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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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漢字一文字の旅 連載3

13/05/13 コンテスト(テーマ):第八回 【 自由投稿スペース 】 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1973

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 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどをよろしくお願いします。


連載3  微 車 驫 欲 肉 恋
     片 暁 鳳 裏 粉 桜


3−(1) 【微】

 【微】、(かすか)と訓読みし、「わずか」なこと。
 その意味は、細い糸の端のように目立たないということらしい。

 しかし、どの程度のものかがわからない。
 だが、漢数字では「一」、「分」、「厘」、「毛」、「糸」、「忽」、【微】、「繊」、「沙」、「塵」……と小さくなる。
 その中の【微】は一〇〇万分の一のこと。ほとんどないに等しい。

 そして笑いにも微かなスマイルがある。それはモナリザの微笑。
 レオナルド・ダ・ヴィンチは、その一〇〇万分の一の微笑みをスフマートという技法で描いた。
 その口元辺りに輪郭を作らず、透明色で何度も何度も微かずつ上塗りをし、一〇〇万ドルの微笑を創り出したとされている。

 そして、その微笑を万人に贈るために、左右の瞳の見つめる方向を違えた。
 これにより、どこから見てもモナリザは、自分だけを見つめて微笑んでくれているのだと錯覚に陥る。

 そして御愛嬌にも……、左目頭に吹き出物まで作って。
 ナポレオンは浴室にモナリザを飾っていた。うっとりとしながらシャンプーしてたら、あっと手が滑り、泡が飛んだ。
 吹き出物はそのシミだとか。

 ナポレオンよ、お前はバカかと叫びたくもなるが、今のモナリザは、つまりレオナルド・ダ・ヴィンチとナポレオンの合作ということになるのかな?

 そんなモナリザ、たった一〇〇万分の一の微笑みと。
 プラス……吹き出物で、今でも万人に、永遠の微笑を贈ってくれているのだ。


3−(2) 【車】

 【車】、中国古代の戦争は、馬車で戦う車戦。二頭の馬がそれを引っ張ってた。
 【車】という字は、その車体に左右の両輪を付けた形を表しているとか。

 そして、現代の中国にもいろいろな【車】がある。ただ、日本と少し違うようだ。
 日本の自動車は汽車。汽車は火車で、自転車は自行車。愛車は私人車と言うらしい。

 少し外れるが、日本での愛人は中国では情人と言うらしい。
 ならば、愛車を「情車」と呼べば良いものを……、不思議だ。
 情と私人の間に、何か微妙な差があるのだろうか。

 そして、庶民が困る車が……「火の車」
 元は、生前悪事を犯した者をこれに乗せ、地獄へと運ぶ火の車のことだとか。今は、お金のやりくりに苦しむことを意味してる。

 そして、もう一つ嫌な車が……「口車」
 こんな車には乗りたくない。

 だが中国では、この「口車」という言葉がないようだ。
 多分、パクリと同様で、「口車」が一杯走っていて、日常的で当たり前。

 そのため、「口車」とういう概念が形成されてこなかったのかも知れないなあ。


3−(3) 【驫】

 【驫】、この字を大きくすれば、      

 「  馬
   馬馬 」

 これは「馬」を三つ使い、二段に積み上げた漢字。
 このような類の漢字は他にも多くある。
 その代表例が、「木」の積み上げ。
 まずは「木」を並べて「林」になり、そして「森」となる。

 同様に、「馬」を二つ並べて「騳」となる。
 これは(トク)と音読みし、馬が走る意味だとか。
 そして、「馬」を積み上げて【驫】となる。
 音読みで「ヒュウ」、訓読みで「とどろ」だそうだ。
 意味は、多くの馬が群を成し、その走る様。あるいは、その際に発せられてくる音だとされている。

 競馬場へ行けば、名馬たちが第四コーナーを回り、群を成して、目の前を駆け抜けて行く。
 その音が……【驫】

 それは「ドドドー」と聞こえるのだが、中国のピンインで行けば、「biao」あるいは「duo」。
 中国では、どうも「ビヤオー」とか、「ドゥオー」とかに聞こえているようだ。

 そして「馬」とくれば、当然その相棒は「鹿」。
 「鹿」にも積み上げ漢字があって、それを大きく書けば、

 「  鹿
   鹿鹿 」

 「ソ」と読み、粗いという意味らしい。

 そして、
 「  馬
   馬馬 」と

 「  鹿
   鹿鹿 」との恐怖の二連チャン合体。

 読みでいくと、(ヒュウソ)だろうか?

