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Aミさん

ど素人です。山と動物と草木が好きです。朝顔を愛しています。生き物好きをこじらせてバイオテクノロジーなど学んでいました。文鳥とメダカ飼ってます。この秋にネコを拾ったので飼いはじめました。

性別 女性
将来の夢 動物保護活動のスポンサーになれるくらいの金持ちになりたい。
座右の銘 技術は見て盗め(とあるバイオ技術者から教わった、受け身では何も身に付かないという教訓)

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ふねがはこぶもの

13/02/02 コンテスト(テーマ):【 船 】 コメント:0件 Aミ 閲覧数:1151

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船といえば…思考の沼にぷかりと浮かび上がってきたもの。
それはガガイモの実だった。

小さい頃、冬の河川敷で涙型の不思議な形の草の実を見つけて、家へ持って帰ったことがあった。
「おおばあちゃん、これなあに?」
その頃はまだ曽祖母が存命で、いつも家にいて、キルトや編み物や造花、刺繍、ビーズなどなど、いつも何かを作っていた。私はなにかと曽祖母の居室に入り浸っていたものだ。
「おやおや、スクナビコナ様のお舟じゃないか」
「お舟?でも枯れ草に付いてたよ。草の実だよ」
「そうだね、これはガガイモっていう草の実。昔話でね、小さな小さな神様のスクナビコナ様は、蛾の繭の服をきて、この実の殻を舟にして、海の向こうから日本へやって来るんだよ」
そう言いながら曽祖母は古新聞を一枚広げて、私が持ち帰ったガガイモの実をひとつ取ると、パキリと割って見せた。中には真っ白な綿毛のついた円い種がぎっしり詰まっていて、曽祖母の皺だらけの指先が綿毛を掻き出すと、新聞の上いっぱいに綿毛の山が出来た。
「うわぁ!」
まさか綿毛が出てくるとは思っていなかった私は歓声をあげた。曽祖母は空になった殻を舟に見たてて、どんぶらこーと動かして見せながら
「これがアメノカガミノフネ(天乃羅摩船)だよ」
と優しげに微笑んでいた。

あの幸せだった暮らしが奪われてから四半世紀。
いま窓の外に見えるのは無限に広がる宇宙空間の暗闇だけ。
さあ、そろそろ眠る時間だ。
次に目を覚ますとき、船の行く手には美しい惑星が輝いていることだろう。幾度となく技術者団が送り込まれ数十年かけてテラフォーミングを施された、人類の第二の故郷となるべき星。私が操縦するこのチタン合金の船は、その大地に育つであろう最初の種子を運んでいる。--あのガガイモはリストに載せてもらえなかったけれど。この種子たちが正常に生育するかどうかで、入植計画の進捗は大きく変わる。

舟に乗ってやってきたスクナビコナの神は人々にまじないや酒造の知識をもたらした。ノアは方舟で洪水を乗り切った。エジプトの太陽神は夜になるとメセクテト(夜の船)で冥界を旅する。ああ、三途の河を渡るのも小舟だっけ…

今も昔も船が運ぶものは同じ。
命、希望。
流れ着くか、はたまた運び去るか…

私は、お守り袋に忍ばせてあるスクナビコナ様のお舟--今や非常に貴重なものとなってしまった野草の実--をそっと握って、コールドスリープに入った。

どうか、人類の未来が拓けますように。どうか、あの事故が起こる前のように清浄な大地で、再び穏やかに暮らせる日が訪れますように。


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