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左足の小指さん

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活字のラビリンス

12/04/20 コンテスト(テーマ):第四回 時空モノガタリ文学賞【 傘 】 コメント:1件 左足の小指 閲覧数:2182

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雨も降ってないのに、大きな白い傘をさしてる奴が目の前を歩いている。
傘には「怪獣VS改造人間」とか「来月発売DVD」とか「宣伝に使用中の着ぐるみをさわらないで下さい」
とか書かれている。
(さわるもんか!暑いな・・)
ペットボトルを取り出し、蓋をはずすと、僕の手からペットボトルが消えた!
正確に言うと、前を歩いている奴の手・・だと思う物が伸びてきて盗った!
「おい!おまえ・・?」
怒った僕は、奴の前に回りこんだ。
奴の尻尾の様な物が、僕の空になったペットボトルを持っている。
(凄いな・・最近の着ぐるみって、きっとのど渇いてたんだな。一瞬で飲むなんて)
僕は、怒るのも忘れて、ただ感心した。
よく出来ている。
着ぐるみっていうより、特殊メイクだな・・
「上げますよ。水、今日は暑いですから」
と言うと、彼(?)の尻尾が根元から先の方まで鮮やかに光った。
どうやら、嬉しがってるようだ・・
(時給いいのかな・・)

なんて思っていると、うちに着いた。
あれっ、奴もうちに入って行く。
1年帰らないうちに親父、仕事変えたのかな?
表の看板を見ると「伝統和」の所に×が書いてある・・が、その隣の傘の字はそのままだ。
僕は、心配になった。
家を継ぐ、継がないで喧嘩になって家を出て、連絡もしなかった・・傘を作れないくらい弱ったのかな・・涙が・・出そうになった時
「純ちゃん〜」
振り向くとそこには?誰?
「父親の顔を忘れたのか」
「変わりすぎだろ〜」
「お前が変われって言ったんだろう。言ったお前は、全然変わってないな」
角刈りに作務衣を着ていた親父が、ロン毛で茶髪でダメージジーンズって、ありなのか!
「裏の竹やぶに客が来るから、迎えに行ってくれ。須藤さんも行くから」
須藤さんと呼ばれたのは、さっきの傘の奴だ。
もうお茶の先生やら踊りの教室との仕事辞めたのかな・・そういうのって僕のせいなのかな・・
そんな事を考えながら、竹やぶの中の広い空間に着いた。
そこに垂直に小型の飛行機が降りてきた。
後部に乗っている搭乗者だけが須藤さんの手をかりて、降りてきた。
操縦者は、かっこよく指を二本額の横におき、横に振ると飛び立った。
(パイロットの人、マスクとか凄い装備だったな、あれって普通の飛行機じゃないよな)
振り向くと須藤さんは、お客さんを抱きかかえ、走り出していた。
(あんなモン着たままよく走れるな)
僕が、帰っていると、また文字が書いてある大きな白い傘を差して歩いている奴が前を歩いている「バスケットを頑張ります!応援してね」
(でかっ2m50はあるよな、海外選手だよな)
親父にバスケット選手に会った話をすると「やっぱりバスケット選手だと思ったか」
親父は満足げに笑った。
違うのか?
父は、今は洋傘を作っているらしい
「評判がいいんだ。クチコミってやつだ」
「もしかして、文字入りの白い傘?」
「そんな事より、お前は何してんだ?はっ?あんな偉そうな事言っておいて、今更あとを継ぎたいだと?あとを継ぐ和傘屋はもうないんだぞ。そういうのをあとの祭りって言うんだ。馬鹿め・・あっ・・でも、仕事が無いわけでもないか・・須藤さんの奥さんを海洋科学保護施設に送って来てくれないか?大型免許持ってたよな?」
どうやら、飛行機で来たのは須藤さんの奥さんだったらしい・・なぜか、いけすトラックが用意され、助手席には須藤さんが乗り込んだ。
「奥さんは荷台でいいの?水入ってるよ」
須藤さんは、黙って嬉しそうに尻尾を光らせた。

途中、強盗があったとかで、検問で、お巡りさんに後ろの水槽を見せた。
耳のあたりに魚の背びれの様な物が付いていて、へその下からうろこが付いている女性が白い傘を広げて泳いでいた「特許申請中、撮影禁止」と傘には書かれていた。
「綺麗な人形だね」
お巡りさんの感想だ。

海洋科学保護施設に二人を届けると施設長がコーヒーをおごってくれた
「あなたのお父さんのアイディアで地球上の特殊な生物が随分暮らしやすくなったわ」
(アイディアってなんだ?)
「移動もスムーズに出来るようになったし、理解も深まって仲間も増えたわ。須藤さんの奥さんは、アメリカで解剖されるところだったのよ。勿論、名前は、須藤さんじゃないわ。便宜上つけたの。深海魚の一種としか分かってないの」
(深海魚!)
「お父さんは、色んな分野の人から感謝されてるわ」
(じゃ、あのバスケの選手も人間じゃなかったのかな、理解できん。でも、一番理解できんのはあんなきれいな人魚がなんであいつと夫婦なんだ)
僕は、その後めでたく和傘屋を継がせていただける事になった。
洋傘の方も手伝う事になるだろう。


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このストーリーに関するコメント

12/05/01 かめかめ

わりと好きな世界です。
しかし、お父さん、儲け薄そう

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