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荒木成生さん

はじめまして、こんにちは、荒木成生です。 二千字をオーバーした時の推敲作業に苦労しています。 説明不足になりがちですが、そこは想像力で補ってください。 二千字よりも長いものは小説投稿サイト『アットノベルス』に置いてありますので、興味があればこちらもよろしくお願いします。 ペンネームは同じです。

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携帯電話付可動式フィギュア

13/01/13 コンテスト(テーマ):【 携帯電話 】 コメント:0件 荒木成生 閲覧数:1226

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「朝だよー! 朝だよー!」
 まどろみの中、起床を促す声が聞こえる。
「起きて! 起きて! 朝だよー!」
 誰だ? 母さんの声じゃないし……、あぁ、思い出した。昨日買った携帯電話の目覚ましだ。
 この目覚まし、どうやって止めるんだっけ?
 ベッドの脇の机には、およそ携帯電話とは思えない人形が充電器の上に乗っている。それは携帯電話付可動式フィギュア、通称フィギュアフォン、さらに略してフィグホと呼ばれているものだ。
 フィギュアは今一番人気のアニメキャラ・軽音(かるね)ミオ、それに携帯電話機能を付けている訳だが、何故そのようなことをしたのかといえば、日本だからとしか言い様がない。当然のことながら日本国内でしか発売しておらずガラパゴスな製品となっている。
 この目覚ましを止めるには……、今のポーズが右手が天を指し左手が地を指す天上天下唯我独尊ポーズだから、右手を下げれば、
「おはよう! おはよう! 七時だよー!」
 これで目覚ましは停止だ。朝の支度を整えて、さあ出勤だ。
 フィグホはスーツの胸ポケットに入れ、両手でポケットの布を挟み込むようにしておけば多少前傾姿勢になっても落とすことはない。この状態で移動すればナビモードになる。
「次の信号を左だよー……、駅まであと五十メートルだよー」
 フィグホによるナビが続く……、と、ここで、
「初めーてじゃなーいのさ、いつでーもいーっしょなら、今なーにか感じーてるコーカコーラ、爽やかテイスティー、アーイ、フィール、コーク♪」
 急に歌いだしたよ……、と思ったら自販機の前だった。これは企業の宣伝で、終了後一分以内にその商品を購入すれば割引で購入できる……、自販機で百二十円のコーラが百円か……、
「じゃあ、一本買うか」
「毎度ー、百円だよー」
 返答したのは自販機ではなくフィグホだ。オサイフケータイ機能も付いているので指定日に銀行口座から通信料金と一緒に引き落としされる。
 電車が来るまでまだ時間がある、コーラを飲みながらゆっくりと待つとしよう。
「とぅるるるるるる……、とぅるるるるるる……」
 電話だ。こんな時間に? 誰からだろう?
 通話する……、それにはフィグホを取り出し、脚を持ちつつアンテナとなる左手を挙げさせればいい。
「もしもし」
 傍から見るとお人形さんに話しかける変質者に見えるが、それを気にしていたらフィグホは使えない。
「がちゃ……、通話終了だよー」
 くそ、間違い電話かよ。
「今の番号、受信拒否にしといて」
「了解だよー」
 このフィグホは言葉で指示をするか、フィギュアを稼動させたポーズによって操作する。
 そうこうするうちにようやく電車が来たようだ。マナーモードにするにはフィギュアを二つ折りに……、というか立位体前屈の姿勢だ。
 電車に乗り込んでからはタブレットの出番だ。フィグホはモバイル無線ランルーターの役割も果たし、五台まで同時接続ができる。
 乗車中にフィグホのクチコミ評価を書き込んでおこうか……、★★★★☆ってところかな。星一つマイナスなのは時折赤の他人から白い目で見られるためだ。

 フィグホ購入から半年後に三年の海外出張の辞令が出た……、できればもっと早く言って欲しかった。フィグホは海外でネットは繋がるけど電話が繋がらないし、契約が二年縛りなので解約すると違約金が発生する。
 持って行ったよ……、ロサンゼルスまでフィグホを持って行ってしまったよ。予想されてはいたが、職場の同僚からはクールという言葉よりヘンタイという言葉を多くもらったよ。
 唯一の救いは海外出張が終わって日本に戻れば一段階昇進することが確定されていることだけだ。毎年一名、入社五年以内の若手から海外出張者が選ばれ出世コースに乗る……、帰国子女で英会話に不安がない自分には打って付けの制度だった。
 三年経ち、日本に戻ってみると……、そこはやっぱり日本だった。
 フィグホが進化していた……、すでに携帯する必要もなくなっていた。
 歩いているよ……、携帯電話だったものがユーザーに連れられて歩いちまってるよ……、話には聞いていたが、アンドロイド搭載アンドロイドが歩いているよ。
 どういうわけかアンドロイドの軽音ミオだけがすれ違いざまに会釈をしてくれるのだが……、フィグホの軽音ミオ先輩への敬意であることを後に知った。


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