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syo-tanさん

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暴衛主義

18/06/18 コンテスト(テーマ):第1回 時空モノガタリ短編文学賞 コメント:0件 syo-tan 閲覧数:149

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人を殺す事は、なぜしてはいけない事なのか。
この問いに対して、なぜしてはいけないか、論理的にかつ簡潔に小学1年生でも即座に理解出来るほど明快な答えを持っている人が世の中に何人居るだろうか。
自分がされて嫌だから。
では、自殺志願者が人を殺す事は人を喜ばせる事になるのか。
法律で、そう決まっているから。
法律でなぜそう決めたのか?問いがループする。

大人は皆、洗脳されている。
それが、タカシの口癖だった。
大型バイクに跨がり、改造マフラーの爆音を鳴らして街から街へ一気に駆け抜ける。
暴走族なんて言葉でタカシの存在を片付けるのは、インドの料理は全てカレーと言っているようなものだ。
タカシはタカシという存在だ。
幼稚園からずっと一緒だった。
8歳の頃にアマチュア無線の免許を取り、10歳の頃には年齢と性別と年収と生活習慣と趣味と特技を打ち込む事で、人間の値段を表すJavaで作ったanroidアプリを作成し、そのアプリがダウンロードランキング10位になった事でテレビ局が取材に来た。
12歳で無免許で原付バイクを乗り回して警察に補導され、中学に上がると調子のんなと言って放課後よってたかってボコボコにしてきた先輩達を、自作のドローンにエアガンを装着したタカシ特製のラプターで襲撃していた。
ラプターはその後改良され、不格好にエアガンを装着するのではなく自作の銃砲を備え付け、弾はBB弾から3Dプリンタで作成された樹脂製の弾に代わり、その弾をリンクベルトで繋いでプロペラに接触しない部分にこれでもかっていうくらい巻きつけた。
1秒間に連続6発発射出来るラプターの銃砲の威力は、鼻の頭に当たれば肉にめり込んで第三の鼻の穴が出来る程だった。
眼球に直撃すれば、恐らく失明していただろう。
高校生も恐れるタカシのラプターは、タカシのバイクと並走して常にタカシを守った。
カバンに入っている電源は、遠隔でラプターをワイヤレス充電していた。
ラプターという衛星が守るタカシは、この辺りの中高生の不良社会の中で無敵だった。
2年生に上がると、タカシは学校に来なくなった。
心配になった俺はタカシの家を訪ねた。
タカシの家は50坪ほどの土地に、こじんまりとした2階建ての一軒家が立っている。
いかにも中流階級の家、という感じだ。
2階に上がり、6畳程のタカシの部屋には所狭しとドローンが飾られていた。
天井から吊るされた巨大なラブターと、壁に掛けられた数十機の小型のドローン達。
ショーケースには、自作と思われる電子回路むき出しの小型の人型ロボットが5〜6体程飾られていた。
グラビアアイドルや二次元のアイドルのポスターは貼られておらず、代わりに石原莞爾の肖像画が額縁に入れられていた。
大きな机の上には4つのモニターが並んでいる。
「本体は2つだ。WindowsとUbuntuで使い分けてる。Ubuntuのデフォルトのデスクトップ環境、見たことあるかい?」
タカシが学校を休んで何をしているのかというと、Torを用いてダークウェブを閲覧していたらしい。
「普通の検索エンジンじゃ出てこないサイトが見れるぜ。英語が多いけど、クスリの売買サイトや児童ポルノまでなんでもアリだ」
企業から流出したクレジットカードの個人情報やアクティブなEメールアドレスや個人の電話番号の一覧なんかもここで手に入る。
タカシの目は輝いていた。
小学校3年生の時、一緒にスーパーで惣菜コーナーの焼き鳥を万引きした時と同じ目だ。
4年生に上がると、アプリの件でテレビの取材が来てしまってタカシは一躍有名になってしまった為、目立つので一緒に万引きも出来なくなった。
「ユイ、これからの時代、暗号通貨が世界を席巻するんだ。国の把握出来ない金が世界に溢れかえる。そうなると、税金を徴収出来ない国家が潰れる。」
俺は女の遊びが嫌いだ。
ハッキリとした意見を持たない奴とか自分の意見を後で変える奴とか平気で嘘つく奴とかすぐ泣く奴とか見てると蹴り飛ばしたくなる。
子供の頃から、男の子と遊ぶ事が多い。
金玉ついてる癖にウジウジしてる男は「お前にそんなもんぶら下げてる資格ねーよ」って言って金玉蹴ってやった事もある。
品川っていう、ウジウジした男子だ。
品川が俺になにかしたわけでもないし、俺の友達を傷つけたわけでもない。
なにもしないからムカつくんだ。
あの表情と声と目線と歩き方見てるとお前将来確実にSMクラブで女王様に4万も5万も払って靴舐めさせられて勃起する変態になるよって思うと今のうちに金玉蹴ってあげた方が身のためだ。
