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こうさん

江戸川乱歩先生とレイ・ブラッドベリに触発された、不思議な世界を旅する冒険活劇ストーリー創りが身上です。

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将来の夢 電車内で読んでにやにや笑いされるような 小さな物語本の作者になりたいです。
座右の銘 とりあえず 突きあたるまで 進みましょう!

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諦めなければ必ず受かる!

13/02/04 コンテスト(テーマ):第二十四回 時空モノガタリ文学賞【 受験 】 コメント:0件 こう 閲覧数:1574

時空モノガタリからの選評

最終選考

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 私は受験生。だがもう、二浪している。
 私に批判的な周囲の者たちは、
「君には無理だよ」
「志望のハードルが高すぎる」
「志望動機が曖昧で、将来の見込みがない」
 など、ろくなことを言われていないが、母だけは、そっと涙をこらえながら、お前がそれを選ぶなら…と言って応援してくれている。
 私は主張する。輝く白い衣装と、正義感。そして絶望のふちにいる多くの人々を救うことができる偉大な力を手に入れることができるなら、自分の何を犠牲にしたって構いはしない、と。

 私は古今東西のありとあらゆる参考文献をあたり、知識のために足しげく関係者に取材までした。取材先でわけを話して、思わず笑われたり、逆におこられたりもしたが、めげずに食い下がった。頭の中はずっと、「受かること」でいっぱいだった。

 高校卒業後、同級生たちも、一浪目こそ温かい目で見てくれていたが、二浪ともなると離れていった。そんな無謀な志望をするのは変人だと思われた。
 でも私は、今年こそ受かる自信があった。知識はもうあふれるほどあり、決して忘れることなどなかった。何よりも私に自信を与えたのは、私が最初よりもっと善行に徹しているという自覚だった。
 私は肉食をやめ、菜食主義者になった。近所の子供を可愛がり、勉強の合間に災害ボランティアもやった。日曜日の集まりは欠かさず、そして時には、刑務所を訪れて罪びとを諭して希望を与える活動までやった。私の体を欲しがる…ボーイフレンドとは別れた。まあ、そろそろ彼も、私を変人あつかいしだして、かなり引いていたから、潮時だったのだが。
 私は受験のために、イメージトレーニングをして、時々高いビルの屋上の淵に立ち、両手を広げて大きく呼吸をした。風が肺を満たして、冷たくて心地よい。それで道行く人に見つかって、「こらー、やめろー!」と勘違いで怒られたりもした。そんな時は、警察や消防が駆けつける前に大急ぎで逃げた。決してただ死にたいわけではないからだ。

 そもそも、私がそこを受験しようと思い立ったのは、まだ高校生のときに見た、予備校の広告だった。

『東大・京大ほか、一大使大など合格者多数輩出実績あり』とあった。
「使大って…」私は笑った。私大の間違いでしょと。一大というのは、もちろん一ツ橋のことかしら。友達らも、一緒にその誤字に笑っていたものだ。ここでは到底、受からないだろうね、と。
 だが……
 その予備校のちらしに、何気にいたずら書きをしたことが、私の運命を変えた。全てが大きく変化し、友達によれば、突然目つきがおかしくなったというのだ。
 私はいてもたってもいられず、私を導く運命の十字架を求めて、町中を駆け巡った。
 そしてとうとう見つけた。古びた門をくぐって、そこにいた使徒に、ちらしを突きつけた。
「私、ここに進学したいです! 連絡先をぜひ教えて下さい!」
 最初は相手にされなかったが、私は頭を下げ続けた。そして何度も頭を下げた挙句、めまいに襲われ、くらくらっとしたとき、その奇跡は、起きたのだ。、
 高い建物の屋根と床のちょうど中間から、ステンドグラスを背景に光る微塵埃の隙間に、一枚の神々しい羽毛が出現し、そしてその上から、大理石のような滑らかな肌の、裸の幼児達が数人、降りてきたのだった。
「仲間になりたいっていう、変わり者の人間というのは、君かい?」
 そのうちの一人が言った。
「そうです」と私は答えた。
 すると耳をつんざくような、あざける甲高い笑い声が堂内に響いた。
「無理だよ」「だめだよ」「絶対不可能!」
 彼らは口々に言った。
 が、その時、ひときわ高いところから、慈悲深い声が、私達をどよもした。
「無理がどうかは…わからなーい…」
 私は感動でむせび泣いた。そしてついに、受験の許可だけは得たのだと知った。

 二月になった。そして私は今、こうして分厚い皮の表紙の本を手に、卒業した高校の校舎の屋上に立っている。
 今こそ、その時だ。
 私が一心に望んだ、『天使大学』の扉をノックして……。

 私は屋上の淵を蹴り、ふわっと宙に躍り出た。するとみるみる地上が近づき、私は一瞬、意識をなくしたようだった。
 気づくと、私は何もかもが輝く、白い天地に立っていた。

 私はついに入学できたのか? それとも…?


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