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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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指名手配の男

13/02/05 コンテスト(テーマ):【 映画館 】 コメント:15件 泡沫恋歌 閲覧数:2116

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「なぜ俺の写真が!?」
 交番の指名手配の掲示板に自分の顔を見つけて茫然とした。罪名は「強盗殺人」とある。
 なんてことだ! 俺そっくりの指名手配の男はまさしく俺自身だった。
 名前も髪型も着ている服も、今、俺が身につけている物と全く同じだ。だが「強盗殺人」を働いた記憶はないし、そんな大それた事をやる度胸は俺にはない。
 これは罠か? やってもいない罪を被されているのかも知れない。
 
 その時、どこからか男の声がした。
「これはあなた自身の映画です。どうぞあなたが演じてください」
 クックッと含み笑いが聴こえた。
 あの男だ! そうか、あの映画館に俺は居たんだ。

 俺はバイトの居酒屋を無断欠勤して首になった。
 気にいらない店長だった「お前は首だ! もう来るなっ!」と言われた瞬間、カッとして気が付いたら店長を殴っていた。警察を呼ばれたら厄介なので慌てて逃げた。
 そのまま行くあてもなく街を彷徨っていたら、路地の奥ネオンがチカチカしていたので近づいてみると映画館だった。
 古臭い映画館で大昔に上映された時代劇の看板が掛かっている。中を覗いていたら、切符売り場の小さな窓から声が聴こえた。
「お客さん、映画をご覧になりたいですか?」
「いや、違う」
 慌てて立ち去ろうとすると……。
「お待ちなさい! 今日は映画館の無料開放デーなのです」
「えっ?」
「お客さんの観たい映画を無料で上映します」
「ホントにタダで観れるのか?」
「はい。どうぞお入りください」

 そう言われ中に入った。薄暗い館内には観客席が五十席くらいあった――当然、観客は俺一人だった。
「ようこそ! 当映画館へ」
 いきなり頭上から声が響いた。驚いた俺はキョロキョロしたが、それは後ろの映写室からの声のようだ。
「お客様お一人なので、リクエストした映画を上映しましょう」
「……そう言われても、観たい映画が浮かばない」
「では、今のあなたの気分に合った映画をお観せしましょう」
「今の気分って……なぜ、そんなことが分かるんだ?」
「映写技師を長いことやっていると、いろんなことが見えてくるんですよ」
 クックッと不気味な声で映写室の男が笑った。
「何でもいいや。適当にやってくれ」

『お客様の気分に合った映画の上映です!』

 館内の照明が消されて、カラカラとフィルムを巻き上げる音に、白いスクリーンには一条の光と影が映し出された。
 同時に俺は睡魔に襲われて眠ってしまった。

 ――そして気が付いたら、交番の前に立っていたのだ。

 俺の姿を見て通行人がヒソヒソと話している。交番から警察官が出て来た。
 マズイ! 俺は指名手配の男だった。
 どうする? 取り合えず俺は全力疾走で逃げることにした。
 このままでは俺は「強盗殺人犯」にされてしまう。狭い路地や住宅地を掻い潜って必死で逃げた。――遠くでパトカーのサイレンがする。
 ヤバイ! このままでは捕まってしまう。何か身を守る物はないかとポケットに手を入れると血の付いたサバイバルナイフが出てきた。これは俺のナイフだ! 以前、喧嘩した時に買ったもの。これは誰の血なんだ? ナイフまで出てきたら俺が犯人だと確定される。
 もう、駄目だ―――!!

 路地で小さな女の子が遊んでいるのが見えた。
 俺の頭にひとつの言葉が浮かんだ【人質】あの女の子を人質にして逃げよう。俺は女の子の腕を乱暴に掴んだ。
「ギャッ」
 驚いた女の子は悲鳴をあげた。その後大声で泣き出した。
「うるさい! 泣くな!」
 母親や近所の住民たちが出てきた。
「騒ぐと、このガキを殺すぞっ!」
 ナイフを喉に突き付けて俺は叫んだ。だが、手遅れだったパトカーやヘリが頭上を舞っている。いつの間にか俺は機動隊に取り囲まれていた。
「チクショウ! 人質を殺してやる!」
 その瞬間、空気を引き裂くような銃声が俺の耳をかすめた。撥ね飛ばされるような衝撃を感じて、ゆっくりと俺は地面に倒れていった――。

