イザナミ」と命名するあたりが、さすがですね。

二人が思いあっている仲でよかったです。

13/10/09 泡沫恋歌

草藍さん、拝読しました。

アイドルと神話のコラボが奇想天外で発想がユニークです!

歴代のアイドルたちは「オーラ石」を持っていたのでしょうか?
輝くばかりの光を放って、消えて逝ったアイドルたちには
そんな神話も有りそうですね。

最後まで、面白く読ませて頂きました。

13/10/09 草愛やし美

yoshikiさん、コメントありがとうございます。

教訓的ですか、そうですね。何かを得ると失う物もあるでしょうか……。この話は三年前に、長編で書こうとアイディア持ってまして、かなり書いていたのですが、まとまらず、筆を休めていた作品です。今回、アイドルのテーマでしたんので、どうしても完結させたくて頑張りました。コメント励みになりましたありがとうございます。

13/10/09 草愛やし美

そらの珊瑚さん、いつも読みにきてくださり感謝しています。

アイドルはその人についたプロデュース次第とよく聞きますね。特に最近のAKBや、一昔前のおにゃんこクラブやモームスなどその典型ではないかと考えられます。彼は、苦労を共にしてきた彼女を選択しました。できれば、よい結果だけが残ればと祈ります。コメントありがとうございました。

13/10/09 草愛やし美

村上さん、来て下さったのですねうれしいです。

アイドルですが、設定が素敵かなあ〜なんて考えて名づけました。名前に注目して下さり、お褒め下さってとてもうれしいです。コメントありがとうございました。

13/10/09 草愛やし美

泡沫恋歌さん、コメントをありがとうございます。

名称は神話ですが、この話はいわゆる今流行りのパワースポットから思いついた話です。そんなところにこういうちょっぴり怖い霊に満ちた不思議なものがあるって設定がいいかなって思って書きました。
この話は、本当は、長くて収拾がつかなくなっていたのを今回時空さんのテーマのお蔭で推敲してみて一応の完結を迎えることができ、少しだけですが、自分の自信に繋がりました。

13/10/11 yumesamurai

アイドル〜神話〜パワースポット〜オーラ石〜愛情物語ですネ? いつも発想がユニークで、シナリオを上手につないでいるのが、楽しいです。おもしろく、素敵な作品です。

13/10/11 鮎風 遊

神がかった、ミステリアスな話しで、面白かったです。

こんな石、一度みたいものです。
芸能神を祀る賽の加原の山奥----翁羅石の大岩有り、
----丑の刻方角に進め  のところが気に入りました。

13/10/20 ドーナツ

いつもながら、発想がおもしろい。アイドルを神話の世界にもってきたなんて さすがです。

名前もうふって笑わせてもらいました。「オーラ石」
いい名前です。

アイドルはそういう石 持ってたのかも なんて本当に信じてしまいそうですよ。

大岩に投げつけたオーラ石、その後 どうなったかななんて気になったりして。


表紙の真ん中の鳥居、そそられます。

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