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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

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ツ−トモ (1999文字)

13/03/03 コンテスト(テーマ):第二回 【 自由投稿スペース 】 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2717

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 コートのポケットに左手を入れ、右手で吊革を握ってる。ぶら下がったような瑛太、混んだ電車の揺れに身を任せている。
 毎朝繰り返される通勤地獄、だが慣れてしまえば気怠くもあり、夜の続きか睡魔が襲ってくる。しかし、勤務先の駅までにはしっかりと目覚めなければならない。しかも心地よくだ。
 そのためには瑛太なりの拘りがある。それは七輛目の後方部、奥から三つ目の吊革辺りに自分のスペースを確保すること。そして周りには馴染みの顔ぶれが揃っていること。

 その彼らとは今まで一度も言葉を交わしたことはない。されど互いに見知った仲。これを友人と言うべきなのだろうか、それとも仕事場へと向かう同士と呼ぶべきなのだろうか? いずれにしても馴染みの顔が揃っていることで、慌ただしい通勤がのどやかなものになることは事実だ。
 もちろん彼らも静穏。目を閉じ、走り行く快速電車の響きを感じ取っているようだ。
 そんな彼らを、薄目を開けて確認してみる。いつもの面々だ。そう、ヒグマのようなオヤジに、ちょっとずる賢しそうなキツネ顔のお姉さん、そしてキリンのように背の高いお兄さんに、ヤケに着飾った孔雀のような熟女、とにかく……等々だ。
 ならば自分は? さしづめ彷徨うはぐれ狼ってとこか? こう自虐的に思い、小さくプッと吹き出す。それでも彼らは瑛太に怪訝な顔をするわけではなく、慣れた世界に浸っている。なぜなら電車という小さな檻に入り、もう何年も通勤を共にしてきた朋友だからだ。
 それでも瑛太は、これってちょっと危険な段階かな、とも案ずる。

「なあ瑛太、ツートモって、知ってるか?」
 いつぞや友人の吉田が聞いてきた。それは突然で「なんだよ、それ?」と問い返すと、吉田はどや顔で言う。
「いつもの車両、その一角で、毎朝つつがなく、共に過ごす通勤友達のことだよ」と。
「ほう、そうなのか、それなら俺もツートモはいるぜ」と威張ってみると、吉田がそれに釘を刺す。
「ツートモって意外に結束が強くってね。時としておぞましいことが……。おまえも気を付けろよ」
 どういうことなのかわからない。ポカンとしていると、吉田は語り始める。
「朝は誰しも不機嫌なもの、だけどツートモの中にいると居心地が良い。だから暗黙の内に、この世界を守ろうとみんな同じ思いになる。だが、それが嵩じて、ツートモ事件が起こったんだよな」
 瑛太は耳を疑ったが、吉田は構わず続ける。
「ある朝、異物が侵入してきたんだよ。生意気そうなアンちゃんが耳にイヤホン付けてね、音が漏れてんだよな。それってウッセイだろ、挙げ句にケイタイまで掛けたんだよ。これで平和な朝は壊され、不愉快そのものになったんだろうな」
「それは耐え難いことだよ。で?」
 瑛太もこういう事態はあり得ること、興味津津だ。
「電車が終点に着いて、車掌が車内点検するだろ、その時発見されたんだよ、刺し殺された男が。多分、ツートモの一人がやってしまったんだろうなあ」
「えっ、天誅を加えたってことか? だけど、それ、犯罪じゃないか」
 瑛太は背筋が寒くなった。
「もちろん捜査はあったよ、だけどツートモは結束が強くってね、特に口裏を合わせたわけじゃないけど、みんなが言ったんだよ、見知らぬ男が刺し殺して逃げて行ったと。表面上何の利害関係もない、そんなツートモたちが証言したんだぜ、そりゃ信憑性が出てくるよな。それで捜査は迷走し、犯人は未だ見つかってない」
 吉田はふうと息を吐いた。あとは得意げな顔で止めを刺したのだ。
「だからツートモって、ヤバイんだよ」と。

 瑛太はこんな吉田の忠告を思い出した。だがツートモの心地よさは捨てられない。
 そんなことを考え、電車に揺られてる時だった。雑音のようなメロディが聞こえてきた。耳障りだ。途中から乗り込んできた若い男から発せられてる。
 ツートモたちを見てみると、明らかに顔が歪んでる。通勤のこの貴重な時間が汚され、もう怒り心頭のようだ。
 それでも電車は進み、次駅へと到着した。
 その時だった、ヒグマオヤジとキリン兄さんが男の腕を取った。狐のお姉も孔雀熟女も悪魔の形相をしている。
 これは危険な状態だ。男はナイフを持ってるかも知れない。しかしこの通勤電車内の小さな社会、その平和を守るためツートモたちが一斉に動いた。
 瑛太にも視線が飛んでくる。何らかの貢献をせよと。だが、どうして良いものやらと迷っている内に、男はツートモたちにボコボコにされ、プラットホームへと叩き出されてしまったのだ。

 国でも会社でも地域でも、そして通勤電車の中でも、人たちは見知った仲間同士で結束する。それはなにも悪いことではない。
 しかし、時として悲惨な事態になることもあるようだ。
 元来はぐれ狼の瑛太、危険には敏感、明日は車両を変えてみようと決意するのだった。


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このストーリーに関するコメント

13/03/03 草愛やし美

鮎風遊さん、拝読しました。
ツートモですか、私も仲間になりそうです。近頃の若者?は傍若無人でして、マナーをわきまえてません、ブツブツ……。私もかなり、危険な領域にいそうですが、腹に据えかねること確かに多いです。
つつがなく共に過ごせ「ツートモ」──面白いお話でした、なるほどと思うのは私が年だから? かもね。

13/03/05 泡沫恋歌

鮎風さん、拝読しました。

これって、なんか現実に起こりそうな事件ですよね。
電車の中でマナーの悪い人を見ると正直、ムカッとしますもん。

「快適な通勤空間」を守りたかったのでしょうか?
知らない同士でも、ある部分で繋がっていたんですね。

13/03/10 そらの珊瑚

鮎風さん、拝読しました。

人間の集団心理の怖さを感じました。

13/11/30 鮎風 遊

草藍さん

ツートモの結束は強い。
だがちょっと危険。

ママトモに少し似てるとこもありなん、かな。

13/11/30 鮎風 遊

泡沫恋歌さん

実際に起こるかも。
ムカムカとすることは、日常茶飯事に。

結束されてますよ。

13/11/30 鮎風 遊

そらの珊瑚さん

隣三軒両隣。
元はここから、しかし、袖振り合うも多生の縁。

これが結構恐いかも。

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