 しかし、これって一体どんな馬鹿なんだろうか?

 馬鹿は死ななきゃ治らない。
 「  馬   鹿
   馬馬  鹿鹿 」 は、三回死ななきゃ治らない。それくらい強烈なのかな?

 で、気付いてしまった。こんな造語を作って、一人悦に入ってるオヤジこそが……

 「  馬   鹿
   馬馬  鹿鹿 」

 三倍馬鹿の『ヒュウソ』そのものなんだと。


3−(4) 【欲】

 【欲】、この漢字は「谷」と「欠」の合体型。
 「谷」はハ型に流れる水が口(あな)に流れ込むさま、そして「欠」は身体をかがめた形。
 【欲】は、それらが合体し、心に穴が開き、腹がへって身体が屈み込んだ姿だとか。
 なんとなくわかる気がするが……、要は「ほしい」(I want)ということ。

 人には眼/耳/鼻/舌/身の五官がある。そして、それらにより認識できる色/声/香/味/触の五境がある。
 この五境、時として塵のように人の心を汚すことがある。そのためか五塵とも呼ばれている。

 そんな塵が積もって、心身から出てくるもの、それが仏教で教えている五欲だ。
 つまり財欲/色欲/飲食欲/名誉欲/睡眠欲の五つだそうだ。

 しかし、これらがなかなか厄介なもので、時には異常に肥大し、醜くなる。
 ならば、そんな【欲】、もうあっさり捨ててしまって、「無欲」がきっと一番心地よいのだろうと思う……が。

 やっぱりその前に、時節は秋、美味しいものが食べた〜い!


3−(5) 【肉】

 【肉】、切り取られた肉片の形だとか。
 うーん、なるほど……なんとなく、そんな形に見えるかな?
 そんな【肉】片を焼いて食べさせてくれるのが、今流行りの焼き肉店。カルビ/ロース/牛タン/ミノ/ホルモン等々、いろいろな肉片がある。

 しかし、そんな焼肉店、江戸時代の両国にもあった。「ももんじ屋」と呼ばれていたらしい。
 漢字では「百獣屋」と書く。
 なぜなら、農民が鉄砲で捕獲してきた猪や鹿、それに牛や馬、さらに犬に猿。まさになんでもありの百獣の焼き肉店だったとか。

 ただ当時は肉食が嫌われていた。そのためか、上手いこと考えたものだ。
 客寄せには、焼き肉を「薬喰い」と呼んだそうだ。
 そして猪肉を山鯨(やまくじら)、鹿肉を紅葉(もみじ)などと、風情あるメニューに変えたとか。

 そんな江戸時代の焼き肉店の「百獣屋」(ももんじ屋))、犬や猿は遠慮したいが、一度食べに行ってみたいものだ。


3−(6) 【恋】

 【恋】、この古い字は【戀】
 漢字の上の部位は「乱」(もつれる)と言う意味があり、心が乱れることらしい。

 そして、そんな【戀】、万葉集ではまた違った形でも詠われている。
 例えば、
 『葦垣の 外にも君が 寄り立たし 【弧悲】けれこそば 夢に見えけれ』

 恋は【弧悲】とも詠まれた。すなわち【恋】とは【弧悲】で、独り悲しく思うということらしい。
 しかし、最近の世間ではこんなことが囁かれている。
 「愛」は、漢字の真ん中に「心」があるから、それは「真心」。

