yoshikiさん

面白い作品を知り、自分でも書いて見たくなって何年も経ちました。よろしくお願いします。 2010年 小説現代S&Sコーナーに初めて送った作品が掲載されました。作品名『幽霊の見える眼鏡』 とにかく面白いものが書いていけるといいなと思っています。 イラストはエアブラシと面相筆で昔描いたものです。

性別 男性
将来の夢 楽隠居
座右の銘 不可思議はつねに美しい、どのような不可思議も美しい、それどころか不可思議のほかに美しいものはない。アンドレブルトン

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13/10/02 コンテスト(テーマ):第四十一回 時空モノガタリ文学賞【 恋愛 】 コメント:3件 yoshiki 閲覧数:1344

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 水面に三日月が揺らいでいた。私は舟に乗ってとても緩やかな流れの河に身を任せていた。心地よい風が頬を撫でる。なんという落ち着いた心持ちであったろうか、岸辺に薄紫の勿忘草が咲いていた。その可憐さに心を打たれ、つい手を伸ばしたがそれは遠すぎて触れることが出来なかった。
 そこで初めてここがどこかと言う疑問が心に湧き上がった。憶えていないのだ。なにもかもだ。それなのに私の心はまったく焦りや、恐怖を感じなかった。それどころか妙に悟りきった余裕の様なものが心を包んでいた。私の他には誰もこの小さな船には乗っていないらしい。私はごろりと横になって満点の星々を仰いだ。感無量。そういうものが私を支配していた。もう少しで舟は向こう岸につきそうだ。
 そのとき水面にさざ波が立ち始め、それが次第に大きくなった。それに伴い風が強くなった。その風が瞬く間に暴風雨に変わった。突然の嵐である。さすがに驚いて私は起き上った。そしてふと、彩恵と言う名を心の隅に思い出した。実に不思議な感覚であった。すると急に妙な寂しさが心に巣食いはじめ、それは取り留めもなく波紋のように広がった。
 岸辺に見える大きな樹木が騒然として軋み、狂おしく枝葉をうねらせている。ついさっきまでの夢心地が一変して、とても切羽詰った思いが私に圧し掛かってきた。
 雷雨を伴う風が容赦なく吹き荒れていた。小さな船は激流に木の葉のように弄ばれ、あっけないほど簡単に転覆した。
 私は溺れて、もがいていた。すると水中に黒い影が出現し、その影が私の名を必死で呼んでいる。

  * *

 ベッドで目を覚ました私の前に彩恵がいた。とても懐かしい暖かい眼差しが私を凝視していた。そして傍の白衣の男が微笑んで言った。
「もう大丈夫です。本当に良かった。御主人は峠を越えられました。奇跡ですね」
 私はすべてを思い出していた。私は事故に遭い、そして……。私は彩恵を心から愛している。そして彩恵も私を。その愛が私をこの世に引き戻したのだ。

                      了


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このストーリーに関するコメント

13/10/03 泡沫恋歌

yoshikiさん、拝読しました。

夫婦の「絆」ですね。
この世に戻って来れて良かったです。

13/10/07 yoshiki

泡沫恋歌さん。コメントありがとうございました。

私にしては妙なひねりのないまっとうなお話でかなり照れました(*^_^*)

13/10/07 yoshiki

凪沙薫さん。コメントありがとうございました。

キチンと物語りがある、などといっていただきありがとうございます。

単純明瞭な話過ぎて、どうかななんて思っていました。

死後の世界はどうなのでしょうね。あのショーペンハウワーも死後の世界を信じていたと聞きます。

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