さたけのさん

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13/05/19 コンテスト(テーマ):第三十回 時空モノガタリ文学賞【新人】 コメント:4件 さたけの 閲覧数:1292

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 ある日、夏の昼下がり。木々の間から漏れる光に満ちた縁側で、半袖、半ズボンの二人が、向い合って話し合っている。足を投げ出し、つま先だけ入れた靴をぶらぶらしながら腰を捻っているのがサトル。廊下に姿勢よく正座し、二人の間に置かれたA4用紙を厚い眼鏡越しに見つめているのがユウジである。その紙には、トーナメント表らしきものが書かれていた。
「じゃあ、次の試合はあっちの小学校で行われるのか」
「そうみたい。前回僕たちホームで試合をやったから、組み合わせ的にはそうなるはず」
 負けられない試合が相手側のホームで行われるという情報を聞いて、少し機嫌が悪くなるサトルと、サトルの機嫌を冷静にとりもつユウジ。ユウジはサトルの1歳年上で、家が近かったこともあり幼稚園の頃からの幼馴染である。
「俺達の実力があってここまで勝ち上がってきたんだ。ホームとかアウェイとか関係ないよな。でも、隣町か…」
「ちょっと遠いのが気になるけど、自転車で行けなくもない距離だから、自転車で行く?」
「俺はそれでいいけど、確か、タケちゃんが自転車乗れないんじゃなかったか?」
「ああ、そういえば…」
 タケちゃんは、サトルたちチームメンバーの一人だ。体が細く、見るからに貧弱だ。自転車が乗れないと言われたときは多少驚いたが、その体つきを見れば、納得してしまうのだった。そんな彼の事も、サトルはちゃんと頭のなかに入っていて、かつ気を配っている。少々荒っぽく、大雑把に見えるが、実は冷静に仲間をみているサトルをユウジは信頼していた。
「よし、電車で行こう。駅からだとあんまり歩かなくて済むだろ」
「そうだね。駅から学校は近いみたいだし」
「よし、それできまり。道具はいつもどおりに持って行くとして、…新人の件、どうなった?」
「新人なら、カズヒロが迎えに行ったから、もうそろそろ来るんじゃないかな」
「その、新人さんを、連れてきたぜ」
 ふたりが後ろを振り向くと、畳部屋の客間にいつの間にかカズヒロが立っていた。そして横には見知らぬ人物。
「ひと通りのことはざっと説明したから」
「はじめまして。新人の、タカシです」
 サトルはさっとタカシを観察した。派手なチェックのシャツにハリの効いたスラックスを身につけた彼は、自分たちとは違う雰囲気を持っている。さらに、タカシの言葉遣いに違和感をもった。この辺のなまりは無く、テレビの中で見る東京の言葉のようだ。
 サトルは立ち上がって軽く会釈をした。
「はじめまして、俺がリーダーのサトル。こっちがユウジだ。でさ、突然だけど、出身はこっちじゃないでしょ?」
 タカシははっとした表情をして、それからふっと笑った。
「はい、やっぱり分かりますか。こっちには一ヶ月前に引っ越してきたばっかりで」
「やっぱりそうか。いや、アクセントが微妙に違うから、そうかと思ったんだ。あと、俺達はもう同じチームのメンバーだから、丁寧語とか、そういうのは無しにしようぜ、タカシ」
そう言ってサトルはタカシに手を伸ばした。タカシは握り返し、上下に降る。
「じゃあ、…よろしく、サトル」
「よし、これでメンバーが揃ったね」ユウジが嬉しそうにA4用紙の参加メンバー欄にタカシの名前を加える。
「ところで、タカシって経験者なんでしょ?噂によると結構上手って聞いたんだけど」ユウジが聞くと、タカシは少し表情を綻ばせて、
「うん。みんなの期待に添えられるかわからないけど、こっちに来る前もけっこうやってから、まあそれなりには出来ると思うよ」
「そういうやつほど、実はすごいんだよなー。カズヒロもそんなタイプだよな。いやーしかし、今度の練習が楽しみだ!」
 今まで人数が一人足りない状態で試合を行なっていた。一人ひとりの負担が増えるため、メンバーを募集していたのだが、この近辺はもともと人が少なく、やっとのことで人を見つけても、すでにどこかのチームに入った後だった。今回のトーナメントにおいて、優勝まであと一試合というタイミングで新たなメンバーが増えるのは、頼もしいことだった。
「じゃあ、今度の練習についての予定を決めないと…」
「ちょっとあなたたちー!」
 後ろの方から明るい声が上がった。お世話係の南さんだ。まだ20代というのにこんな田舎で働いており、サトルたちもよくお世話になっている。
「新しくこちらにお越しになった方が行方不明なんですけどーもしかしてまた連れてきてませんかねー」
 完全にバレている。振り向くと、腕を組んだ南さんが仁王立ちしていた。
「やっぱりサトルさん達でしたか。いつもいつも…」
この老人ホームに新入りが来ると、今回と同じように毎度チームへの勧誘をしていた。何かにつけて断られ続けたが、それも今回で終わりだ。
「安心してください、南さん。もう最高のメンバーが揃いました」


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このストーリーに関するコメント

13/05/19 光石七

拝読しました。
少年たちのお話かと思いきや… オチが良かったです。

13/05/23 鹿児川 晴太朗

拝読いたしました。
完全に騙されました。小学生ぐらいの子供たちの青春物語かと思ったら、余生を過ごす方々の青春物語だったとは。しかし、ずっと微笑ましい気持ちで読んでいましたが、オチを読んでからさらに微笑ましい気持ちになりました。最後の試合、きっと勝てるような気がしました。

13/05/25 さたけの

光石七さん、鹿児島 晴太郎さん、コメントをありがとうございます。
少年たちの心を持ったご老人たちを表現するには、最大文字数が少なく、また自分の文章の拙さも相まって難しいものとなりましたが、「少年たち」と汲んでくださってよかったです。

13/05/25 さたけの

鹿児川 晴太朗さん、お名前を間違えてしまい、申し訳ないです

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