 だが【恋】は、下に「心」があるから……。
 はい、それは……『下心』で〜す。

 うん、確かに、これに納得する紳士淑女、たくさんいるかもね。
 そんな下心一杯の【恋】、それは初恋から始まる。
 そして失恋したり、灼熱の恋をしたり、中には道ならぬ恋にまで頑張っちゃう人がいたりして、
 やがて【恋】は……【弧悲】になる。

 だが不思議なものだ。男も女も決して懲りないのだ。
 ならば風流に……都々逸でも。

 ♪〜♪ 【戀】という字を分析すれば
     「糸」し「糸」しと 「言」う「心」 ♪〜♪


3−(7) 【片】

 【片】、これは二つ揃ったものの一方の意味を表す。
 「片棒」、「片親」、そして「片田舎」。これほどまでに暗いイメージを与える漢字はない。
 そして、その中でも、どこまでも切ないものが……「片思い」

 この「片思い」は、万葉の時代には『片恋』と言われていたようだ。
 その『片恋』を、時は今から一千三百年前、天武天皇の皇子・舎人親王(とねりしんのう)は己の心情を詠んだ。

 『ますらをや 片恋せむと 嘆けども 醜(しこ)の ますらを なほ恋ひにけり』

 ここで言う「ますらを」は、今で言うイケメンのこと。
 そんな男が、簡単に言えば、自分はイケメンだけど、『片恋』をしてしまったと。 
 それで、みっともないことだが、やっぱり恋しく思ってしまうんだよなあと嘆いているのだ。

 若干自信過剰なところはあるが、さすがイケメン。これには返事がちゃんと返ってくる。
 相手は舎人娘子(とねりのをとめ)、乳母の娘で幼なじみ。

 『嘆きつつ ますらをの この恋ふれこそ 我が結ふ髪の 漬ひちてぬれけれ』

 イケメンのあなたが恋してくださるからこそ、私の結った髪が濡れてほどけてしまったのですよね……って。

 人をオチョクるんっじゃないよ!
 こんなの『片恋』じゃないじゃないか……と、ついつい僻(ひが)んでしまう。
 そして、非常に口惜しいことだが、気付かされる。イケメン男には『片恋』はないのだと。

 そこにあるのは、ますらを男だけへの……女たちからの恋の【片寄り】だけだ……と、認めざるを得ないのだ。


3−(8) 【暁】

 【暁】、太陽を表す「日」の横に「尭」(ぎょう)。
 この「尭」は、土器を焼く時に 棚に土器を積み上げた形で、そこから高いという意味を持つらしい。
 よって、【暁】(あかつき)は日が高く昇り始める意味となる。

 春の時期、なかなか布団から抜け出せない。とにかく眠い。
 昔、孟浩然(もうこうねん)は「春暁」(しゆんぎよう)で詠った。

 春眠 暁を覚えず 
 処処(しよしよ) 啼鳥(ていちよう)を聞く
 夜来 風雨の声
 花落つること知る 多少

 春の暁はまことに眠り心地がいい。朝がきたことにも気付かず、ついつい寝過ごしてしまう……と。
 さて、この【暁】とは一体朝の何時頃のことだろうか?

 それは太陽が昇る前で、夜半から夜明けまでの時間帯のこと。午前四時頃のことのようだ。
 その後、東の空が明るくなってくる頃を「東雲」(しののめ)と言う。 
 そして、ほのぼのと夜が明け始める時間帯を「曙」(あけぼの)と呼ぶ。
 さらに、その「曙」より微妙に明るくなってきた頃、それが「朝ぼらけ」なのだ。

「暁」 → 「東雲」 → 「曙」 → 「朝ぼらけ」
 この順番、憶えるには少しややこしい。だが便利なもので、要は一括して、「夜明け」と言う言葉でまとめられる。

 とならば、眠いのはなにも【暁】だけではないため、
 春眠 暁を覚えず……、そうではなく、
 春眠 「夜明け」を覚えず……、の方が、きっと現実に近いということなのだろう。


