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うたかたさん

どこにでもいる高校生です!

性別 男性
将来の夢 安定した職に就くこと
座右の銘 今を真剣に

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心にコメディを

18/06/17 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:0件 うたかた 閲覧数:89

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 人口減少とともに労働力不足が加速する日本。その不足を補う目的で人工知能を搭載したアンドロイドがいくつもの企業から製品化され、発売されている。しかし、ある企業が開発したアンドロイドは人の心をほぼ完全に再現した機能を搭載し、その扱いについて政府でも議論が行われ始めている。
 そのアンドロイドが突然、僕の部屋の前に倒れていたのだ……。

 僕は一人暮らしをしている学生だ。今日は休日であるから近くのコンビニに買い物に行ったのだが、帰ってきたらこの様だ。うなじの部分に会社のマークが入っているからすぐにアンドロイドであるとわかった・

「あの、大丈夫ですか?……あの!」

「え……あ、はい!」

 そのアンドロイドはすぐに立ち上がり、服のほこりを払った。どこかの会社の制服を着ている。しかし、見た目は紛れもなく女子高校生だ。

「す、すみません! 私、寝ちゃってたみたいです」

 顔が赤くなっているのがわかった。このアンドロイドの内部構造は、その組成自体は異なるものの、機能や反応はほぼ人間と同じであるそうだ。店で働いているのを見かけたことがあったからそれほど驚きはしなかったが、そのとき改めて感心してしまった。

「そうなんだ」

 かるく笑みを浮かべておいた。

「それで、君はなんでここにいるの?」

「あ、えっとですね、昨日の夜、会社から追い出されてしまいまして、歩いてたらいつの間にかここに来てしまったみたいです」

(アンドロイドを追い出すってどんな会社だよ)
「な、なるほどね……」

「なので……あの……ごはんください!」

 そのアンドロイドは深く頭を下げた。人間と同様に食事からも電源を確保できると聞いていたが、実際に食べているところは見たことがない。それには若干の興味があった。

「あ、うん、いいよ」

「ありがとうございます!」

 そのアンドロイドは満面の笑みで何度もお辞儀をした。
 部屋の鍵を開け、そのアンドロイドを中に入れた。手洗いうがいを済ませ、狭い部屋に無理矢理置いたテーブルに座らせる。

「そういえば君、名前なんて言うの?」

「アリサです!」

 笑顔で答えたアリサは、手を膝の上に添え、食べ物を待っている。

「アリサか、一応俺はタツキ」

 そう言って僕は、アリサにコンビニで買ってきた鮭のおにぎりを渡した。

「よろしくお願いしますタツキさん! いただきます!」

 アリサはものすごい勢いでそれを食べ始めた。僕はアリサの向かいに座った。
 肩まで伸びた艶やかな髪を揺らしながらおにぎりに夢中になっている。目の前にいるのは本当にアンドロイドなのだろうか。これが人間によって作られたものなのだろうか。その時の僕はそれを疑ってやまなかった。

「テレビつけようか」

 僕はテーブルの上にあるリモコンを手に取り、テレビの電源を入れた。夕時には珍しく、お笑い番組が放送されていた。コンビが最近はやりの『リズムネタ』を披露している。

「面白いですよね、これ」

 僕は普通の人間から発せられた言葉なら何の疑いももたなかっただろうが、アンドロイドであるアリサからであるとなれば僕の心はそれを驚きと捉えた。
 もちろん、アリサが心に似たものをもっていることは知っている。もしくは、ただの『機能』としてのその言葉だったのかもしれない。しかし、その時の僕はどうしてもそれがアリサ自身の感情としか思えなかった。

「ん? どうしました?」

 僕が驚いた表情でアリサを見ていると、彼女の方から話しかけてきた。

「あ、うんうん、なんでもないよ」

 僕はテレビの方へ視線を向けた。
 きっとアリサは人間と同じように、喜びも怒りも哀しみもその感情すべてを感じることができるのであろう。それであるのにも関わらず、人間の都合によって生み出され、捨てられ、いずれその命も止められるのだろう。彼女にはなんの罪もない。

「アリサは、これからどうするの」

 僕は視線を動かさないように意識して、アリサに尋ねた。

「んー、どうしましょうかね……あなたに助けてもらったので、あなたのお手伝いさんにでもなりましょう! あ、ただし、電源の確保はお願いしますね」

 僕は彼女の表情を見ることができなかった。いや、しようとしなかった。
 本当にそれでいいのか、彼女に自分の人生を生きようとする想いはないのか。なぜか涙が溢れそうになってしまった。

 日没が近づき、外も暗くなり始めている。
 僕はこれからアリサとどう生きていけばよいのだろうか。いや、彼女に限ったことではない。人の心をもつアンドロイドとどう接していけばよいのだろうか。簡単に答えが出るはずはない。
 いくらアンドロイドだろうと人の心をもつ。彼女たちの人生から何を奪えようか。僕たちはいずれ向き合わなければならない。


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