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ゆめさん

肩こりがあります。

性別 女性
将来の夢 私を思い出す人がみんな笑顔になるような人間になること
座右の銘 笑顔が一番!

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少年と鳩

13/09/29 コンテスト(テーマ):第十六回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 ゆめ 閲覧数:984

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豚肉を買ったけれど賞味期限が切れていた。
こんなことスーパーではありえない。
家に帰って気付いた私もありえない。

今の時代はハイテクの技術がどうのこうの・・。

とにかく、なけなしのお金を使い購入した豚肉、万が一おなかを壊しては元も子もない。いや、そういう問題でもないのかもしれないが。
すぐについさっきまで買い物に夢中になっていたのスーパーに豚肉の入ったパックだけを持って自転車をこいだ。

スーパーまでの道のりの途中、右手に少し広めの公園があるのは知っている。
もともと緑を見るのは好きだから、自転車をこぎながら当たり前のようにたくさんの自然をじっと見つめ、信号が変わるのを待つのはいつものことだ。

豚肉のパックだけを前かごに入れていつもの公園をいつものように通り過ぎようとしていたら、ふとブランコに少年が座っているのを見つけた。

小学生くらいの男の子であろう、楽しんでいるのか、楽しんでいないのか、はたまた何か事件でもあったのか?私にはわからなかった。

いつも通り過ぎていくおなじみの公園だが、すぐにその場に自転車を止めて少年の元へ行った。

少年は顔を上げてじっと私の目を見つめた。そのまま少年は口を開いた。

「さっきまで、あそこに鳩がいたのです」

振り返り、少年が指をさす場所を見た。公衆便所の横に水道の蛇口があるのは見えたが、私には鳩が見えなかった。

「鳩は、僕のせいでどこかへいってしまいました。」

なにがあったのか。

そう問いかける前に少年はまた口を開き話を続けた。

「今日の僕のおやつにと、母が砂糖をとかして飴を作ってくれました。
とても美味しかったので、鳩にも食べてほしかったのです」

少年はじっと私の目を見つめ、鳩について教えてくれている。

「僕は鳩が喜んでくれるだろうと思ったので、
僕が食べ終わって余った分の飴を家においてあったビニール袋につめこんで公園にもってきたんです。
母は特に何を言うわけでもなく、笑顔で見送ってくれたんです」

私は黙って少年の話に耳をかたむけることにした。

「公園についてすぐに飴をまいたら、すぐさまたくさんの鳩が集まってきました。
みんなで飴をつついている様子をみて、僕はとても嬉しく感じていました。
僕は友達ができたと思って、本当に、とてもとても嬉しかった」

そういい終えると少年は私から目をそらし、先ほど少年が指をさした場所に一瞬だけ目をやってうつむいた。

「その後、鳩はどこへ?」

「鳩は飴を綺麗さっぱりつついたら、すぐにみんなそろって飛んでいきました。」

「君は、何をそんなに悲しそうな顔をしているの?鳩は喜んでくれたのではないの?」
聞いていいのかわからなかったけど、とにかく聞くしか他はない。

「鳩が喜んでくれると思っていたのは、僕だけだったんだなぁ。そう思ったのは、僕がまいた飴を鳩が全て食べて、一斉にどこかへ行ってしまった時なんです。」

もう、会えないのかという悲しい顔をしているのは私でもすぐにわかった。
ただ、何故にそこまで鳩という生き物に固執をしているのかは今の私にはわかるわけもなかった。

たまたま、母が作ってくれたという飴を鳩にやっていた少年に、たまたま目が行っただけだったのだから当たり前の話だろう。

私は自転車のかごに豚肉が入っているという事を、ずっと頭に閉まっておくことにした。

何かの縁なのだろう、賞味期限が切れたあの豚肉も。


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