3−(9) 【鳳】

 【鳳】は、大きな鳥が風に乗り、羽ばたきをする様を表す漢字だとか。
 そして、『鳳凰』(ほうおう)と言う熟語を作る。

 この鳳凰は、雄が【鳳】で、雌が「凰」の鳥。
 この鳥は梧桐(ごとう)、つまりアオギリに宿り、竹の実を食べ、甘い味のする醴泉(れいせん)を飲んでいると言う。
 また、立派な指導者が世に出てくる兆し、それがある時に、その祝いの時に現れ出てくる鳥だとか。

 そして、この鳳凰、たとえそれが成鳥でなく、雛(ひな)でさえ、「伏龍鳳雛」(ふくりゅうほうすう)と言って重宝がられている。
 この四字熟語の意味、寝ている龍と鳳凰の雛のように、まだ世に出ていないが素晴らしい力を持つ人物のことらしい。

 そして、最近の日本の不景気を思えば……、どこかに鳳凰は飛んでいないだろうか?
 それともアオギリの上の巣の中に、雛でもいないものなのだろうか?

 とにかく、その霊長の姿は、見たことのある人の言によれば、次のようなものだとか。

 羽は五色
 前は麟(りん)、後ろは鹿(しか)
 頸(くび)は蛇、尾は魚
 背は亀で、あごは燕(つばめ)
 そして、くちばしは鶏……だとか。

 ちょっと奇抜な姿だから、すぐに見付かりそうなものだが……。


3−(10) 【裏】

 【裏】、元の意味は衣の「うら」のことらしい。
 そんな【裏】、いろいろと格言がある。

 人生には良いことも悪いこともあるという意味で、「一の裏は六」。だが実際にはその目がなかなか出てこない。
 また株式相場では、「人の行く裏に道あり花の山」と言われ、逆張りのお薦めだ。そう言われてみても、現実はそう簡単に儲かるものではない。

 しかし、誰も見たことがない【裏】がある。
 それは太陽の【裏】。つまり太陽に隠れた後方の世界。

 古代ギリシャの人は、そこにまったく同じ地球があると唱えた。なぜなら地球がバランス良く公転するためには、てんびんのようにカウンター・ウェイトが必要。
 それがいわゆる反地球(カウンター・アース)。 

 そしてそこには同じ社会があり、同じ自分がいると言う。
 だが、いつも太陽に邪魔されて見えない。
 まさに、「一の裏は六」。どちらが表で、どちらが裏なのかわからないが……。

 ところで、あちらの地球では……。
 あちらの自分が……やっぱり売れない小説書いて、それでもくじけず、頑張ってるかな?


3−(11) 【粉】

 【粉】、左の「分」は刀で二つに分ける意味があるそうな。そして、穀物を分けたものが【粉】だとか。

 この【粉】を使った食べ物が、いわゆる「粉もん」。
 かまぼこ/はんぺん系の「練りもん」からは、ちょっと距離を置いている。
 「粉もん」は、たこ焼き/お好み焼き/うどん/そば等々で、パスタも入るようだ。庶民から愛されている。

 だが、同じ粉でも、これは遠慮したい。
 それは「花の粉」。
 杉にヒノキにブタクサ……、もう堪らない。

 外は春うらら、気候が良い。これに誘われて、うろついてみようものなら、粉悶嵐(こなもんあらし)。
 恐怖のクシャミの七連発。 
 その上に、悲しくもないのに目がウルウルウルと。

 西洋では、これをローズ・フィーバーと呼んでいるらしい。いわゆる薔薇熱だと。これも馬鹿にした話しだ。

 ローズ? 
 そんな美しい「花の粉」ではない。ブタクサ・フィーバーと名付けろよと言いたくなってしまう。

 そんな【粉】、「粉もん」は実に愛されているが、花が前に付いて、「花粉もん」になれば、とんでもなく嫌なヤツになってしまうのだ。


3−(12) 【桜】

 【桜】、元は【櫻】で、「木」と「嬰」(えい)の組み合わせ。
 この「嬰」、その由来は貝二つを女が首飾りにしたところからだとか。
 しかし、これではわかりにくい。

 【櫻】は、二階(貝)の女が気(木)にかかる。
 【桜】は、ツののはえた女が気(木)にかかる。
 こんな解釈もあり、こちらの方が納得し易い。

 そんな【桜】を愛でて楽しむのが、花見。

 時は今から約四〇〇年前のこと。
 豊臣秀吉・六二歳は伏見城から出て、その亡くなる年に、盛大に「醍醐の花見」を執り行った。

 その時の女性たちの順位は、もちろん本妻の北の政所、ねね(五一歳)が一番。
 その後に側室が続く。
 しかし、これがまた歳が近いためか、実にややこしい。だが、秀吉は悩み抜いて、次のように決めた。

