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ジョゼさん

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最後のかくれんぼ

13/01/05 コンテスト(テーマ):第二十二回 時空モノガタリ文学賞【 お寺 】 コメント:5件 ジョゼ 閲覧数:1872

時空モノガタリからの選評

最終選考

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「もう二度と、ここにきちゃだめよ」
そういわれたのが中学校2年の夏だった。

ぼくは毎年夏になると、祖父の家がある田舎に遊びにいっていた。
家は山の麓で、竹林やお墓、川など自然はたくさんだが気持ちのいい自然というよりは少し不気味なところだった。

祖父は配達業をしていて明日配達する荷物の準備をし、祖母はその手伝いをしていたのでぼくは一人で遊んでいたが、実は一人遊び相手がいた。
家を下った先にお寺がある。そのお寺の裏に回るとそれまでの竹林が開け、広々とした円を描いたような空間に小さな祠があり、そこにいくと女の子がほこらの前に座っているのだ。
初めてあったのは自分が7歳の時。白い服をきておかっぱの13、4歳ほどの少女。名前は「サエ」と言った。
ぼくは、人じゃないなと感じたが、幽霊とかと言ったたぐいでもないことも感じた。不思議と怖くもなかったしサエの声は柔らかくとても心地いい声だった。
「あら、男の子。どこからきた?」
まるでどうしてこれたのだろうという意味の含まれる話し方だった。
それからぼくとサエは毎日寺の裏でサエが教えてくれるいろいろな遊びをし、日暮れの頃になるとかくれんぼをすることになっていた。そして毎回鬼はぼく。
「じゃあいい?私がかくれるから、日暮れまでに見つけられたら私の負け。日が暮れても見つからなかったら私の勝ち。いつもみたいに見つからなかったらそのまんま帰るんよ?」
そういって毎回かくれんぼをするが、結局一度も日が暮れるまでにサエを見つけることは出来なかった。

毎年僕らは夏にかくれんぼを繰り返した。そしてぼくは年をとるが、サエは1歳も年はとらない。そして中学2年生の最後の日、サエがいった。
「今日がさいごよ?」
「え?」
「来年はサエを探しちゃいけんのよ。もう二度と、ここにきちゃだめよ」
そう言って、少し残念そうに笑った。ぼくとサエは、同じくらいの年になっていた。結局その日のかくれんぼも、彼女を見つけることは出来ずに日が暮れてしまい、ただもう一度あいたかったぼくは祠の前に帰りサエの名前を呼んだが彼女が出てくることはなかった。

ぼくはもう何年も前からサエが好きだった。
そのサエに二度と来るなと言われ自分の家に帰ってからもサエのことが頭から離れなかった。
中学3年の夏、受験だったが向こうの方が静かだからとこじつけ、ぼくは祖父の家に来ていた。
なぜ来るなと言われたのか、いまでもサエの寂しそうな表情が離れない。
ぼくは到着した次の日の早朝、意を決して寺へ向かった。
思春期にもなると、いろいろなことが頭を巡る。叶わないことをしているとわかっていても気持ちはどうしようもなかった。ほこらに向かう脇道を通ろうと思った時、その脇道がないことに気付いた。
「うそだろ…」
毎回通っていたその場所を間違うはずがない。そんな……
サエに会いたい。ぼくは心の中で(お願いサエに会わせてお願いします)とすがる様に願いながら林の中に足を進めた。
「サエ、サエ…!」
ざっ
「!」
崖だった。木々で見えなかった。下に流れるのは上流の流れの速い川。
もうダメだと思ったときに、パシリと誰かに腕をつかまれた。
「みーつけた」
そこには必死に腕をつかむ、サエがいた。
「サエ…!」
「だから、きちゃダメだっていったでしょ…私は自分より歳上の男の人の命はもらわなきゃいけ無いんだよ。それがこの山の掟。でも、君のはもらえない」
サエはぼくのつかんだ腕に身を寄せ抱きついた。そしてそのままぼくたちは川に落ちていった。
ぼくは水に落ちたのか、どうなったのかもわからないぼんやりとした頭でサエ言葉を聞いていた。
サエは山の神のような者だと言うこと。
神は万能でもなければいいヤツばかりでもないということ。
ぼくのことが好きだから、自分の年を越えたぼくにこない様にと伝えたこと。
この山自体がサエのためにぼくを殺そうとしたこと。
そして、掟を破ったサエは消えねばならぬこと…
「サヨナラ」
サエが消えるなんて。ぼくのせいで。
身体は一ミリも動かない。ぼくは声を振り絞った。
「サエ…が…すき」
それを聞いたサエは優しく微笑んだ様な気がした。

次に目覚めたとき、病院のベットの上だった。
竹林の中で見つかったぼくは3日間の昏睡状態で、近くで母が泣いていた。






数年後、なんどか寺までは足を運んだが、自分と引き換えにまで守ってくれたサエのことを思うとあの場所まで足を運ぶことが出来なかった。
ある年大学4年の夏、寺をぼんやりと眺めているとお坊さんとそのお孫らしき子が出てきた。7歳くらいの女の子。
ぼくははっとした。
「これ、さえ!」
その子はぼくを見て一目散に走ってきてそして
「かくれんぼ、しよう」
「…いいよ」
泣くのを必死にこらえながら、ぼくはその子に、小さなさえに笑いかけた。


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このストーリーに関するコメント

13/01/06 草愛やし美

ジョゼさん、拝読しました。

素敵な純愛に感動しました。男の子の一途な想い、そしてサエの想い、結ばれることはなかったけれど、その想いを大切にしていた彼への贈り物だったのでしょう。小さなさえに会えてよかったと思わずほっとする結末でした。

13/01/06 クナリ

ホラー、ロマンス、掌編の中にさまざまな要素が詰まっていました。
読み応えがありました。

13/01/13 ジョゼ

すみませんバタバタしていましてコメントの返信遅くなり大変申し訳ありません

13/01/13 ジョゼ

>草藍さん
コメントありがとうございます。最後サエを登場させるかすごく悩みました。でも私自身もサエに会いたかったのかもしれません(笑)この結末にご支持いただけて嬉しかったです。

13/01/13 ジョゼ

>クナリさん
コメントありがとうございます。2000文字の中で表現すごく悩みましたが嬉しいコメント頂けて感無量です!

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