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ゆえさん

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性別 女性
将来の夢
座右の銘 袖触れ合うも多少の縁

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アイドルの一コマ

13/09/10 コンテスト(テーマ):第四十回 時空モノガタリ文学賞【 アイドル 】 コメント:0件 ゆえ 閲覧数:1141

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「こんなに傍にいるのに、君には届かないの?
 手を伸ばせば届きそうなのに空回り。
 いつでも、君の笑顔をみたいのに、口を開けば憎まれ口。
 素直じゃないからイヤになる。でも今日は今日だけは本当の気持ちを素直に届けたい」


拍手と歓声の中、目が眩むほどの眩しい光を浴びながら微笑んだ。
遠くから「rikoちゃ〜ん」と叫ぶ声が聞こえる。そちらを向くと笑顔で手を振った。
歓声が一層大きくなった。
「ありがとうございました。rikoさんの新曲、「happy birthday」でした〜」と司会者の声を背にしてお辞儀をするとまだ鳴りやまない声を後にスタジオを出た。



「お疲れ様でした〜。」と通り過ぎるスタッフ達に声をかけられる。
「お疲れ様です。」と笑顔で返すと「riko、早く。雑誌の取材が今日はまだある!あと30分もないぞ!」と駆け足で寄ってくるマネージャー水野にせかされた。
「あれ?今日ってもう終わりじゃなかったでしたっけ?」と言うと水野の顔色が変わる。「・・・昨日、電話で俺言ったよね?」と少しピリッとした空気を出された。
こうなるといつもの説教コースだ。折角気持よく歌を歌ってきたのに、それは嫌。
「冗談です。」と返すと、局内の通路を駆け足で通る。
周りにはいつもTVの中でしか見ないような人、大道具を運んで大声を出しているスタッフ、若いADを叱るディレクター達・・いつも、この風景はおもちゃ箱のようだと思いながら、通り過ぎた。


TV局の中を速足で駆け抜けて、いつもの車の後部座席に飛び込む。
「ギリギリなんで急ぐぞ。雑誌の趣向しっかり掴んでおけよ。」と運転席から取材を受ける雑誌を投げられた。内容を読みながら、「なんで、こんな事しなきゃいけないだろ・・・」思わず本音が出た。その言葉を聞くや否や急ブレーキがかかった。
「うわっ!危な!何してんですか?水野さん!!」と前のめりになって叫ぶと明らかに水野は眉間に皺を寄せてrikoの方を向いた。

これは・・完璧に地雷を踏んだようだ・・・。普段は優しいだけに、本格的な地雷を踏むと怖い。
「あ〜、お前、それ言う?確かに、駅前で歌ってるお前を見て、デビューしようって急かしたのは俺だよ。でも、お前も最終的には俺に任せるって言ったろ?お前の歌が世間に共感されてる結果が現在の状況だよ。お前はもう駅前で一人で歌う事は無理なの。皆お前の事を知りたいの!世の中にはそこに行きたくても、無理なヤツなんてたっくさんいるの。お前はそいつらの前でも同じ事言える訳?」正論なだけにカチンと来た。
「私、確かに、任せるって言いましたよ?でも、最近こんなんばっかじゃないですか?取材取材って。私は歌を歌いたいんです。自分の納得いく歌を。でも、ニーズに合わないとか、求められてるのはそれじゃないって・・・。自分の納得いかない歌なんて、歌いたくない!!」ありったけの本音をぶつける。もう車の中は二人しかいないから取り繕う心配もしなくていい。水野さんの前でだけはいつも笑顔の似合うrikoじゃなくっていい。そんな私の心の叫びを水野さんはぶった切った。
「知るか。お前はもう自分の歌を楽しく歌って過ごすレベルじゃないんだよ。まぁそのモチベーションも大事だけどな。でも問題は出てくる。それに折り合いつけていかないと駄目なんだ。もう、趣味で好きな時に好きな歌だけ歌ってりゃぁいい訳じゃないんだ。仕事、それを生業として選んだんなら尚更だ。割りきれ。」と一気に言うと、前を向かれた。



エンジンがかかって、車は動き出す。
街の灯りが宝石のように輝いた。少し滲んでいるのは、自分の目が涙ぐんでいるからだった。悔しい。自分の甘さが。疲れてたまたま出したボヤキにここまで本気で怒られている状況が恥ずかしかった。水野さんが言う事もわかっている。でも、やりきれなくなる時に、少しだけぼやくのも駄目なの?確かに、デビューしてここまでメディアが取り上げてくれるのは嬉しいけど少しも自分を出せない世界なんて、辛い。インターネットで自分の全部が暴かれて。プライバシーも何もない・・・。どこに行くのも変装しないと追いかけられるなんて・・。声に出さないで不服な気分でいると
「お前さぁ、嬉しくない訳?ここまで各番組で取り上げられて、デビューシングルHITして・・・。TVつければ必ずお前の声、流れてんだぞ?ちっさい子供だって、お前のマネして歌ってる。この前まで駅前で一人でギター持って歌ってたら味わえない訳よ?わかる?まぁ、そんな我が儘いいたいなら、もっとてっぺん目指しな。さぁ、もうつくぞ。とっとと気分持ち直せ。rikoちゃん?」


最後の一言は完璧に挑戦的な笑いだった。
「絶対にてっぺんに行ってやるから・・。」
「上出来、ほら、行くぞ!」と水野の声を共に車のドアを開けた。



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