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keiさん

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たんていはつらいよ

13/06/20 コンテスト(テーマ):第三十四回 時空モノガタリ文学賞【 探偵 】 コメント:3件 kei 閲覧数:1305

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「ついに追いつめたぞ!観念しやがれ! 」
 俺はじりじりと間合いを詰めながら、目標とにらみ合っていた。
 相手も闘志をむき出しにし、今にも襲い掛かってこようと戦闘態勢に入っている。
 相手との間に緊張感が走る。突如相手は身を翻し鋭い獲物で俺の顔に襲いかかった。
 「いってぇな!この野郎! 」
 激闘の末ようやく捕獲に成功した。
 
 「もー!クロったら心配したんだから。あっ、探偵さんありがとうございました」
 「いえいえ、こんな依頼朝飯前ですよ」
 「大丈夫ですか?顔中傷だらけですけど」
 「これは、その、猫を捕まえた後転んでしまって……」
 「それは大変でしたね。ひどい傷です。まるで動物にひっかかれたよう」
 「割れたガラスの上で転んだもので」
 「それは痛かったでしょう。これ報酬です。治療費の分上乗せしておきますね」
 「ありがたくいただきます」
依頼者はそのまま必死で逃げようと暴れる猫を抱きしめ帰って行った。
脱サラして探偵を始めて4カ月がたった。事務所の看板に記載されている通り「なんでもやります」を売りにしているが、いまだに月に2、3回の頻度でペット探しとペットの世話の依頼があるだけである。今はまだ退職金と貯金があるから何とか食いつなげているが、そろそろ何かしらの対策をとらななければ非常にまずい。実は探偵業に転職する際、母親の猛反対を押し切っている。
「どうして会社やめて探偵になんてなるのよ! 」
「うるせぇ!俺は第二のフィリップ・マーロウになるんだ!」
「誰よそれ!そんなわけのわからない人にならないでちょうだい」
「マーロウを馬鹿にするな! 」
のこのこ実家に帰るわけにはいかない。これはもはや、フィリップ・マーロウのメンツがかかっているのだ。こんなところで勝手にメンツをかけられているマーロウの気持ちを考える余裕すら俺には残ってないのである。
そんなことを考えながら事務所に到着した。すると事務所の前に主婦らしき女性が立っていた。
「あのー、ここの事務所の方ですか? 」
「ええ、なにかご依頼でしょうか? 」
「実はうちの子を探してほしいのですが」
「はぁ、ペットの捜索ですね。犬ですか猫ですか? 」
「いえ……。うちの子は人間の子供ですけど」
「えっ?いやっ、その……。失礼しました!! 」
「大丈夫です。それより今朝うちの子を誘拐したっていう電話があって」
「は?いま誘拐って言いましたか? 」
「ええ、警察に電話すれば命はないって言われて」
「それ俺に喋っても大丈夫なんですか? 」
「たぶん……。探偵には言うなって言われなかったし」
「それはだいぶ無茶な理屈だと思いますが……」
「やっぱり、警察に通報するべきですよね?」
「いえ、ちょっと待ってください」
これはむしろチャンスなのではないだろうか?誘拐事件を解決できたら今後もこの手の依頼が増えるのではないか?
「警察に連絡したのが犯人にばれたらお子さんの命が危険です。ここは俺に任せてください」
「ありがとうございます。どうかうちの子を助けてください」
「犯人からの要求はないのですか?」
「西公園に300万円もってこい、だそうです」
「用意できそうですか?」
「ええ、何とか集めました」
「時間の指定は?」
「15時に夫が持ってくるように言われたのですが、夫にはまだ話せてなくて」
「あと1時間しかない……。わかりました、俺が変わりに行きます」
「えっ……。大丈夫でしょうか?」
「任せておいてください」
これで俺も名探偵の仲間入りをするのだ。
西公園は適度な広さのあるいたって普通の公園で、子連れのグループが談笑していたり、老人が日光浴をしている。この中に誘拐犯がいるのだろうか?
「金は用意できたのか? 」
いつの間にか後ろに黒いコートに身を包みサングラスをかけた、いかにもな男が立っていた。
「ああ、それより金を渡せばそっちも無事に渡すんだな? 」
「心配するな、うちは取引については律儀なんだよ」
「この鞄に300万入っている」
「ああ、確かに受け取った。これが約束のブツだ」
そういって男は黒いアタッシュケースをこちらへよこした。
「は?何を言ってるんだ?子供はどこだ? 」
「お前こそ、何わけわかんねぇこと言ってんだ?あんまヤリすぎんなよ」
そう言って男は足早に去って行った。
「どうなってんだ?」
とりあえずアタッシュケースを開けてみると、そこには袋に小分けされた白い粉が入っていた。
「これってまさか……」
「はい、動かないで」
後ろにいつの間にか警察官が立っていた。
「えっ?違っ、俺のじゃない! 」
「詳しい話は署で聞きます」

「本当によかったんですか?息子さんに嘘の事件を依頼して」
「いいのよ、1度誘拐なんて大事件失敗させておけば、自分には探偵は無理だって思い知るでしょう」


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このストーリーに関するコメント

13/06/20 光石七

拝読しました。
素人探偵の受難、というところでしょうか。
お母さんの気持ちもわからなくはないですが……
楽しく読ませていただきました。

13/06/20 四島トイ

拝読しました。素人の感想をお許しください。
明るい作風で、すらすらと読むことができました。
以下、気になった点です。
@セリフ最後の感嘆符、疑問符の後ろにスペースがあるのは何故でしょうか? 一般的に、文中の感嘆符、疑問符にはスペースを加えるようなので、書き方を再考いただければと思います。
A主人公は退職して探偵をしているようですが、年齢が不詳です。読み始め、イメージしていたのは40代男性だったのですが、母親に転職を嘆かれる様子を見ると、もっと若いのかとも思えます。年齢が必ずしも必要というわけではありませんが、読者にとっては人物像を思い浮かべる材料のひとつですので、描写方法を御検討ください。
B後段、セリフ中心で情景描写がほとんど省かれているのが残念です。
C結末がわかりません。誘拐事件が偽装されたことはわかりますが、そもそも誘拐事件を「失敗」とする場面は、大抵、誘拐犯の逃亡やさらわれた人物の死亡等ではないでしょうか? 母親が「失敗」を意図していたとすると、それはどのような失敗だったのでしょうか? 単に交渉相手が来ないのであれば、婦人に騙された、というだけです。また、別取引が行われることを母親が知っていたと仮定すると、母親は息子を意図的に事件に巻き込み、なおかつ依頼主である婦人も巻き込み、そもそもにおいて、裏取引に精通する謎の人物、ということになってしまいます。
以上、拙いコメントではありますが御容赦ください。

13/06/21 鹿児川 晴太朗

拝読いたしました。
とても読み易く次々と訪れる展開を堪能しながら、最後の幕引きにアッと言わされました。こういうオチはちょっと予想していなかったので、ああなるほどと感心しました。しかし、後で誤解が解けるだろうとは言え、警察の方にとってはなかなかに迷惑な話ですね。笑

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