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いっきさん

公務員獣医師として働くかたわら、サイトを中心に創作に励んでいます。

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ノストラダムス症候群

18/06/03 コンテスト(テーマ):第157回 時空モノガタリ文学賞 【 コメディ 】 コメント:0件 いっき 閲覧数:120

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「IQ300……」
 ある日、サイトのIQテストをすると凄まじい数字が出た。
『あなたは天才を超えた超天才です。全てのことを予測することができるあなた程の天才は、あなた以外存在しないでしょう』
 ここまでのコメントが書かれていた。

(凄い!俺は天才を超えた超天才だったのか!)
 俺は胸を弾ませた。
(俺は無敵だ。全てのことを予測することができるのだから。それでは、手始めに……女だ!桜桃男子の俺だが、最早それを捨てることなど容易いであろう)
 俺は意気揚々と外出し、繁華街を歩いた。

 脳内には唐突にノストラダムスの大予言『1999年七の月、恐怖の大王が降臨して人類は滅亡する』……その文言が浮かんだ。
(ならば、俺も予言する。『2999年十二の月、振動とともに悪の組織が世界に悪魔をばら撒き、世界は火の海となり滅亡する』)
 そのような思考が溢れ出し……俺はフッとほくそ笑んだ。

 その時、No1アイドルのマヨヨと遭遇した。
 いや、遭遇したというのには語弊がある。俺は彼女が現れるのを計算し会うべくして会ったのだ。
 マヨヨ……何と美しい。天才を超えた超天才の相手には、彼女しか釣り合わない。
 俺は彼女の肩をガシッと掴んだ。怯えた顔をしているかに見えるが、すぐに歓喜の笑顔を浮かべ恋に落ちるだろう。
「俺はIQ300。天才を超えた超天才だ。この度、お前がその人生の伴侶として選ばれたのだ。これからお前は俺と共に人生という名の花道を歩むことになるのだ。有難く思え」
 どうだ、嬉しいだろう。歓喜の笑顔……って、あれ?目尻に皺を寄せ、眉をひそめ……ドン引きしているように見えるぞ。そ、そうだ、もう一度言うんだ。殺し文句は何度も言う方が効果的なんだ。
「俺はIQ300……」
「誰か来て! 変質者よぉ!」

 夕暮れ時、一人トボトボと家へ帰る。
 何てことだ、俺が天才過ぎて理解されないとは。超天才でも、理解されなければ単なる気違……嫌だ、考えたくもない。
 自分の存在は何なのだ。俺は自分の存在が何なのかさえ、分からず震えている……。
 家の置き場にある自転車が目に映り、俺は即座に乗り込んだ。
「盗んだバイクで走り出す行く先も解らぬまま暗い夜の帳の中へ♪」
 歌いながら自転車で走る、走る。俺は十代のカリスマだ。十代の若者達が、俺を見て歓声を上げている。
 これは変質者を見て叫ぶ悲鳴ではない。カリスマを見て上げる歓声だ!
 そうとも、この世は儚い。この世は、狂っている!
 俺は河川敷へ飛び込んだ。

 目覚めると病室のベッドだった。
「あぁ、圭介。よかったぁ」
 医師と母親が安堵の表情を浮かべた。
「どうして、河川敷に飛び込んだりしたの?」
「俺は十代のカリスマだからだ」
「は?」
「俺は天才を超えた超天才なんだ。俺には分かる。2999年十二の月、振動とともに悪の組織が世界に悪魔をばら撒き、世界は火の海となり滅亡する」
「まぁ……あなた、余程、悪い所を打ったのね。先生、この子を元に戻して下さい」
 母親は医師に涙ながらに懇願した。
「はい。できる限り、手を尽くしましょう」
「違う、嫌だ! 俺は超天才なんだぁ!」
 退院時の俺の知能指数はIQ30という、極めて低い数字だった。それからの俺は凡人に極めて劣る人間として生き、極めて哀しい生涯を閉じた。



 2999年12月31日、ある離れ小島に住む老夫婦のやりとり。
「じいさんよぉ、この世は平和よのぉ。昔は地震なんてもんが起きたらしいが、もう何百年も起きとらん。これからも、そんなの起きんさのぉ」
「起こるわけがなかろう。百年も生きとるワシが言うんじゃ、間違いない」
 その時、『ピロピロリン、ピロピロリン、緊急速報です』テレビからニュースが流れた。
『先程、本土でM10、史上最大の揺れを観測する地震がありました。今後の地震情報に注意して下さい』
「…………」
「…………」
 二人の間に微妙な沈黙が流れた。

「まぁ、何じゃ。昔は物騒な団体が毒ガスをまいた事件もあったみたいじゃが、人が悪さをすることはもう何百年もないさのぅ」
「そうさのぉ、じいさん。安心な世の中じゃ」
『ピロピロリン、ピロピロリン、緊急速報です。新興団体XYZが本土上空から、感染すると致死率100%のボエラ熱ウイルスを散布したという情報が入りました。くれぐれも家の中での防ウイルスマスク着用をお願いします』
「…………」
「…………」
 またしても、微妙な沈黙が流れた。

「まぁ、何にせよじゃ。この離れ小島におる限り、ずっと平和と安全が約束されとるのぉ」
「そうさのぉ、有難いことじゃ」
『ピロピロリン、ピロピロリン、緊急速報です。先刻の地震に触発され、世界最大の火山、ベエレストが噴火しました。地球はあと十秒でマグマに覆い尽くされます……』


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