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紫聖羅さん

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ゾンビパパ!

18/06/25 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:0件 紫聖羅 閲覧数:87

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ある日突然、大好きなパパがいなくなった。「必ず戻ってくるからね。それまで、絶対外に出てはいけないよ」その言い付けを守っていた。
それから2ヶ月。
「ユキちゃん、ただいまーパパだよー!」
玄関の方から扉を叩く音がする。パパが帰ってきた!
私は急いで玄関の扉を開ける。そういえばパパは、私のことを、ちゃん付けで呼んでいたっけ?
そこにいたのは、到底人間のものとは思えない緑がかった青い肌をしたーーーー。
「ゾンビ!!」
思い切りゾンビに回し蹴りをする。嫌々始めたテコンドーがこんなところで役立つなんて。
「いきなり蹴るなんて、ひどい!」
そいつは涙目になりながら頬を手の平で抑えていた。
「いや、顔は蹴ってないし。そんな青い顔蹴ったらお気に入りの靴下が汚れそうだし」
「パパを蹴るなんて! 息子にだって蹴られたことないのに!」
「私は一人っ子だっ! 大体パパはそんなに青くない! あと臭くない!」
「えっ! 僕臭いの?」
「ゾンビは臭いに決まってる!」
「清潔だもん! ちゃんとお風呂だって入ってるもん!」
「やめろ風呂が腐る!」
実は全然臭くないけど、見た目が臭いの想像力を掻き立てる。私は素晴らしく想像力豊かな子供なのだ。
「というか本当にゾンビなんだな。お前はすでに死んでいるんだな?」
「そう、僕はすでに、死んでいる……。そして君の……」
「パパじゃないからな、絶対」
肌が青くて臭そうなことを除けば、見た目はパパより5歳くらい若そうだ。多分20代後半だ。あと、やっぱり見た目は臭そうだ。
「僕は今日から、ユキちゃんのパパになります」
ゾンビの満面の笑み。これは気持ち悪い。
「……子供は親を選べないって、こういうことではないと思う。捨て子が狼や熊に育てられるおとぎ話は聞いたことあるけど」
「ええ?! 狼とか熊のゾンビの方が良かった?」
「……いや、ゾンビから離れようよ」
そこでゾンビは思い出したように「今日はこれを持ってきたんだ。蹴られたせいで少し潰れちゃったけど」嫌味を言いながら白い箱を取り出す。中には私の大好きなチョコレートケーキがホールで入っていた。
「今日は君の8歳の誕生日だからね」
そうだ、誕生日にチョコレートケーキを買う約束、パパがしてくれていた。
「だ、大体なんであんたゾンビなんだよ。私の環境への適応力に感謝しなさいよ」
「そっか、ユキちゃんは外に出てないんだったね。外の世界は理性を失ったゾンビが溢れてるよ」
「理性を失ったゾンビ?」
「そう。中には1億人に1人の割合で、理性を失わないゾンビもいるんだけど」
「アンタがそれなの?」
「いや、僕は違うよ。ぼくもいつか、理性を失う。個人差はあるけど、2ヶ月以内にゾンビは理性を失うことが分かっている」
「そんな恐ろしいゾンビがこんなか弱くて可愛い女の子のパパなんて、すっごく怖いんだけど」
「僕はそんな8歳の女児が怖いんだけど。まぁだから、これをユキちゃんにあげる」
手渡されたのは、黒くて重い、鉄の塊。
「いいかい、頭を撃ち抜くんだ。大丈夫、ユキちゃんならできるよ」

大丈夫、ユキならできるよ。パパはよくそう言ってくれた。

それから1ヶ月経っても、そいつが理性を失うことはなかった。
最初の3日は私の素晴らしく豊かな想像力のせいで度々吐き気に襲われたが、実際臭くもなければベトベトもしていない。むしろ肌はカッサカサだ。
ゾンビなんて気持ち悪いが、まぁ、1ヶ月前よりマシかもしれない。
だが、それから更に15日後、私は彼に拳銃を向けていた。
「ユキちゃ……は、早く撃つんだ」
彼は呻きながらよだれを垂らし、私の肩を掴む。目が血走っている。
ーーパァァンッッ!!
鼓膜が破れそうだった。揉み合ってるうちに撃ってしまった。
倒れた彼に駆け寄った。
「ユ、ユキちゃ……本当は……き、君こそが、理性を失わないゾンビなんだ。君のパパは、それに気付けなかっ……君を救うため、理性を取り戻す方法を研究して……。でも、研究の途中で試料が流出して、多くの人がゾンビになった……。僕も、そして、パパも……」
パパは既に理性を失っているかもしれないそうだ。
「聞いて。頭は撃ち抜いてない。首に当たったの。撃てるわけないじゃない! 大丈夫、私が最強なら、私がやり遂げる! 絶対、助けるから! 大丈夫だから、パパ!!」

そして、私は今日も探している。町にはゾンビが増え続けている。
ゾンビか人間かなんて関係ない。取り戻すんだ。2人のパパを。
私にも責任がある。ついでにこの荒廃した国も、救ってみせる。8歳の女児をなめるなよ。大丈夫、私ならできる。


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