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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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浅草の寅

13/04/22 コンテスト(テーマ):第二十八回 時空モノガタリ文学賞【 浅草 】 コメント:18件 泡沫恋歌 閲覧数:2181

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てやんでぃ! おいらは三代続いた浅草生まれの野良猫だぜぃ!
『浅草の寅』と言えば、この辺りでは知らない者はいねぇー。爺さんの代から、浅草寺から花やしきにかけてはおいらの縄張りだ。今日も子分をひき連れてシマの見回りに出掛けるぜぃ! 
おや? 雷門の下に見慣れない猫がいるぞ。
「やいやい! てめぇ、どこのシマのもんだぁ?」
子分のクロがいきなり脅しをかけた。
「あっ! ゴメンなさい。私、迷子なの」
見れば、真っ白なロン毛で青い目のきれいな女の子だった。
「よぉ! ねぇーちゃん、どこから来たんだ?」
子分のノラがにゃん相の悪い顔で訊いた。
「わ、わたし……カルフォルニアから来ました」
『かるふぉるにあ〜?』
おいらたちは聞き慣れない言葉に素っ頓狂な声を上げた。
「なんでまた、そんな異国の猫が浅草をウロウロしてるんだぁ?」
「私、キャロルって言います。飼い主と一緒に日本に来たの。東京のブリーダーの家にホームスティするために」
「イヤで逃げてきたのか?」
「違います。車の中で飼い主の膝の上にいたけど……退屈して、ドアが開いた時に飛び出しちゃったんです。すぐ戻るつもりだったのに、犬に吠えられてビックリして駆けだしたら、帰る場所が分からなくなってしまったの」
女の子はシクシク泣きだした。おいらは江戸っ子でぃ! 困ってる子を見たら放っては置けない性分。
「泣くなっ! おいらたちがお前の飼い主探してやるさ」
「ありがとう!」

「まずは目撃情報ってもんが大事なんだ!」
子分三毛猫の三太が言う。こいつは学習塾に飼われている半野良で賢い奴なのだ。
「どうすればいいんだ」
「彼女は真っ白できれいだから、浅草界隈を歩くと当前目立つ。それで探してる飼い主にキャロルを見たという情報が届きやすい」
「じゃあ、キャロルを連れて歩き回ればいいんだな?」
『浅草の寅』一家の猫たちは目立つように浅草寺の境内や花やしきを練り歩いた。キャロルは初めて見る浅草の風景に興奮気味だった。
「腹、空いてないか?」
「ええ……空いてる」
「よしっ! おいらの取って置きの穴場に連れて行ってやるぜぃ」

キャロルを連れて、商店街にある「もんじゃ焼き」の店に行った。入口の前でニャーニャー鳴いていると、おばあさんが出てきて削り節のかかったご飯をくれた。
「おや、寅ちゃん。ずいぶんシャンな子を連れてるじゃないか」
おばあさんはキャロルのご飯も用意してくれた。――なのにキャロルは嗅ぐだけで食べようとしない。
「どした?」
「これなぁに?」
「猫まんまといって日本古来の猫のご飯だぜぃ」
「この白い粒はなぁに?」
「米といって日本人の主食だ」
おそるおそる……キャロルは猫まんまを食べた。
「Oh! Delicious」
ひと口食べて気に入ったみたいだ。

歩き疲れて陽が暮れて夜風が冷たくなってきた。
「ねぐらは空き地に捨ててあるトロ箱の中にするか」
「トロ箱?」
「魚が入ってた箱だけど温かいんだ」
「カルフォルニアは一年中暖かいのよ」
「日本には四季ってもんがあって、冬は雪が降って野良猫に厳しい季節だぜぇ」
発泡スチロールの箱に入るとキャロルは眠そうにアクビをした。
「今夜は、ここで寝るんだいいな。じゃあ」
おいらが行こうとすると……。
「待って! 独りにしないで、心細いわ」
潤んだ青い瞳でキャロルが見つめるから、おいらのハートがキュンと鳴った。
「おねがい……」
飼い猫のキャロルと野良猫のおいらとでは住む世界が違う。
「仕方ないなぁ、蚤が移っても知らないぜぇー」
 
