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リーマン一号さん

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隠し味

18/07/07 コンテスト(テーマ):第1回 時空モノガタリ短編文学賞 コメント:0件 リーマン一号 閲覧数:90

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ラーメン。

中華麺とスープを主とし、焼豚やメンマ、煮卵などをトッピングした麺料理。

別名では中華そばや支那そば・南京そばなどと呼ばれるが、その歴史は古く、

今日では醤油・塩・味噌・とんこつなどスープの種類によって区分けがなされ、日本の第二の主食とも呼べるほどの人気を誇る国民食である。

そして・・・

私が初めてラーメンを食べたのが、20年前の10月4日。

貧しい家庭で育った私は一日に三食の食事ができる日のほうが珍しく、夜店屋台が道路脇で商をしていても、指を咥えてただじっと見つめていることしかできなかった。

そんなある日のこと、遠くで匂いだけを楽しむ私を健気に思ったのだろう・・・

一人の男が屋台から顔を出し、私の手を引いて椅子に付かせると、一杯のラーメンを注文した。

湯気を吹かした熱々のラーメンはすぐにテーブルに並び、男は「食ってみな」と遠慮がちな私の背中を押した。

今でもその味は鮮明に思い出せる。

まるで水に塩を加えたような淡泊な味わいであったが、私を魅了するには充分すぎるものであった。

以来、頭から片時もラーメンを忘れることができなくなった私は、大人になって懐事情に余裕ができると、その欲望は爆発した。

一年365日の内、私の食べるラーメンの数は4桁を越え、凡そ1年半で付近ラーメン店をすべて食べつくした私は、仕事を転々としながら県外へと足を運んだ。

ラーメンを食べることが仕事になったのがそれから3年後だ。

メモ帳代わりに使用していた私のラーメンブログに火が付き、ついにはテレビ局から出演の依頼が殺到した。

最初の内はラーメンに対する私の変態っぷりが面白おかしく映ったのだろう。

ただラーメンを食べる、それだけでお茶の間を沸かすことができたが、新しい物好きの視聴者はすぐに私から興味を無くした。

それでも、いくばかの金を手にした私は人知れずラーメンを食べ続けた。

そして、ついにこの店が記念すべき一万件目。

私は迷うことなくラーメンと書かれた赤暖簾を潜り、店内へと進んだ。

「いらっしゃい!」

威勢のいい挨拶をする店主は冬なのに汗をかき乱している。

どうやらこのラーメン屋は当たりらしい・・・。

飯時でもないにもかかわらず店内には複数の客の姿が見え、私は心の中でほくそ笑むと、ラーメンを注文した。

店主は「あいよ!」っと返事をし、手際よくラーメンを作り始めた。

それからわずか数分後には熱々のラーメンは私のもとに届けられ、私は小さく「いただきます」と声にすると、ラーメンを口をした。

なるほど。この時間でも店が繁盛しているわけだ・・・

魚粉と豚骨のダブルスープを基本としたラーメンは麺とよく絡み、程よいコクを引き出している。

久方ぶりの当たりと言えるだろう。

だが、

食べれども、食べれども、人情でダシをとったあのラーメンには及ばない。


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