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赤居駒さん

小説家志望。アニメやゲームが好き。歴史にも興味はある。 Twitter[https://twitter.com/Koma_08_A]

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頬は朱に染まる

12/04/30 コンテスト(テーマ):第四回 時空モノガタリ文学賞【 傘 】 コメント:0件 赤居駒 閲覧数:1700

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 学校帰りに異変は起きた。学校を出た時は、雨など降っていなかったのだけれど、私が外を出た瞬間、しとしとと雨脚を次第に強めていった。忌々しい雨に舌打ちを打って、帰り道を馬のように駆けた。
 今日の天気予報では雨など降らないはずだったのに。所詮は予報なのかはたまた私が、お天道様に嫌われているのか。雨はせっかく整えた髪が乱れに乱れ、制服は泥と雨によって汚されていく。こんな事なら、折り畳みの傘を常備するべきだった。迂闊だった、こんな時は友達や恋人の傘の中に……そんな者は私には居なくて、客観的に見ても私は可哀想な女生徒だった。
 友達は小学校までで、中学校に入学すると同時に両親の都合で引っ越すことになり、そこまで培ってきたものは全てリセットされてしまった。携帯なんてものは買ってもらえず、ゲームも頭の良くなるものばかり。いや、ゲームなんてものをするから馬鹿になるのではないか? 矛盾をしているような……。
 鞄を雨避けにして、私は走り続ける。大通りまで来たら、コンビニで耐久性の低い傘を買ってしまおう。この時、財布を確認していれば……。案の定、コンビニに着いて傘を購入しようとレジへと並ぶが……財布を開いてびっくり。お金は足りなかった。確か数千円は入れておいたはずだが、抜き取られている気がする。また母さんか――。心で悟り、レジへと並ぶ列をそそくさと横へと抜けた。傘を元の位置へと戻して、意を決して店外へと出る。
 雨は憂鬱な気分にさせる程に強くなっていた。迎えを寄越してもらうにも、お金は使いたくないし、ここからなら走っていけば間に合うだろう。私は溜息をコンビニに置いていき、また鞄を頭上へと持つ。
 車の通りは激しくて、何度も水をぶっかけられる。畜生……私は舌打ちをもう一度打った。今日は最悪の日だ。神様は私に試練を与えているのか、それとも単純にこれは運命なのだろうか。
 今日は、詩人になってしまう私だ。そんな自分に苦笑して、やっと車の通りを抜ける。後はもう一本道だ。このまま、走っていけば……!
 私は突如転倒してしまう。周りに人は……居る。小学生が私を横目にケラケラと笑って、通り過ぎていく。他にも奥さんらしき人達も、
「可哀想に」
 ただそれだけを言い残して去って行く。同情するなら……いや、もう言うまい。
 心が泣いている気がする。堪えなければ、顔にも雨と同じように溢れ出てしまう。恥ずかしさと怒りで、私の顔は真っ赤になっている。起き上がりたくないような気持ちが、私を支配していく。
 上から降って来る雨が、私の背中を打ち付ける。ああ、もういいや。ここで死ねるなら、喜んで死のう。何とも恥ずかしい原因だけれど。
 背中を打ち付ける雨が、止む。晴れたのだろうか、顔を少しだけ上げるとそこには誰かの足がある。そのまま上へと上げていく、誰かが私に同情してくれているみたいだ。
「何やってんの?」
 上から声が降ってきて、聞いた事のない声だなと考えていると、無理矢理身体を起こされる。その場に正座する形になった私が見たのは、他校の制服を着た男子生徒だった。
「平気?」
 たった一言でも、私の耳を揺さぶる声に、感極まり堪えていた涙が溢れ出てきた。顔は不細工どころではないだろう、私はずっと泣き続けた。だんだんと、鳥の鳴き声が聞こえてきたなと思ったら、さっきまでとは打って変わって空は青くなっていた。
「あ、止んだ」
「……うん」
 傘を閉じた優しい人は、私は見てお日様のようにきらきらと輝く笑顔を放った。対照的に私の頬は夕日のように朱色に染まった。


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