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村瀬ひさりさん

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将来の夢 自分の写真集を出す
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失恋携帯

13/07/14 コンテスト(テーマ):第三十五回 時空モノガタリ文学賞【 無慈悲な人 】 コメント:0件 村瀬ひさり 閲覧数:1130

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木曜日の昼間の電車はかなり空いていた。

午前中で期末試験が終わった僕は、不意に隣町の本屋に行きたくなっていつもとは違う方向の電車に乗った。別にこれといって特別な理由もない、ただ、電車に乗って本屋に行きたかった。
明日は通常授業に戻る。月曜日から4日連続の試験。明日は部活動も再開。試験は終わった。最後の問題は解けなかった。化学のテストは惨敗。英語は何とかなる。数学はからっきし。現国はヤマがおお外れ。大谷たちはマックに行くといってた。誘われたけど行かなかった。前を歩いていたのは関根さん。僕より先に駅に向かっていった彼女は、試験が終わった今日どこに行くのかな。
つらつらと車窓から外を眺めながら無意味なことを考えている、その頭の上を「きゃーははっ」とけたたましい笑い声が通り過ぎた。
スマホ片手にスカート丈の短い女子高校生3人が大またで歩いていき、僕の斜め前の4人がけの席にボスンと音がする勢いで座った。胸のリボンがちらりと見えてウチの高校の制服だとわかる。うっすらと見覚えのある印象にもしかしたら同じ学年なのかな、と思うけれど3人ともそれが思い出せないほどみんな同じ格好、みんな同じ顔立ちだった。そしておんなじようなスマホを持ってぐるぐると指を動かしたかと思うと次に隣に見せ合ってまたきゃははと笑っている。
うるさいと思わないのかな。制服が同じって周りにばれないだろうか、と変なところに気が行って、ふと思った。

関根さんもこんな声を出して笑うんだろうか。

「だからぁ…」
「…って、おかしくない?」
「…ていうかー」

3人とも大きな声でしゃべっているのにどこにも主語が見つからない。おかしいと思う内容はなんだろう、と周りが思う隙を与えないできゃははきゃははと笑い声だけが合いの手ではいる、そんな感じ。
馬鹿ばっかりだよ。
声に出そうになってあわててそっぽを向く。
あんなの相手にしてたらどんな目にあうかわかったもんじゃない。耳の片隅に入ってくる声をどうやったら追い出せるか、今度はそれをつらつらと考えながら窓の外を見た。

「駅前のスタバ、場所取ってるって」

同じ格好1号がふーん、としきりにいいながら言った。

「マジ?あそこの奥?」

同じく2号はスマホ辛目を話さずに返事する。

「じゃなーい?ナントカっていう有名なデザイナーのソファがあるって言ってたもーん」

3号は、髪の毛をくるくると指に巻きつけては鏡を覗きながら言う。

「あそこ好きだよね、セキネちゃん」
「ねー」

知っている名前が出てきたのに驚いて顔を上げる。すい、と目線を動かしたら3人のうちの2号だか3号と目が合った。
にぃっ、と笑われた気がしてあわてて顔を下げた。同時に駅に到着したとアナウンスが入って電車のスピードがスローダウンする。
3人のきゃははと言う笑い声はいつのまにかくすくすとからかう様なものに変わり、グゥンと止まった電車のドアは開き戸のくせにばたんばたん音を立てて両側にあいた。
すでに立ち上がっていた3人は来たときと同じようにスマホ片手に大またで歩いて通り過ぎる、そう思っていた僕の前にそのうちの一人が立ち止まった。

「あんたも来る?」

えっ、と声も出ずにその顔を見上げると、ぶはっと噴出してよろけながら僕を指さした。

「ばぁか、ウッソだってーの」

きゃははは、と大笑いしながら電車を降りた3人はお互いの背中をたたきあいながら電車のほうを、すなわち僕を指差して笑い転げていた。あいつ本気にしてんだもーん、と語尾が無駄に長く延びた声が聞こえてきた。

セキネちゃんが関根さんだと決まったわけではない。だけど、僕はその日2つ先の駅前の本屋に行くことにした。


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