――そして朝になった。おいらはキャロルのふさふさの毛に包まれて眠った。
「モーニングを食べに行こう」
隅田川沿いにある寿司屋へ直行。ゴミ箱の中には魚のアラや握り鮨も混じっている。
「ここのネタは新鮮で旨いぜぇ!」
「辛い!」
「猫にわさびは無理! あはは」
仲よくゴミ箱をあさっていると、
『やい、寅! この餌場はうちのシマだぜぇー』
隣のシマの親分『両国の玉』が子分を引き連れてやってきた。
「てやんでぃ! ここは三代前から『浅草の寅』一家のものだ!」
「ガタガタぬかすんじゃねぇ!」
猫の縄張り争いは熾烈なのだ。
「シマから出て行け!」
おいらは玉に強烈な猫パンチをお見舞いした。おいらの声を聴きつけて子分たちが集まってきて『浅草の寅』一家と『両国の玉』一家の大乱闘になった。
騒がしい猫の喧嘩に近所の住民たちが出てきた。その中にキャロルと同じ青い目の女の子がいた。
「Carol!」
その声に、一目散に飛んでいった。女の子に腕に抱かれてキャロルは嬉しそうだった。そのまま車に乗せられて、発車の間際、おいらに向かってキャロルが何か叫んでいた。だが、その声は聴こえない――あっけない別れだった。
おいらは『浅草の寅』。泣いてなんかいねぇーぞ!


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このストーリーに関するコメント

13/04/22 泡沫恋歌

写真の白い猫はアメリカンカールという種類の猫で、私の姉の家で飼われている、三代目フジです。
姉の旦那さんの家では代々猫に「フジ」という名前付けます。もう一匹いる猫は「タカ」です。
たぶん、三匹目を飼ったら「ナスビ」になると思います(笑)

もう一枚の猫の写真は、無料壁紙の総合サイト壁紙Link
「神社の猫」からお借りしました。
http://www.kabegamilink.com/lib/0612/02955.html

13/04/22 こう

こんにちは
面白い擬人化ドラマですね。
猫の「マディソン郡の橋」とかも描けそうです。
下のyoutubeビデオもお勧めです。ねこ好きならご存知かも?
https://www.youtube.com/watch?v=R7Vg0niQFq0

13/04/22 こぐまじゅんこ

泡沫恋歌さま。

浅草の寅さん。
江戸っ猫ですね。いせいがよくて猫情があって、すてきですね。

13/04/22 草愛やし美

泡沫恋歌さん、拝読しました。
面白かったです。昔、子供の頃見た、東映映画を思い出しました。
中村錦之助(後の萬屋錦之介)が、ちゃきちゃきの江戸っ子の一心太助を演じていました。あのはぎれのよい江戸っ子を彷彿させる猫の寅でした。
楽しんでいる間に終わってしまいました。このキャラいいですね、ぜひシリーズ化して欲しいものです。よろしくお願いします。

13/04/23 泡沫恋歌

こうさん、コメントありがとうございます。

この物語は猫の「マディソン郡の橋」というよりも、
猫の「ローマの休日」のつもりで書きました(笑)

