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yoshikiさん

面白い作品を知り、自分でも書いて見たくなって何年も経ちました。よろしくお願いします。 2010年 小説現代S&Sコーナーに初めて送った作品が掲載されました。作品名『幽霊の見える眼鏡』 とにかく面白いものが書いていけるといいなと思っています。 イラストはエアブラシと面相筆で昔描いたものです。

性別 男性
将来の夢 楽隠居
座右の銘 不可思議はつねに美しい、どのような不可思議も美しい、それどころか不可思議のほかに美しいものはない。アンドレブルトン

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決して読んではいけない物語

13/08/21 コンテスト(テーマ):第三十七回 時空モノガタリ文学賞【 神 】  コメント:7件 yoshiki 閲覧数:1588

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  Danger  危険 読むのは危険 警告いたします!!


 ――昨日から降り続いた雪は医療センターの中庭を埋め尽くして、陽光にひどく眩しく輝いていた。青年の横顔はとても悲しそうで見るに忍びないものがあった。
 里奈が白血病で医師から死の宣告を受けたとき和也は泣き崩れた。目の前の美しい寝顔にはもはや生気は感じられず、瑞々しかった肌は紫色に変色していた。やりきれない思い。そして走馬灯のように蘇える里奈との掛け替えのない遠い思い出。
 二人は幼馴染で同じ小学校に通った。中学高校は別であったが、大学の同じ学部で再開を遂げた。そこで両想いの恋が芽生えた。気心の知れた二人は来年挙式予定だったから和也は仕事さえ手につかず、里奈の傍らでずっと見守り続けていた。そこは集中治療室でありすでに里奈はこん睡状態で手の施しようもなかった。
 それは昨夜、深夜一時になろうとした時だった。不意に里奈の眼が開き弱々しい声音で彼女はこう言った。
「あたし死ぬのね……。わかるわ、仕方のない事なのね」
「……里奈」
「ありがとう。和也、残念だけどこうなる運命だったのね。あなたを心から愛していました。でもあたしのことは早く忘れて他にいい人を見つけてください」
「里奈―――っ!!」
 和也が叫んだ時には里奈は目を閉じていた。幻覚だったのだろうか、そんな訳がないのである。意識が戻るわけもなかった。彼女との熱い、幾つもの想い出が重なって、苦しい程に胸を締め付ける。
「ああ、神よ。こんな無慈悲な事ってありますか! 彼女が、そして僕がどんな悪い事をしたっていうのですか!!」
 ――彼は心の中で何度も絶叫した。

 あくる日になって里奈の命は風前のともし火であった。やがて夜になり和也はセンターのロビーで不吉な陰のある見知らぬ男を見かけた。男の顔は青白く黒い絹のマントを羽織っていた。まるで舞台役者のような格好である。不審に思い和也が恐々あなたは何者ですか? と尋ねるとその男は躊躇もせずに俺は死神だと答えた。
 恐れ慄いた和也だったが、さては彼女をあの世に連れ去ろうと言うのかと問いただすと、図星だと言う。死神が実在するとは和也にはにわかに信じられなかった。だがなんとか死神を説得して彼女を死の淵から救おうとしたが、死神は聞き入れない。狂気した和也はそれならばいっそ二人とも死なせて欲しいと死神に頼み込んだ。
 二人とも助けるか、二人とも殺すのか、二つに一つなのだと彼は必死で死神に説明した。二人は深く愛し合っていて永遠に一心同体で、決してして離れられないのだと……。死神の眼は黄泉の国の泉のように暗い藍色を映すようであった。

