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デーオさん

コメディから純文学風など 別人じゃないかと思われるほど違う趣のもの 色々書いてます。

性別 男性
将来の夢
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ふられた女にふる雨は

12/04/21 コンテスト(テーマ):第四回 時空モノガタリ文学賞【 傘 】 コメント:2件 デーオ 閲覧数:2460

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 いまいましい雨だ。意地でも止むまいとでも思っているように、降り続ける。
 この雨が振られた私に優しく涙をさそう筈、本当は泣いてしまうシチュエーションなのに、悔しさがいつまでもおさまらない。

「ごめん! あなたとずうっと付き合って行く自信が無いんです。ボクにはもったいなさ過ぎます。あなたなら、ボクよりずうっといい男が見つかりますよ」

 ボクだってぇ、あの顔で、あの歳で。ふん! でもくやしい! 私もいい歳だし、ずっとランクを下げて結婚しようとしてたのに。あ、涙が。やっぱり私も女。ん?でもこれはくやし涙だわ。ますます腹がたつわ。あ、向こうからいい男が。
 ……ちらっとも見ていない。ああ、二十代のあの頃、外で歩いているだけで、男性の目を惹いていた私が。

 約束の時間に10分遅れたら、すぐサヨナラだった。私は時間を守れない男はきらいよ。思い出すと、時間は守るけど、わけの分からないことを言ってた男がいたっけ。
「ボク、どこが悪かったんでしょうか、あ、ボクお寺で修行してきます。がんばってあなたに相応しい男になってきます。その時は付き合ってください」
 あの男は、背が低かったけど、美男だったわ。お金持ちだったし、私、どうして別れちゃったのかしら。あれからあの男、坊主になってしまったのかしら。それにしても、いやな雨だわ。

 あ、頬にぽつりと、私の涙? かわいそうな私の涙? ん? 腕にも水滴が落ちて染みて広がる。私は傘を見上げる。
 えっ、傘からしみているんだわ。いつの間にか水をはじかなくなって。傘まで私をバカにして、くやしい! 
 あの頃、買ったばかりの傘のように、水玉をころころ転がしていた私の肌。まだ大丈夫よねと思いながら過ごしたここ数年。そして傘から漏れた雨で肌の衰えを知らされるなんて。
 ええい、いまいましいこの傘、地面に思いっきり叩きつけてやりたいわ!! でも濡れるのもイヤだし、買い換えよう。思いっきり派手な傘に……。

「お客様、この傘どうします。こちらで処分しましょうか」

 さっき、地面に叩きつけたいと思っていた筈なのに。商売とはいえ、若い男のふわっとしたやさしそうな声を聞いて、ニコッと微笑んで「いいえ、持って帰りますので袋に入れてください」と言ってしまった。
 ケーキでもいっぱい買って、さあ帰ろう、あの散らかった部屋へ。
 見上げた傘の上で雨粒の影がころころ転がっている。それを見ているうちに鼻の奥の方から何かが押し寄せてくる。えっ、なんで今なの? やがて目から暖かい涙が頬を伝う。

 ふられた女にふる雨は、やっぱり甘くせつない。

end


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このストーリーに関するコメント

12/04/23 新倉真

最後の一文。わかるなぁって……
昔、僕もよくありました。未だにかも……(涙)

12/05/01 ゆうか♪

ちょっと意地っ張りな女性の可愛さみたいなものを感じました。
女性心理が良く分かってますね。(笑)

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