Youtubeのその動画は観てないです。
情報ありがとうございます。

13/04/23 泡沫恋歌

こぐまじゅんこさま、コメントありがとうございます。

浅草生まれの江戸っ子にゃんこの活躍です。
これからも「浅草の寅」はしぶとく野良猫として生きていくでしょう。

13/04/23 泡沫恋歌

草藍さん、コメントありがとうございます。

ああ、確かに昔の東映の時代劇のノリだったかも知れない(笑)
美空ひばりや大川橋蔵とか・・・単純で分かりやすい話だけど
観てて楽しい映画だったね。

貧しかったけど、夢のある昭和時代でした。
「浅草の寅」もそんなノスタルジックなキャラかも知れないわ。
シリーズ化は考えてみます(○^o^○)ニコッ♪

13/04/29 そらの珊瑚

恋歌さん、拝読しました。

威勢のいい江戸弁がなんとも小気味良く、ノラねこたちのたくましい生活が目に浮かぶようでした。
フーテンの寅さんもいつも失恋の憂き目にあっていましたが、浅草の虎さんの恋も実らなかったのですね〜。いつかきっと素敵なパートナーが現れますように!

13/04/30 泡沫恋歌

珊瑚さん、コメントありがとうございます。

猫版「フーテンの寅」って感じの話で楽しんで読んで
貰えたら嬉しいです。

猫も人間も恋はツライものです(笑)

13/04/30 鮎風 遊

ほのぼのとした話しでした。

にゃん相なんて、にゃん語の言い回しが面白いですね。
いろいろと物語が展開できそうかな。

13/04/30 クナリ

浅草のように人情あふれるイメージのある下町に、べらんめ口調の猫は非常に似合いますね。
人間よりも人間らしく、日々を生きていそうです。
マドンナのごときヒロイン(?)も、猫まんまをおいしいといってくれると、一気に親しみがわいて高感度アップでしたッ。

13/04/30 光石七

拝読しました。
猫の寅さんの恋も実らぬ運命のようで…(笑)
一匹一匹個性が豊かで、テンポよく読めました。

13/05/01 ドーナツ

とっても、身近に感じてしまうお話ですよ。

浅草の虎ちゃん。男気があって惚れちゃいそう
キャロルも 家族がみつかってよかったね。

喧嘩のおかげで、家族がみつかたのも面白い。

浅草の虎ちゃんに会ってみたいですよ。

13/05/03 泡沫恋歌

鮎風さん、コメントありがとうございます。

あははっ、こういう猫の物語は作者の楽しんで書いています。
猫って見てるだけで、ホント楽しい生き物ですよ。

あの自由でのほほんとした生き様に憧れてます。
生まれ変わったら「猫になりたい」(スピッツ)と思ってる泡沫恋歌です(笑)

13/05/03 泡沫恋歌

クナリさん、コメントありがとうございます。

浅草と聴いて、何故か「フーテンの寅」さんの世界が頭に浮かびました。
やっぱり浅草の猫はべらんべぇー調で話すんだろうか?

実はもう一本真面目な浅草人情話を書いてて、その副産物として生まれたのが
この「浅草の寅」です(笑)

ねこまんま、これは猫の文化遺産として後世に残したいですね!

13/05/03 泡沫恋歌

光石七さん、コメントありがとうございます。

柴又の寅さんも浅草の寅も恋は実らないけど、楽しい仲間たちに囲まれて、
幸せそうですよ(笑)

少ない文字数に猫の個性を表現するのはそれなりに大変でしたが、
楽しんで書くことができました。

13/05/03 泡沫恋歌

ドーナツさん、コメントありがとうございます。

我ら、猫好き同盟! 
2ちゃんでは「ぬこ廚」とかいうんだとか・・・?
まあ、そういうオタクな猫好きではないけどね(笑)

だけど、うちの猫好きの姉なんか、すんごいアホ猫飼ってて
もし自分が死んだら、アホ猫の面倒を誰もみてくれないから・・・
猫のためにも死ねないなんて言ってるよ(笑)

こんな人のこそ、本物の「ぬこ廚」だよね( 〃´艸`)

13/05/05 泡沫恋歌

ななさん、またイヤミなコメントですか?

早くななさんの作品を読ませてくださいよ。
もの凄く楽しみにしているんですから||*´∀`)。o○(ワクワク)

あなたが時空モノガタリに作品上げるまでは、コメント要りません(`・ω・´)ハイ!

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