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高橋螢参郎さん

何でもいいから金と機会おくれ

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学校で学んだ事

13/01/07 コンテスト(テーマ):第二十一回 時空モノガタリ文学賞【 学校 】 コメント:0件 高橋螢参郎 閲覧数:1494

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今にして思えば、先生は神様だった。
いや、人間ではない、とするのが正しいか。外界から切り取られ、ともすれば軍隊にすら程近い謎の集団行動を強いられていたあの学校という歪な空間において、確かに統率者が人間であってはならなかったのかも知れない。そして元々子どもは動物であると考える。あそこは学習という名の調教、矯正施設だ。その証拠に社会に出てから最も役に立ったのは、初等であるところの小学校で学んだ事だった。結局のところ個性が云々と未だに叫ばれているが、それを潰して平坦にするのが教育の真の役目だ。
だがたちの悪い事に、そういった事実を俯瞰的に理解できるのはいつだって時が過ぎ去った後なのだ。だから自分は先生は人間ではないのだと、言葉や生物学上の分類ではともかくとして、自身も気付けぬ程の心の底ではそう思っていた。きっと親との間で巻き起こっている種々の軋轢も、この辺りの考え方が未だに尾を引いている親が多いからなのだろう。無論これが子どもの場合は別だ。期待する権利もまだ、あるとは思う。
閑話休題。他人の事を滅茶苦茶に書いたが、それも僕自身が当事者だったから言える事なのだ。それだけは言っておかないといけない。その話を、僕の傷の話を、今度こそちゃんとしよう。

忘れもしないあの日、僕は教室で苦境に立たされていた。
周りには女子が数名。うち独りは席で俯いている。その俯いている女の子の事を仮に斉藤さんとでもしておこう。
「斉藤さんの笛を舐めたでしょ」
と女子が言う。無論そんな事はしていないが、当時の僕は冗談すらも通じないような人間で率直に「していない」と告げる事しかできなかった。
「見た子がいる」
この年頃の女子は世界で一番残酷な生き物だ。した、と屈服するまで延々と同じ事を続けるつもりだったのだろう。対して僕はと言えばやはり「していない」と言うだけだった。それしか言う事はない。随分と汚れてしまった今ならともかく、当時の僕は随分と高潔だった。そんなフェティッシュな趣味に何の興味も持っていはいなかったし、自身の股間に付いているブツの真の機能についてなど想像すらも及んではいない。
故にこう言ったのだ。
「そんな気持ちの悪い」と。
すると斉藤さんが泣き出してしまったではないか。もちろん、斉藤さんが気持ち悪い訳ではない。むしろ可愛らしい女の子だった。ただそんな変態的な行為に対し、生理的な嫌悪感を覚えたからこその発言である、とそんなようなニュアンスの事を必死で説明したものの、小学生女子の斉藤さんと、つまるところ何かネタさえあればそれでいい周りの女子にその主張が聞き入れられる事はなく、冤罪の疑いが晴れるどころか却って悪者にされてしまった。
そしてこの事件が少々長引いたので、遂に僕は先生へと訴えた。当時は連絡ノートというものがあって、悩みなどあれば小さな事でもいいから何でも書けというから、書いた。今考えればただのテンプレ、常套文句だ。
その場では無論同情的なコメントを寄越すのだが、結果的にそれ以上の動きは少なくとも僕の目にする範囲では何もなかった。しかし僕としてはもう縋るものは先生しかなかったのだ。二度三度書いたが、所謂「善処します」といったような回答以上のものは得られなかった。
当時は到底理解できなかったものの、成程、先生にとっては結局一年単位のルーチンワークだ。4月になればまたリセットボタンを押せるとでも考えているのだろう。だが僕は未だに、あらぬ疑いを少しでもかけられると全身の毛穴が開く思いがする。もはや立派な心的外傷だ。
相手は人間、決して妙な期待はするな。
これが学校で教わったどんな数式よりも、一番大事な事だった。


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