「起きてください!」
 男の声に驚いて目を覚ました。
「映画はどうでしたか?」
「寝てたから観てない。それより変な夢をみた」
「あなたが強盗殺人犯になって指名手配される夢でしょう?」
「なぜ知ってるんだ」
「それは夢じゃなくて現実にあなたが起こす事件だからです」
「えっ?」
「バイトを首になったあなたはお金に困って空巣を働きます。しかし、家人に気づかれ騒がれて、脅しに持っていたナイフで刺してしまいます。無理やり聞き出したキャッシュカードの暗証番号でATMでお金を下ろしている姿がバッチリ写っていますよ」
クックッ男の笑い声が館内響いた。
「当映画館ではあなたの未来を上映しました」
「嘘だ―――!!」
 叫んだ俺の手に血の付いたナイフが握られていた。どこかでパトカーのサイレンが聴こえる。


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このストーリーに関するコメント

13/02/05 泡沫恋歌

イラストは【1920×1080】 クールで かっこいい壁紙 900+ 【フルHD】からお借りしています。
http://matome.naver.jp/odai/2133583394265151801?&page=1


本の写真は自著「奇妙な映画館」です。

13/02/05 そらの珊瑚

恋歌さん、拝読しました。

夢なのか現実なのか、或いはこの映画館がその境界線となって、現在と未來まで混ざり合っているような不思議なおはなしでした。

坂道を転げていくように、悪いほうへ追い詰められていく指名手配の男の叫びが哀れです。起こしてしまった罪を誰しも嘘であったら、と思うものかもしれません。

13/02/05 こぐまじゅんこ

泡沫恋歌さま。

本当に自分の未来がわかる映画があったら、みたいような・・・。
やっぱりこわいような・・・。
面白かったです。

13/02/05 クナリ

犯罪を未然に防いでちょっといい話…とならず、この救いのないラストはとても好きです(というのも変ですが(^^;))。
いきなり引き込まれていく冒頭も良かったです。

13/02/05 泡沫恋歌

珊瑚さん、コメントありがとうございます。

この男はちょっと先の未来を映画で観てしまったのでしょうね。

こうなる前に、この運命を回避する方法があるとすれば、映画館をでてから、
今までの行動を反省してやり直すことしかありません。

13/02/05 泡沫恋歌

こぐまじゅんこ 様。

コメントありがとうございます。

自分の未来が観れたら、怖いですね。
でも、ちょっと観てみたいような、そんな気持ちを物語にしました。

13/02/05 泡沫恋歌

クナリ 様。

コメントありがとうございます。

そうなんです。
この救いのない、読後感の悪さが、返って印象的でしょう?

創作者の友人たちに言わせると、こういうミステリーが私の持ち味らしい(笑)

それって、どうなん?σ( ̄、 ̄=)ンート…

13/02/05 草愛やし美

泡沫恋歌さん、拝読しました。

ああ、やってしまっていたんですね、この男……。

恋歌さんの著書「奇妙な映画館」は、バージョンを変えて面白い話が、まだまだ続きそうですね。次々と新しい話できてくることを、楽しみにしています。

13/02/05 鮎風 遊

2000文字の中に、これだけの物語がよく入りましたね。

面白いです。
やっぱり「奇妙な映画館」はスゴイ。

次の話しを、期待しますよ。

13/02/05 yoshiki

展開がスピーディーなので読者を飽きさせない。

その辺が手腕だと思います(^<^)

13/02/06 泡沫恋歌

草藍さん、コメントありがとうございます。

このストーリーはいつもの行きつけのスーパーに「指名手配」の男の写真が
貼られていて、それを見て、もし自分の写真がこの「指名手配」になっていたらどうしよう?
っていう、思い付きから書いた話です(笑)

「奇妙な映画館」はいろいろな話がまだまだ書けそうです。

13/02/06 泡沫恋歌

鮎風さん、コメントありがとうございます。

この話はスピーディに進めて良かったと思います。
時空にきて、話の短縮化の勉強になりました。

人気のあった「奇妙な映画館」でまた2、3本書けたらいいなあ♪

13/02/06 泡沫恋歌

鮎風さん、コメントありがとうございます。

この話はスピーディに進めて良かったと思います。
時空にきて、話の短縮化の勉強になりました。

人気のあった「奇妙な映画館」でまた2、3本書けたらいいなあ♪

13/02/18 石蕗亮

泡沫恋歌さん
過去・現在・未来が映画館の中で混雑一体となる世界観が独特で面白かったです。
終わり方も良く、ここで終わらせて後が気になるところがうまいですね!

13/02/19 泡沫恋歌

石蕗亮さん、コメントありがとうございます。

この話は自著の「奇妙な映画館」のプロットで書きました。
自分の前世・現世・来世が観れる不思議な映画館なのです。

全国書店とアマゾンでも買えます(○>ω・)ь⌒☆

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