1. トップページ
  2. 珍説 蜘蛛の糸

yoshikiさん

面白い作品を知り、自分でも書いて見たくなって何年も経ちました。よろしくお願いします。 2010年 小説現代S&Sコーナーに初めて送った作品が掲載されました。作品名『幽霊の見える眼鏡』 とにかく面白いものが書いていけるといいなと思っています。 イラストはエアブラシと面相筆で昔描いたものです。

性別 男性
将来の夢 楽隠居
座右の銘 不可思議はつねに美しい、どのような不可思議も美しい、それどころか不可思議のほかに美しいものはない。アンドレブルトン

投稿済みの作品

5

珍説 蜘蛛の糸

13/04/25 コンテスト(テーマ):第三十回 時空モノガタリ文学賞【新人】 コメント:9件 yoshiki 閲覧数:1825

この作品を評価する

 これはまだお釈迦様が天上界に赴任されたばかりの、新人であられた頃の物語です。
 あるとき、お釈迦様は平和すぎる極楽が無性に退屈で、大きな蓮池の周りをぶらぶらと歩いておられました。そして極楽界の景色をだいぶ長い間眺めておいででしたが、それにも飽きてしまわれました。そのうちに、ふと蓮池の隙間から下界をご覧になりますと、浅黒い顔のカンダタという悪人が地獄で苦しんでいるではありませんか。
 そこでお釈迦様はその男にとても興味を持たれました。退屈が吹き飛んでしまう程でした。そしてなんとなく釣りでもする感覚で蜘蛛の糸をそこから垂らしますと、カンダタは血の池から逃れる為、その糸をつかみ、それを伝って無我夢中にのぼり始めました。お釈迦様はそれをとても面白く感じました。スリルがあるのです。
 しかしカンダタはただ夢中です。そして彼が下を見るとどうでしょう。数多くの罪人達が我も助かろうと後に付いて登ってくるではありませんか。そこでカンダタは驚き大声で怒鳴りました。
「こら、罪人ども! 来るな糸が切れるぞ! 莫迦ども糸を離せ! この糸は俺様だけのものだ」
 その途端に糸は切れ、哀れにもカンダタ諸共、みな地獄の血の池に落ちて行ってしまいました。なんとお釈迦様はそれを見てニヤニヤ笑っておられました。
  
 でも、その一部始終を遥か、天上界の天照大神(あまてらすおおみかみ)が見ておられました。そして極楽界のお釈迦様のもとにやって来てこう言いました。
「わざと切りましたね、あなた。この薄らばか。自分の事しか考えない罪人達に糸を投げればどうなるか、おまえには判っていたでしょう。あなたのやったことは残酷です。このサディスト。修行が足りません!」
 天照大神はそうおっしゃいますと、お釈迦様の胸ぐらを、むんずと掴まれ、そのまま地獄に突き落としてしまわれました。血の池にはまり込んだお釈迦様は悲嘆にくれました。そして深く反省されました。
「わるうございました。天照大神様、私がわるうございました……。お助けください。どうぞお助けください。このおろかな新人めをどうかお助けください」
 ですが、天上界からはなんの返事も返ってはこないのでした。

  *  *

 それからかなり永い月日が流れたある日の事です、事もあろうに空から蜘蛛の糸が下がってきたのです
 以前の一件があったので、お釈迦様はこれは悪しき者の行為だと思い、力任せにその糸を引き寄せられました、するとどうでしょう。天照大神が天上界から糸を持ったまま落ちてきたではありませんか。そして照れ笑いをしながらおっしゃいました。
「お釈迦さん。やっぱり蜘蛛の糸って一度は垂らしてみたくなるものね……」


                    おしまい


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

13/04/28 光石七

拝読しました。
いいオチです(笑)
人間臭いお釈迦様と天照大神に微笑んでしまいます。
でも、これじゃ救われる人はいないかもしれませんね。

13/04/29 yoshiki

光石七さん。コメントありがとうございました。

芥川龍之介の蜘蛛の糸は笑えないので、なんとか笑えるパロディが作りたかったのです。お読みいただけて嬉しいです(*^。^*)

13/05/03 泡沫恋歌

yoshikiさん、拝読しました。

これは罰あたりな内容ですが、最高に面白い!
確かに、一度は蜘蛛の糸って地獄に垂らしてみたくなる気持ちは分かる(笑)

13/05/04 yoshiki

泡沫恋歌さん。コメントありがとうございました。

このお話はきわめて人間的なお話です(*^_^*)

面白いといっていただき嬉しいですわ。魚釣りの要領です。ハイ。

13/05/06 草愛やし美

yoshikiさん、拝読しました。
お釈迦様も人の子なのでしょうか? というか考えることはみんな同じですね。安心しました。ここだけの話ですが、蜘蛛の糸は案外丈夫なようです。
大変面白かったです。

13/05/07 yoshiki

草藍さん。コメントありがとうございました。

お釈迦様(ブッダ)はインド人で仏教の開祖です。人の子です。

糸が切れずに悪人たちがぞろぞろ極楽に上がってきたら、また面白い話ができそうですね(*^_^*)いつもありがとうございます。

13/05/13 鹿児川 晴太朗

拝読いたしました。
これは良いオチです。思わず笑ってしまいました。
良い意味で俗世的な、神格化されていない神様を見ていると、それだけでなんとも微笑ましく感じられました。

13/05/13 yoshiki

凪沙薫さん。初めまして。コメントありがとうございます。

名作のパロディってのも気がひけましたが、なんとなく書いちゃいました。

なんか結構、好評のようなので安心しました。(*^_^*)アリガトさん。

13/05/13 yoshiki

鹿児川 晴太朗さん。コメントありがとうございました。

なんかこう、のほほんとした雰囲気が伝われば嬉しいですね。

オチは自分ではイマイチだと思っていたのですが、意外に好評でした(*^_^*)感謝

ログイン
アドセンス