 二番目が、織田信長の姪っ子の茶々、淀殿二九歳、なぜなら秀頼を生んだから。
 三番目が、武田元明の正室だった松の丸殿、京極龍子。
 四番目が、織田信長の六女で、三の丸殿。
 五番目が、前田利家とまつの三女の摩阿姫の加賀殿二六歳。

 だが、秀吉の危惧した通り文句が噴出した。
 秀吉の杯をまず受けたのが北の政所。ここまでは全員納得、それで良かった。

 しかし、次は誰かと。
 秀吉は自信なかったが、淀殿に杯を渡した。

 そこで、たちまち……「ちょっと、待った!」と。
 松の丸殿、龍子が睨んできて、

 「なぜ、私が二番じゃないの」と……えらい剣幕。

 当時の常識から行けば、淀殿は秀頼を生んではいたが、格式は京極家の松の丸の方が上。
 秀吉は、こんな女の争いにただただオロオロするだけ。
 それを……
 「ちょっとあなたたち、今日は花見よ。楽しくやりなさいよ」
 こう取りなしてくれたのが、利家の妻、まつだったとか。

 これで秀吉は……ホッ!
 こんな女の大喧嘩、しかし、淀殿と龍子の二人はしっかり詠っている。
 しれっと、適当に……秀吉に胡麻擦って。

 淀殿
 『花もまた 君のためにと咲き出でて 世にならびなき 春にあふらし』

 松の丸殿、龍子
 『打群れて みる人からの山櫻 よろづ代までと 色にみえつつ』

 しかし、こんなお姉様たちの様子を見ていた一番年下の……二六歳の摩阿姫。その後、続けて詠った。

 『あかず見む 幾春ごとに咲きそふる 深雪の山の 花のさかりを』

 この歌の裏の意味は、
「もうやってられないわ、私帰りたいわ。また違う誰かと醍醐の花見に来るわよ」ということらしい。
 その証拠に、この花見の後に、摩阿姫は直ぐに側室を辞意しているのだ。

 とにかく、いつの世も女は恐ろしいものなのだ。天下を取った秀吉さえコントロールできなかった。

 ツののはえた女が気(木)にかかる。
 【桜】という漢字が、そう教えてくれている。


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このストーリーに関するコメント

13/05/13 雪都

拝読しました。
思わず肯き笑いながら最後まで楽しく漢字のお勉強が出来ました。
櫻の話は納得。そうか、女は櫻の頃が美しく、桜になればそれまでよ。出来れば桜になっても櫻と思われる女性でいたいものです。

13/05/15 草愛やし美

鮎風遊さん、拝読しました。
恋の心は、「したごころ」なるほど、名言です。
肉、ももんじ屋、今の中国では、鼠と狐らしいです、おお、こわ。口車に乗って食べてはいけません。──なんて、楽しくあれこれ思いながら、読みました。

13/05/16 泡沫恋歌

鮎風遊さん、拝読しました。

「漢字一文字の旅」は小説や詩を書かれる人にとって、その漢字の意味をしるために、
大変参考になりますね。

これはパソコンに保存したくなる文章ですよ。

13/05/19 鮎風 遊

雪都さん

面白く読んで頂き、ありがとうございます。

旅は続きますので、よろしくお付き合いのほどを。

13/05/19 鮎風 遊

草藍さん

「愛」は真心、「恋」は下心。
うまく言ったものですよね。

旅は道連れ、これからもよろしく。

13/05/19 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

漢字のDNA、いろいろとあるようで。

お付き合いのほどを、よろしく。

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