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ポテトチップスさん

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飛行機雲の下で教習

13/02/01 コンテスト(テーマ):第二十四回 時空モノガタリ文学賞【 受験 】 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:2533

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空を見上げると飛行機が一機、南に向かって飛んでいた。
2月の澄み切った青空に、一筋の飛行機雲が描かれた。
小岩隆弘は、欠伸をしながら『クボタ フォークリフト教習所』の門をくぐった。
受付で名前を伝えた後、指示された第一教室の扉を開けた。
「おはようございます。お名前は?」
白髪混じりの男が苛立たしげに聞いてきた。
教室の席には、7名の受講者が座っていた。
「小岩です」
「小岩さん、10分遅刻ですよ。つぎ遅刻したら許しませんからね」
小岩隆弘は、伸びきった頭を指の爪で掻きながら頷き、一番後ろの席に着席した。
「話の続きになりますが、皆さんには今日を含めて4日間の講習を受けて頂きます。本日の講習の最後には、早速ですが学科試験を受験して頂きますので、くれぐれも講習中に居眠りをしないようによろしくお願いします」
白髪混じりの教官が、後方の席に座る小岩に鋭い視線を向けた後、小さくため息をついた。

学科講習が始まると、すぐに眠気が襲ってきた。
中学・高校と授業中に必ず寝ていた小岩にとって、人の話を静かに聞くという行為は、犬が餌を前にして飼い主から「待て!」と言われているのと同じで、酷い辛抱が伴った。
眠気を紛らわそうと、他の受講生の後ろ姿に目を向けると、年配の男が多かった。
昼休み時間になり、母親につくってもらった弁当を食べ終えると、また午後の学科講習の時間が始まった。
窓から西日が差し込み、さらに時間が過ぎて夕日が沈もうとする頃になり、ようやく学科講習の時間が終わった。
白髪混じりの武田教官が、プリントされた用紙を1人1人に配り始めた。
「では、学科試験をこれから行います。問題は全部で35問です。当然ですが、学科試験に合格しなければ、次に進めませんので頑張って問題に取り組んで下さい」
10分もあれば回答できる易い学科試験だった。
当然、8人全員が学科試験に合格し、フォークリフト講習の1日目が終わった。

2日目も青空が広がっていた。
広い舗装された敷地で、実技講習が行なわれていた。
1台のフォークリフトを、生徒8人で交代しながら実技講習を受けるのだ。
自分の出番ではない生徒は、ベンチに腰掛けてジュースを飲んだりして、自分の運転の出番を待った。
「小岩君は、まだ若いんだろ?」
峰岸というおじさんが聞いてきた。
「18歳です」
「まだ若いんだね。人生これからだ」
峰岸は、自販機で買ったお茶を飲みながら言った。
「峰岸さんは、どうしてフォークリフトの免許をとりにきたのですか?」
峰岸は空を見上げた。つられて小岩も空を見上げた。
飛行機が一機、南に向かって飛んでいた。なぜ、あの重たい鉄の塊が空を飛ぶ事ができるのか、不思議だなと思いながら見ていると、峰岸が小岩に顔を向けていた。
「会社が倒産したんだよ」
「倒産ですか」
「うん。なかなか50歳を過ぎると、次の就職先を探すのに苦労するんだよ。私は、ずっと営業職一筋で生きてきたから、これといって手に職がないんだ。だからフォークリフトの免許を取得すれば、少しでも就職探しに有利に働くかなと思って、受講したんだ」
峰岸は、ペットボトルのお茶を一口飲み、また空を見上げた。
空には、先ほどの飛行機の姿は消えていたが、代わりに飛行機雲が一筋、子供が描いた下手な絵のように描かれていた。

フォークリフト講習3日目も、昨日と同じで実技講習がメインだった。
4日目の最終日、午前中は実技講習を受けた。
昼休みを挟んで夕方近くになり、武田教官が手に持ったファイルを開きながら言った。
「では、これから実技試験を受験して頂きます。これに合格しなければ、フォークリフトの資格は取得できませんので、頑張って実技試験を受けて下さい」
実技試験と言っても、決められた時間内にフォークリフトを運転し、荷物をA地点からB地点に移動させるだけの簡単な試験だった。
当然、8人全員が易く出来た。
暖房の効いた第一教室に着席した頃には、夕日が沈もうとしていた。
しばらくして武田教官が教室に入ってきた。
「えー、皆さん、おめでとうございます。全員無事にフォークリフト講習に合格しました。これが技能講習修了証です」
そう言って、技能講習終了証を掲げて見せた。

『クボタ フォークリフト教習所』の門をくぐる手前、峰岸が言った。
「小岩君は人生これからだから、後悔しないようにいろいろとチャレンジしたほうがいいよ。私の年齢になってから人生をやり直したいと思っても、もう手遅れだからね」
そう言って、小岩の肩を2、3度叩いた。
「峰岸さん、就職先決まるといいですね」
「うん。頑張ってみるよ」
それじゃ、と片手をあげて峰岸は西に向かって歩いて行った。
小岩は東に向かって歩いて行った。
空には、北斗七星が瞬いていた。

終わり


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このストーリーに関するコメント

13/02/08 かめかめ

なんにも起こらないね。ただの日記みたい

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