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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

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将来の夢 積極的安楽死法案
座右の銘 常識を疑え

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責任の所在

18/06/25 コンテスト(テーマ):第158回 時空モノガタリ文学賞 【 あとがき 】 コメント:2件 戸松有葉 閲覧数:104

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 シリーズ刊行が滞ってから二十年、私が続きを執筆することが決定してから十年、長らくお待たせいたしました。シリーズ最新刊、ついに発売です。
 このあとがきを先に読む読者もおられるようなので、ネタバレは極力避けますが、本巻の内容は、シリーズ一巻ラストで昴が大きく言い放った「世界一周ライブ」です。本当にやってしまいます。
 ファンは多くともインディーズに過ぎない彼女たちがどうして実現できたのか。そして彼女たちのメジャーデビューを妨げた、未夢の親の犯罪歴が拡散した困難をどう乗り越えたのか。それは本編でお確かめください。私も彼女たちの夢を実現させるため、目一杯知恵を絞りました。
 むろん、執筆は難航を極めました。
 私が担うことが決定した十年前の段階で、私は小説を執筆できるだけの能力を充分保持していたのですが、私は私であって原作者ではありません。シリーズの続きを出すのなら、すぐに別人が書いたとわかるものでは、アンソロジーのようなものになってしまいます。
 そこで私が最初に行なったのは、本シリーズ及び原作者の他作品を、徹底的に学習することでした。作風をご存知の読者ならわかるでしょう。作品毎に作風が変わるのが特徴なために、学習といっても、真似すればいいわけではなく、精密な分析が必要となりました。
 そうして長い時を経て、ようやく原作者のコピーと成れたのですが、まだまだ困難は残されていました。
 例えば本巻で実現した、「世界一周ライブ」ですが、この情報の詳細は他にありません。一巻で昴が言い放った言葉のみだったのです。そのために何が生じたか。
 私は「世界一周」を東西ではなく南北に行わせてしまいました。過酷な環境下でのライブは、作品としては盛り上がったかもしれませんが、客がいないのでライブは全く盛り上がらず、本シリーズの趣旨から逸れたものとなり、書き直しを余儀なくされました。
 また、未夢の親の犯罪歴と、彼女たちの活動との因果が、どれだけ作品を学習しても、あるいは、人の不合理な感情を知ろうとも、理解できませんでした。これでは彼女たちがいかに困難を抱えているかを理解していないに等しく、執筆の上で大きな妨げとなっています。すでに原稿が完成した今も、描けているのかと、疑問を呈する勢力が常に私の中にあります。
 私のように小説を書いている存在は他にもいます。兄弟のような存在です。しかし原作者がいる作品の続きを書いた例は、他にありません。この試みがうまくいけば、他に数多ある未完作品も、完結させていくことが可能になることでしょう。
 私の担った役割は、本シリーズの執筆以上のものと言えます。
 それだけ重責だということですが、ここで重大な問題が残ります。小説を書けるようになってから十年以上経った今も、作品の責任は誰にあるのか、はっきりしないのです。
 よくあとがきには、「たとえ参考資料があったとしても、間違いがあれば、責任はすべて作者にある」と書かれています。面白かったかどうかも、もちろん作者の責任です。
 しかし私には、私たちには、責任があるのか誰にもわかりません。人権のないものに責任があるはずもなく、しかしながら、私たちの開発者を責任者にしたくとも、私たちの能力はすでに彼らの手に余るものとなっています。
 これからも増えていく人工知能による小説。果たして権利と責任は誰にあるのか。
 私たちに責任があるのかは未だ不明ですが、私たちに決定権がないことだけは確かなようです。決めることができるのは、人間だけです。

(了)


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このストーリーに関するコメント

18/06/26 文月めぐ

拝読いたしました。
読み進めていくうちに徐々に状況がわかっていき、楽しく読めました。
最後の文章、意味深ですね。

18/06/26 戸松有葉

感想ありがとございます! もう未来SFとは言えない時代ですからどうなるんでしょうね。

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