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漣 一二三さん

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初めまして、傘です

12/04/22 コンテスト(テーマ):第四回 時空モノガタリ文学賞【 傘 】 コメント:1件 漣 一二三 閲覧数:1957

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 「行ってきまーす!」
その声と共に僕は勢いよく外に連れ出された。
6月半ばの空は曇っていた。
まだ雨は降っていないが、今にも降り出しそうなじめじめとした日だ。
梅雨は嫌いだ、正確には雨の日が大嫌いだ……。
 「おはよー」
いつもの時間にいつもの待ち合わせ場所に行くといつものメンバーがいた。
そしていつもの決闘が始まるのだ。
 「我が太刀を受けて見よ!!」
キンッ!キンッ!!
刀と刀が交わる。
そしてしばらくの間、刀の押収が続き決着が着く。
「うぎゃー!」
盛大に切られた、どうやら今日は負けたらしい。
切られたと言っても本物の刀でもなければ、実際に当たってもいない。
要するに俗に言う“チャンバラごっこ”というやつだ。
やっている本人たちはいつも楽しそうだが、
刀代わりに使われるこっちとしては堪ったものじゃない。
小学生になってから力も強くなり、衝撃が芯まで響くのだ。
毎度毎度、骨が折れていないか心配になる……。

 チャンバラごっこを終えた後も僕の気苦労は続くのだ。
それは友達とのおしゃべりだ。
友達とのおしゃべりのどこに問題があるかって?
癖と言うやつだろうか、
楽しそうに友達とおしゃべりをしながら僕を杖のように地面に突くのだ。
正直止めてもらいたい。
一回一回はどうということはないのだが、積み重なるとなかなかのダメージなのだ。
まだ小学生の君には分からないかもしれないが、ここは重要な部分なんだぞ……。

 結局ずっと杖のように突かれ続け、学校に到着した。
学校は安心できる場所だ。
お昼過ぎまで授業があるので、僕が手に取られることはない。

 しかし、安息の時間はあっという間に過ぎてしまう。
目の前では“帰りの会”が進行されおり、窓からは雨音が聞こえてくる。
「うわー、雨だよ……嫌だな」
何が“うわー”だよ。
その嫌な雨に打たれるのは僕じゃないか。

 全く、人間は勝手だ。
僕たちを何だと思っているのだろうか?
朝はチャンバラごっこに使われて、道中では杖代わり。
学校に置き去りにされることもあるし……。
そんな風に乱暴に扱っておいて、
壊れたら“安物だな”とか“使えないな”と文句を言う。
そしてすぐに捨てて代わりを買ってくるのだ。
いくら仕事とはいえうんざりだ……。
 「さようならー!」
こっちの思いとは裏腹に元気の良い挨拶が聞こえる。
帰りの会は終わったようだ、つまり仕事の時間だ。
急いで僕を手に取ると、友達と廊下へ走って行った。
早く帰って遊びに行きたいのだろう。
廊下を走りながら遊びの予定を立てている。
「傘があって良かったよなー、雨の日でも遊べるじゃん」

……全く、人間は勝手だ。
けど、何だか悩んでいるのがバカらしくなってきた。
我ながら単純だと思う。
そんな一言で頑張ろうと思えるのだから。
……まあいいか、僕はそんなに複雑な形はしてないし。
そんなことを考えながら僕は目一杯両手を広げて守るのだ。
まだ小さな君が大きくなる日まで。


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このストーリーに関するコメント

12/04/22 かめかめ

うん。明日も、がんばろー

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