 ――死神は陰気に言う。
「今回死亡する予定は確実に一人だから、二人とも助ける事も、二人とも殺すことも出来ないのだ。予定通り彼女は今夜向こうの国へつれて行く」
「ですが里奈をどうか助けていただきたいのです。どうあっても」
「ならん」
「僕に出来る事ならなんでもいたしますから……」
 和也はがっくりと膝をついて懇願した。縋るようにぽとぽとと涙がこぼれる。
「どうしてもだめなら僕は悪魔に魂を売り渡しますよ……」
「悪魔にだと」
「ええ、僕は悪魔になってあんたに復讐する。悪魔教の経典を僕は密かに持っているんです。僕は悪魔を呼び出し自ら悪魔になってあんたに復讐する」
「なに、それは逆恨みじゃないか。厄介な奴だな。おまえ、本気か?」
「ええ、本気です」
 死神は実に嫌な顔をして天を仰いだ。考えている。
「うむ。仕方あるまい… では彼女の代わりに別の人間を連れ去ろうか……」
「僕ですか?」
「いやお前は性質がわるい。いいか良くきけ、俺は十六次元の世界を行き来してそれぞれの世界から人々を黄泉の国に案内する。今いるこの世界とは別の世界だ。わかるか」
「さっぱり」
「まあいい。俺がつれて行きたいのは別の次元の人間だ。ちょうどその筋からそういう要請もあったところだ。いいかこの世界を覗く人間の世界がある。異次元だ。今もその世界の人間は我々を見ておるぞ!」
「この世界を覗く人間の世界ですか? なんだかさっぱりわかりません」
「わからなかくても良い。その世界から今夜一人逝ってもらう。よいか?」
「里奈さえ死ななければ何でもいいです」
「真相を知ったらその世界の者がおまえを恨むかもしれんぞ!」
「構いません!」
「酷いね、おまえ」

 しかし和也の為にとんでもないことになったものだ。本当にとんでもない。和也は彼女の身代わりに死のうなんてそうは思わなかったのだ……。
 
 というわけで今夜黄泉の国に召されるのは、そこにいる、あ・な・たなのです。


 ――そう。あ・な・た。


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このストーリーに関するコメント

13/08/21 泡沫恋歌

ぎゃえぇぇぇ――――――!!!

ひぃぃ〜〜〜つい、読んじゃったよ(; ̄□ ̄A アセアセ
私にはまだやり残したことがあります。
どうか、ご勘弁ください(;>△<;)

死神様――!!
代りに冷蔵庫に隠してあるシュークリームあげるから((゙(人ω‐;)゙))
それで無理なら、ハーゲンダッツのアイスも差し出します。

_| ̄|○スイマセン _| ̄|○))ユルシテクダサイ _|\○_ コノトオリデス

13/08/21 yoshiki

泡沫恋歌さん。素早いコメントありがとうございました。

このおきて破りのお話にお付き合い願えまして嬉しいです。

大好きなハーゲン三個で手を打ちましょう(死神より)(^v^)

13/08/22 草愛やし美

yoshikiさん、拝読……。

( ̄□ ̄;)ギョッどうしましょう。わ・わ・わたしなの?

最後のオチ、とても面白かったです。

13/08/22 クナリ

なんということ、今晩召されるということは、明日の自分はもう、今日まで生きてきた自分ではないのかもしれませんね…。

プロフィルの絵、変わりましたね。
エアブラシでこんなん描けるのですか、画力がおありでうらやましいです。

13/08/22 yoshiki

凪沙薫さん。コメントありがとうございました。

駄文までお褒めいただきまして恐縮であります。

けっきょくこれコメディなもので、死神の弱点を探しましょう、神様かも。

(^v^)ちゅうか、もうすでにおひとり、ご案内済みかも……。

13/08/22 yoshiki

草藍さん。コメントありがとうございます。

ご安心を、すでにもう…。いつもありがとうございます。(*^_^*)

13/08/22 yoshiki

クナリさん。コメントありがとうございました。

明日の自分はもう、今日まで生きてきた自分ではない……。おお、然り、人は毎日死んで、毎日生まれ変わっているのかもしれません。

リンゴの絵は実は画面が大きいのです。でないとエアブラシでは描けません。根気もいるので最近全然かいてません。クナリさんこそ、絵がお上手で
いつも気にしてみています。個性がうらやましいです(*^_^*)

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