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日向夏のまちさん

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プレート王国物語

13/09/16 コンテスト(テーマ):第三十九回 時空モノガタリ文学賞【 待つ人 】 コメント:0件 日向夏のまち 閲覧数:1016

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「ふははははは!この時を待っていたぞ我が宿敵よ!」
「あぁ、オレもさ。魔王。ずっとずっと、てめェを打ち倒し、乗り越える日を待っていた!」
「はっ!そう簡単に行くとでも思っているのか?貴様が、貴様の弱点を知り尽くしたこの儂に、勝てる訳が無かろうに……!」
「それはどうかな……今のオレには、心強い仲間と、この伝説の武器、トライデントがあるんだ!」
「なっ、それはっ!?」
「魔王、覚悟ッ!」
 言うやいなや、背後に控えていたドジっ子魔法使いのマヨが、一番に駆け出した。
「親の仇、とらせてもらいますっ!」
「愚かな娘よ……バグ!お前の出番だ!」
「御意」
 マヨの前に立ちはだかるのは、魔王唯一の臣下、バグ。マヨと同じ魔法使いで、マヨの両親を殺した、張本人。
「また、大切な物を失いに来たのか」
「違います。今度は……守りに来たんです!皆さん、手出しは必要ありません!どうか魔王を!」
 すると、対峙し、魔法を撃ち合う二人の間に、一本の矢が飛来する。
「我ながらけなげな妹だ……。だが兄としては、そういう訳にもいかないな」
 後を追う様に、マヨの兄、弓使いのケチャが加勢した。
「お兄様!?」
「なにも、親の仇を取りたいのはお前だけじゃない。一気に片付けるぞ」
「……はいっ!」
 マヨの背後から飛来する矢に、マヨは得意の火炎魔法を纏わせた。二人の力を合わせ――秘儀“オーロラソース”発動。
「っ!」
 バグは得意な氷魔法で半円状の障壁を張る。しかし、マヨの火炎魔法がその表面を舐め、溶かし、穴を開ける。未だ勢いを保つ矢がバグに迫り、その胸を、貫いた。
「あー……やっぱり、ロクな死に方は出来ないのか……。ごめんな、サラ。約束、守れなかっ、た……」
 サラとは、誰の事か。そして、バグの瞳から零れた透明な雫は、涙だったのか。
 確かめる前に、マヨの発生させた火炎球が、バグの体を焼き、灰に帰す。カランと乾いた音をたて、ただ一つそこに転がっていたのは、ロケットペンダント。俺はそれを拾い上げ、開いた。中には、セピア色に褪せた写真。写っている女性は、柔らかな、明るい笑みを浮かべている。
「そこに写っているのがサラだよ、勇者諸君。彼の――バグの妻だ」
 魔王がおもむろに口を開く。そして急に唇の端を吊り上げ、
「さて……残された彼女は、一体どんな気持ちだろうなぁ。魔法使いと、その兄よ。差し詰め、貴様らの事を夫の仇と憎むのではないかな?」
「っ!それは、確かに――」
「惑わされるなマヨ!……どんな事情であれ、バグの罪は許されるものじゃない。いつかは、報いを受ける事になった筈だ」
「くっ……ははははははっ!面白いな弓使い!貴様は何も知らないのだ!」
「?……」
 笑う魔王は告げる。
「バグはなぁ。儂に脅されていたのだよ。儂に従わなければ、サラの命は無いとな。そしてバグは、儂が命ずるままに殺し、破壊する、従順な人形となったのだ」
「って事は……!」
「そう、彼に罪は無いのだよ。受ける報いも、ある筈はない」
「そん、な……」
 マヨとケチャが崩れ落ちる。彼に罪が無いとすれば、自分はただの人殺し。そう、気付いてしまったのだろう。
 しかし、それをフォローするすべは無い。なぜならそれは紛れもない事実で、気休めの言葉すら、かける事は出来ないのだ。
「さぁ、勇者。そろそろ儂は待ち切れぬ。今宵の宴を、始めようではないか!」
 オレは、複雑な心境のまま、三又の槍、トライデントを構えた。

(中略)

「か、はっ……!」
 オレの突き出した槍が、深々と魔王の心臓を貫く。真っ赤な血飛沫で身を濡らしたオレに、魔王は言葉を掛けた。
「流石だな……勇者よ。貴様見事、この儂を乗り越えおった……!」
 魔王は何処か嬉しそうに笑って、そして、命を落とした。
 こうして世界には、平和が訪れた――』」

「ママのはなしながーい」
「ごめんねー。さ、裕君も、この勇者さんみたいに、好き嫌い乗り越えよっか!」
 とある家庭で。トマト魔王とその臣下ハンバーグを勇者がやっつける、“プレート王国物語〜トマト魔王の逆襲〜”という絵本が閉じられた。トマト嫌いな子供をトライデント(フォーク)を持つ勇者にして、トマト嫌いを克服してもらおうという趣旨の絵本はしかし、話がシリアス過ぎ、どちらかと言えば大人に人気があるという。特に、ハンバーグとその妻、サラダと、魔法使いマヨネーズと弓使いケチャップには可哀そうとの声が数多く寄せられた。
 絵本にあるまじき衝撃的すぎる内容が大反響を呼び、冬には、“プレート王国物語2〜ピーマン伯爵の陰謀〜”の出版が決まっているという。全国の大人がこの絵本の出版を待ち侘びており、予約も殺到しているのだとか。


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