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つるばたさん

三十路にして小説を書き始めました。読んでやってください。

性別 男性
将来の夢 あたたかい家庭
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アイドル専門学校――無修正――

13/09/25 コンテスト(テーマ):第十七回 【 自由投稿スペース 】 コメント:0件 つるばた 閲覧数:1358

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 テレビでAKBの武道館ライブを初めて観た時、私は感動に震えた――アイドルになりたい――
 中央で可憐に踊る、不動のセンターあっちゃんの歌声、ダンス……その一挙一動に呼応するように揺れる3万人の群衆。ステージから眺める光景はどんなだろう……きっと海みたいなんだろうな。もし私がそこに立ったら……その想像は私を恍惚とさせた。
 弓道部の友達と一緒にカラオケにいって私は確信した。男の子達が「大塚愛のさくらんぼ歌ってくれよ」と言ったので歌ったら大絶賛された――すげーよ、超上手くない? カワイイ!――今度は「aikoのカブトムシ」をリクエストされた。バラードなのでゆっくりと、心をこめて歌い上げた。その時の男子達の顔! 私の歌声に聴き惚れて陶酔しているようだった。家に帰るとき胸の高鳴りを抑えることができなかった――私には才能があるんだ――
 私がスターになることは決まったようなものだが、ここで一つ問題がでてきた。私には「人脈」がない。有森祐子を見出した小出義雄監督しかり、マイクタイソンを育てたカス・ダマトしかり……才能はそれを見出す人によって世に出る。素晴しいダイヤの原石も磨かれなければただの石ころだ。不幸にも世に埋もれた才能は数えきれないだろう。そして私も――そう考えるとぞっとした。
 とりあえずスマホを出して、グーグルの検索ボックスに「アイドルになりたい」と入力してみた――『アイドル専門学校』――何これ?――『私達の目的は埋もれた才能を見出しトップアイドルに育てあげることです。君もスターになってみないか?』――これだ!
 翌日に調べた住所へ向かった。部活は仮病でさぼった。学校は貧乏長屋みたいなボロい建物だった。チャイムを鳴らして30秒くらいすると「うーい」と声がした。中年太りのおっさんがビール腹をゆさゆさ揺らしながら玄関から出てきた。頭は枯れた芝生みたいに禿げていて赤ら顔だった。近づくと酸っぱい匂いがした。
「あのう……」私を遮りおっさんが言った「君、アイドルになりたいだろう」
「……わかりますか」
「わからいでか! 私はこの道30年だぞ」私はビクッとした。
 おっさんはしばらく私をじっと見た後、ゆっくりと口を開いた「君には才能がある」
「本当ですか!」
「本当だ。私が言うんだから間違いない」――私の才能を一瞬で見抜いた。この人は凄い人なのかもしれない――
「君は磨けば必ず光る。しかし……アイドルは君が考えているほど甘くはない。アイドルはすべての人の憧れ、つまり希望そのものだ。君はいつ何どきもアイドルであり続けなければならない――その覚悟はあるか?」
「あります」私は即答した。アイドルは私の人生を懸けた夢だ。それが叶うならどんな困難も耐えてみせる。
「わかった。私の学校には入学試験がある。これから3つの課題をクリアしてもらう。その成績いかんにより、入学させるかどうか決める。いいね?」
 うなずくと隣の部屋に通された。
 部屋は六畳くらいの広さで、中央に大きな水槽が置いてあった。隣に山盛りの氷があった。用意された水着に着替えるよう言われた。
「第一の試験はリアクションだ。アイドルたるものカワイイ顔をしてすましているだけではダメだ。視聴者の心に焼きつくようなリアクションができなければ人気は出ない。設定はこうだ――君は新人アイドルで近日発売のグラビアの宣伝のために番組に呼ばれた。水槽の中の熱湯に耐えた時間だけ宣伝をすることが許される。いいね? よーい、エァクション!」
 私は水槽に飛び込んだ「あっつーい!」たまらず飛び出てぴょんぴょん跳ねた。
「コラー!」教官は怒鳴り声を上げ、竹刀で床を叩いた。
「3秒じゃ宣伝も何もできんじゃないか。最低10秒耐えるくらいの根性をみせろ! それになんだ今のリアクションは! 悲痛な顔で氷に突っ込みのたうち回りあわやポロリ……これくらいせんか!」
「すみません…」
「もういい、次」別の部屋に通された。
 次の部屋は前より広かった。中央に机が置いてあり、それを取り囲むように階段状になった舞台がある。
「次の試験はネタを振られたときの受け答えだ。『踊る!さんま御殿!』などを思い浮かべるとイメージしやすいだろう。中央の司会者がネタを振り、ひな壇芸人が場を盛り上げる。最近こうゆう番組は多いし、アイドルがひな壇に座ることも多い。私が司会者で話を振るから、君は面白いコメントを言う。じゃあ、ひな壇の一番上に座って……そう、よーい、エァクション!」
「最近はまってることある?」突然聞かれて私は答えに迷った「うーんと、うーんと……お料理です! 最近は料理教室に通って……」
「なんだぁそれは!」教官は怒り狂い、竹刀を振り回した。
「料理教室って……お見合いか! もっとぶっ飛んだことが言えんのか、例えば……えーっと、ピーマン集め! これくらいのことが言えんのかこの馬鹿チンが!」
「すみませーん……」
「もういい、次……次で最後だ。結果を出してくれよ」また別の部屋に通された。
 室内はうす暗くネオン街みたいな雰囲気だった。黒いレザーの長椅子がデンと置かれ、ガラスの机にウイスキーとグラスが置いてある。テレビで見たスナックみたいだった。
「最後の試験は、プロデューサーとのやりとりだ。アイドルたるもの仕事外のほうが実は重要だ。番組が終わればスタッフや共演者と打ち上げ〜とかはよくある。そこには当然プロデューサー、大御所など芸能界で力をもつ方も来る。そうゆう方々にいかに気に入られるか――それが次の仕事につながるのだ。じゃあそこに座って……よーい、エァクション!」
 教官が私の隣に座って手を握ってきた。
「未来ちゃ〜ん、今日のトーク良かったよ〜。こんな良い子いたんだねぇ…僕、知らなかったよ」
「ありがとうございます」私は笑顔で答えた。
「本当に良かったよ〜でね? 僕の力なら君をどうすることもできる。テレビ局に掛け合って月9に出してあげることもできるんだよ? だから……分かってるよね……」
 そう言いながら私の腰に腕をまわして体を密着させてきた。
「君しだいだよ? だから――」私の胸を揉みしだき始めた。
「ふざけんな! このエロオヤジ!」
 私はおっさんの顔面を思い切りぶん殴った。


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