蹴られた品川、痛そうに股間抑えてる時ちょっと笑ってた。
くだらない事して集団に紛れ込んで高みの見物しようとする女子集団に飛び蹴り食らわせた事もある。
泣こうが喚こうが女子同士の喧嘩の仲裁は困難を極める。
教師は基本的に面倒な事に巻き込まれる事が嫌いだ。
特に正義がどちらにあって悪がどちらにあるのか、断定しにくいシチュエーションを嫌う。
とはいえ、暴力というとても分かりやすい学校内では悪と決められた行為を行使した俺がもう少し責められてもいい気がしたものだが股間にくだらない金玉をぶらさげた品川を大人にしたような教師連中では学校1の問題女子である俺を断罪するには少々精液の量が足りないらしい。
良質な男性ホルモンで満たされたタカシの金玉は暗号通貨が世界を席巻し、既存の国家が税金を徴収出来なくなって潰れると語っている。
俺とタカシは、お互いの家を行ったり来たりはするが決して付き合っているわけではない。
ただの幼馴染だ。
暴れん坊で通っている俺は雌型のタカシとからかわれる事もあるが、あながち間違っていない気がするから腹が立つ。
「国が潰れた後、この世界はどうなるの」
いい質問だね、といって物覚えのいい教え子を持った家庭教師のインテリの笑顔をタカシが振りまいてくれるのを期待したのだが真顔だった。
「中央集権的なモノを、全て無くすんだ。政府、企業、警察、病院、既存の宗教、NPO団体に至るまで全てだ」
タカシが何を言っているのか分からなかった。
このままクルーザーで遠くまで行っちゃいそうなタカシに、取り残された俺は孤島で一人全裸だった。
お願いだから行かないでの一言が言えなかった。
四つん這いになってお尻を向けてタカシの興味を俺に集めたかった。
だからここでえっちしてもいい、と思った。
無言でキーボードを叩くタカシの腕に、Bカップの発展途上のおっぱいを擦り付けた。
タカシはモニターの画面に、映し出された情報が示すこの世界の先の先を見ているんだろうか。
擦り付けたおっぱいの柔らかさに気付いたタカシが、出来の悪い教え子に優しく教える法学部生の家庭教師の笑顔で微笑んだ。
「外で裸になったり、人の目のつく所でセックスしたり。どうしてやっちゃいけないと思う?」
そんなのえっちしてみないとわかんないよ。
「公序良俗って言葉、わかるか?」
法の一般原則なんだけど、これが俺達が室内犬である何よりの証拠さ。
室内犬が部屋で無駄に吠えると、飼い主に怒られるだろ?
誰彼構わず、路上で裸になったりセックスすると困るのは、俺達自身じゃない。
俺達の飼い主の方なんだ。
飼い主って誰?
俺達が人間として動物として、ありのままに生きる事を阻み、労働を強いる連中さ。
その連中が全部、この世界から駆逐されると人々の常識が根本から変わる。
本来我々人間が、無意識の内に知っている神の生き方が出来るようになるんだ。
神の生き方とは、ロゴス、こうしたいという意志を実行することだ。
そして飼い主達が最も恐れる思考のパラダイムシフトが起こる。
「ぱらだいむしふと?」
これまで常識だと思っていた事が、全て覆されて新しい常識やパターンを得る事だ。
18世紀後半の産業革命やインターネットの普及、これから来る暗号通貨の普及による世界の変革の事だよ。
「パラダイムシフトすると、道端でえっちできるようになるの?」
タカシの興味をえっちに注がれるように、しきりに話の合間にその単語を挟めてみる。
タカシは突然立ち上がり、棚の上にある小さな冷蔵庫を開けてコーラの瓶を2つ取った。
「酒もあるんだけどな、脳縮むからこれで酔っ払え」
コーラの瓶で乾杯して、タカシは一息で半分ほど飲み干した。
俺はげっぷが出る事を恐れて口の中を潤す程度の僅かな量のコーラを口の中に迎え入れた。
「昔、石田が道徳の授業で、人はなぜ人を殺してはならないのかって俺達に疑問を投げかけたことあっただろ」
石田というのは小学6年生の頃の俺達のクラスの担任の先公だ。
「あの時、どいつもこいつも石田も、質問の答えになってねー答えばっかりだったろ。そんな事もわかりゃしねーのに偉そうな顔で教師やってるし税金払ってんだよ。」
突然タカシが俺の手を引っ張って外へ出るぞと促した。
マフラーを改造した大型バイクが爆音と俺を乗せてあっという間に家を飛び出していった。
後ろを振り向くと誰もいないタカシの部屋の窓が開いて、巨大なラプターが飛び出した。
あっという間にタカシのバイクに追いついたラプターは私のすぐ斜め上を飛行している。
暴力を制する衛星ラプターは、タカシの力の源泉だった。
「…人を自由に殺せるけど本当に自由な生き方が出来る世の中と、人を自由に殺せないけど豚のような生き方を強いられる世の中、お前ならどっちがいい?」
ヘルメットの中のタカシの純粋な瞳が、とても寂しそうだった。
タカシの答えは、道端でえっちをする為には人を自由に殺せる世の中を作らなければならないらしい。
馬鹿げてると思うけど、今の世の中より何が良いのかえっちしてみないと私には分からなかった。


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